ある日どこかで(1980)




「あなたなの?」


私が今まで見た映画の中で
いちばん「奇跡的」な作品かも知れません

まるでハーレクイン・ロマンスのようなベタな恋愛に
時空を超えて恋した人に会いに行くというSFもの
辻褄があうわけもない無理な展開なうえ
ラストも決してハッピーエンドではありません

それなのに、なぜここまで心を打つのかわからない

懐中時計、古いスーツ、写真を撮る、コイン・・
様々なシーンが脳裏に焼き付いて離れない
長い余韻を残すのです


劇作家のリチャードは仕事に行き詰まり、旅に出ることにします
途中で泊まった有名な「グランドホテル」
そこに飾られていた古い写真の女性、エリーズ・マッケナに
リチャードはどうしようもなく惹かれてしまい調査をはじめます

彼女は8年前に「戻ってきて」と一言残し
懐中時計を渡された老婦人の若いころの姿でした

リチャードは「時間旅行」の著者を訪ね
自分を催眠術をかけるという時間旅行の方法を聴きます
そしてついに1912年のエリーズと会うのです





エリーズもまた運命の人を待っていました
それは未来を予知できるという
マネージャーのロビンソン(クリストファー・プラマー)から
告げられていたから

目の前に現れたのは、背の高くハンサムだけど不思議な男性
ただ一途な熱意だけをもってエリーズに近づきます

ロビンソンはこの得体の知れない男からエリーズを守ろうとします
彼もまたエリーズを愛していたのです
でもそれは彼女の成長と、女優としての成功が第一というものでした
恋愛などでキャリアを潰したくはない

だけどその束縛と過保護が
エリーズの恋心をさらに燃やしてしまいます

彼女はリチャードと生きていくことを決め
ふたりは愛し合い、幸せに包まれます
そのとき、1枚のコインを見つけてしまう

目が覚めたとき、愛する人はいませんでした


夢なのか、現実なのか、たった1日愛し合っただけ
それでも女性は67年間も待ち続け
男性は廃人となってしまいます

だけどラストの哀しさよりも
幸せなふたりのシーンのほうがずっと色濃い
ジョン・バリーの音楽もぴったりで物語を盛り上げます


今も熱狂的なファンが多く
世界的なファンクラブがあるということも
このレビューを書くにあたり知りました

私も仲間入りさせてもらうことにします(笑)
お気に入りで



【解説】allcinemaより
 なぜか相性の良い“恋愛もの”と“時間SF”だが、これはその中でも白眉、狂おしいまでの切なさに満ちた名編である。母校で初演を迎えていた新進の劇作家リチャードのもとへ現れた老婦人は、金時計を手渡すと“帰ってきて”という言葉を残し去っていく。数年後、再び母校を訪れたリチャードはその町のホテルで一枚の肖像画に心を奪われる。そこに描かれた美女エリーズは、かつての老婦人の若き日の姿だった。日増しに膨れ上がる“彼女”への想いに苦しむリチャードは、ついに時間の壁を越えエリーズと出会う……。恋する二人の間に障害は付き物だが、これはその障害が“時間”だったというお話。「激突!」や「ヘルハウス」などの恐怖作品で知られるSF怪奇作家R・マシスンが自身の原作を脚色、「JAWS/ジョーズ2」のJ・シュウォークが一世一代の抒情タッチで描き上げた幻想譚。主人公のC・リーヴ、ヒロインのJ・シーモア共に、クラシカルな雰囲気がよく似合っている。