フェンス(2016)




アメリカでは評論家から絶賛されたという本作
ほぼ喋り通しの演技合戦は見事なもので
演劇を観ているようです

ただ、ひとことでいえば「老害」ものなので
見ていて辛く、最後までイライラします


1950年代のピッツバーグ
トロイは親友のジム・ボノとごみの収集業者として働き
妻ローズと息子コリーと暮らしています
コリーが大学のフットボールチームにスカウトされていると知ったトロイは
激しくそれに反対します
前妻の息子、ライオンズがお金を借りに来ても貸すことはありません

日本で言えば「昭和の男」
稼ぎ手である一家の主がこのように頑固であるのも
この時代は仕方がなかったのだろうと
最初は思いましたが





トロイは本当に最低の男だったのです
若い頃は強盗として生計を立て、殺人を犯して15年の刑
出所してニグロリーグでプレイしましたが
メジャーデビューできなかったのは自分が黒人だからと信じています
(前科者だからでしょう)

自分が働いた金だと威張っているものの
実は生活のほとんどは、戦争で障害を負った兄の
政府からの見舞金と年金をあてているのです

それなのに、コリーが自分より優秀だと知り、嫉妬し夢を潰す
そのうえローズを裏切り、外に女を作り妊娠させたのです
しかもその赤ちゃんをローズに養育しろという

トロイは息子に、妻に、もし殺されてもしかたがない
それくらい酷い父親であり、夫なのです


トロイが作るフェンス(目隠し)は
家族を守るものではなく
閉じ込め、支配するだけのものなのです

それでもローズは耐えました
「あなたが最高の相手ではないという疑いを
 必死に消して全てを捧げてきた
 それが私の務めだと信じていたから」


これが、これが、これが
男の求める最高に「都合のいい女」

男がまだ一家の主として君臨していた時代
でもある意味、男性にとっては
理想の時代なのかも知れません




【解説】ウィキペディアより
『フェンス』(Fences)は、2016年にアメリカ合衆国で公開されたドラマ映画である。監督と主演はデンゼル・ワシントンが務めた。なお、本作の原作は1983年にオーガスト・ウィルソンが発表した戯曲『Fences』である。
後述のように、本作は極めて高い評価を得ており、第89回アカデミー賞では作品賞を含む4部門にノミネートされ、ヴィオラ・デイヴィス助演女優賞を受賞した。
日本では劇場公開されずにソフトスルーとなった。日本ではアカデミー賞にノミネートされても劇場公開されなかったり、逆に受賞をきっかけに公開が実現した作品は過去に前例があるが、本作では受賞したにも関わらず劇場公開が見送られた稀な事態となった。