ジミー、野を駆ける伝説(2014)




恥ずかしながらケン・ローチ監督作品はこれが初めて
日本とも縁のある監督ということです

私のように政治や思想や宗教に疎い人間にとっては
左翼思想の入門編として勉強になる作品でした
評価が高いだけあって、映画としても素晴らしいですし
なにより作り手の信念と情熱が伝わります

まず始まってすぐ、緑色の大自然に覆われた
格調高い映像に魅せられ引き込まれました


10年ぶりに故郷の村に帰ってきたジミー
かっての彼は活動家で、アイルランド独立戦争で英国軍に追われて
ニューヨークに逃亡していたのです

彼は年老いた母親の許で、農業をしながら静かに暮らすつもりでした
しかし若者たちの熱望で、ジミーホールを立ち上げます

そこはアイリッシュダンスを踊ったり
チャールストンやジャズを奏でたり
子どもたちにボクシングや絵画や読み書きを教える
村人たちが娯楽や勉強するために集まるホール

しかし、この時代のアイルランド
カトリック教会が絶対的な権力を持っており
教会以外での教育は許されていなかったのです
なんと自由を謳歌することは、神への冒涜だったのです





ロシアは労働者階級と、貴族層やカトリック教会の対立が深まり
労働者が集まり抗議デモをするという背景(ロシア革命)があり

この村の司祭や富裕層の人間も
庶民のリーダー的存在であるジミーを恐れます
そしてジミーを共産主義者呼ばわりし
ジミーホールに銃弾を撃ち込んだり
ついには火を放ち燃やしてしまうのです

ただ、ダンスをしたり、歌を歌っていただけなのに


中盤まではこのクソ司祭が、めっちゃ憎たらしいと
腹を立てながら見ていたのですけれど(笑)
終盤になってきて、お互いが時代の犠牲者かもしれない
そう思えてきました

司祭も警察官も本当は悪い人間ではないのです
役目だから、仕事だから、命令だから背くわけにはいかないのです

それは地主から不当に家から追い出された家族を助けてほしいと
ジミーのもとに助けを求めに来るIRAアイルランド共和軍)の
メンバーの行動からもわかりますし

最後にはジミーに敬意を払う司祭の姿は立派でした
ジミーと司祭も心の中ではお互い尊敬しあっていたのです





私たちにとって当たり前の「自由」や「平和」がどれだけ尊いものか
いかに過去の人たちの大変な努力によって今が成り立っているのか
あらためて考えさせられました


それにしても、ジミーは生まれた時代と場所が悪かっただけで
ジミーホールは今でいう、カルチャースクールの先駆け
活動家でなく、ビジネスマンだったら大金持ちになっていたような気がします
(資本主義に毒されたこの奥さんは、なんでも金に換算するよ 苦笑)




【解説】allcinemaより
 「麦の穂をゆらす風」「天使の分け前」の反骨の名匠ケン・ローチ監督が、政治的抑圧の厳しかった1930年代のアイルランドを舞台に、小さなホールの再建を願う村人のために時の権力に抵抗し、ついには祖国を追われた実在の人物ジミー・グラルトンの生き様を通して自由の尊さを描いた感動の社会派ヒューマン・ドラマ。
 未だ内戦の傷が癒えぬ1932年のアイルランド。長らくアメリカ暮らしを余儀なくされていた元活動家のジミー・グラルトンが10年ぶりに祖国の地を踏み、故郷の田舎町へと戻ってきた。昔の仲間たちに温かく迎えられた彼は、年老いた母アリスの面倒を見ながら穏やかに暮らしていこうと考えていた。ところが、村の若者たちから閉鎖されたホール(集会所)を再開してほしいと懇願される。そのホールとは、村の人々が文化やスポーツを楽しむためにとかつてジミーが建設したものだった。彼らの熱意に押されてホールの再建を決意するジミーだったが、それは特定の支配階層にとっては決して容認できるものではなく…。