死刑台のエレベーター(1957)





ジャンヌ・モローの主演作で私がいちばん好きなのは「突然 炎のごとく」
でも、いちばん傑作だと思うのは「死刑台のエレベーター

当時25歳だった新人監督ルイ・マル
新進作家ロジェ・ニミエによる脚本
カメラは新人アンリ・ドカエ
若さゆえのけだるい空疎な世界を
見事に生み出しています

マイルスの完璧なメロディは
神が舞い降りたシネジャズの奇跡

そして美しいモロー




目もくらむような美女の顔をしたかと思えば
不機嫌そうな口元になり
時には老婆のような表情さえ浮かべる
美しさと可愛らしさ、そして醜さまで同居した表情が
彼女の才能

晩年になってからの姿には
さすがのモローも、年には勝てないと思いましたが
それでも一瞬の色気やしぐさには、ハッとしてしまいます


有名な作品で見た方も多いと思いますが、あらすじとしては
若い社長夫人フロランスが、恋人である従業員ジュリアンとともに
社長を殺害するというサスペンス

自殺に見せかけた完全犯罪にするはずでした
なのに、ロープを忘れるという単純なミスを犯してしまう
悪い偶然は重なり、エレベーターの電源を切られ
中に閉じ込められるジュリアン





ジュリアンを待つフロランスは車を盗まれ
車を盗んだカップルがフロランスの銃で
殺人事件をおこしてしまうのです
フロランスとジュリアンは違う殺人の容疑者となり
警察から追われる身となるのです


若さゆえの愚行は、あまりに痛々しい
そして、まず出獄時の自分の年齢を計算するという
ヒロインの凄味
この役はモローにしかできない、そう思います

そしてもちろん私の「お気に入り」映画のひとつ


オーソン・ウェルズが「世界で最も偉大な女優」と評した大女優
死因は老衰だったそうです、89歳
数々の名作をありがとう
どうぞ、安らかにお眠りください






【解説】allcinemaより
これ以前に海洋ドキュメンタリー「沈黙の世界」で、クストーと並んで監督にクレジットされていたとはいえ、これこそルイ・マルがその斬新な演出技法を駆使して初めて作り上げた劇映画。その時、わずか25歳であった。原作はノエル・カレフの犯罪小説。土地開発会社に勤める技師ジュリアン(ロネ)は社長夫人フロランス(モロー)と通じており、邪魔な社長を殺す完全犯罪を目論んでいた。だが社内で社長を殺した帰途、残してきた証拠に気づいたジュリアンは現場へ戻ろうとするが、週末で電源を落とされたエレベーター内に閉じ込められてしまう。しかも会社の前に置いてあった車は、若いカップルに無断で使われており、彼らは彼らで別の犯罪を引き起こしていた……。徹底したドライなタッチと、即興演奏で奏でられるマイルスのモダンジャズ、モノクロ映像に封じ込まれた都会の孤独感によって描かれる完全犯罪の綻び。“ヌーヴェル・ヴァーグ”の先駆けというフレーズには、あえて眼をつぶろう。この作品の魅力は、そんな時代の呪縛からは完全に解き放たれている。