わが青春に悔なし(1946)




「自由の裏には、苦しい犠牲と、責任がある事を忘れちゃいかん」


昭和8年に起きた京大滝川事件と
昭和26年のゾルゲ事件を題材した
黒澤監督の戦後第一作となる反戦映画ということ

しかし事件性を重視するというよりは
(滝川教授をモデルとした)八木原教授の娘、幸枝(原節子)と
彼女に好意を寄せている、教授の教え子野毛(藤田進)と糸川(河野秋武)との
三人の関係に重点をおいて描いています


幸枝は激しい気性で「何かが違う」といつも疑問に思っています
そして実家を出て、家族のために安定した生活を望む糸川ではなく
理想や信念を貫く野毛と結婚します

野毛はソビエトの諜報組織「ゾルゲ諜報団」と関係があった
ジャーナリストの尾崎秀実という人がモデルということです

幸せな日々もつかの間、野毛は逮捕され獄中で死に
幸枝は彼の田舎に行き農家である野毛の両親の手伝いをする決心をします
しかしそこに待っていたのは「売国奴」「スパイ」と呼ばれる
村八分の生活でした





それにしても黒澤監督が演出すると
原節子さんでさえこうなってしまうのか(涙)


すぐ怒ったり、泣いたかと思うと笑っている
この気まぐれでイラつく女は一体なんだ!

しかも足は太くて、胸の位置は低すぎる
あげくに髪はボサボサ、泥まみれ、ヤカンで一気にラッパ飲み

こんなの、全国の農家の嫁にも失礼すぎる(笑)


野毛を全面的に擁護するという形で終わっていますが
野毛がどのような思想をもち
運動をしていたかというシーンがないので
野毛を支持をするのは難しかったですね

これはあきらかに構成に難があり
脚本を練ることもなく、急ぎすぎて作ったのかなと思います
そのため私にとっては左翼思考や共産主義革命に共感するのは
ちょっと無理な作品でした
もちろん、思想は自由なので、支持する人に反対はしませんけれど

ただ、黒澤監督の「ソビエト」愛はとても感じます
プロパガンダ風のタッチが多いですし、ピアノの演奏は「展覧会の絵
相当ソビエト時代の映画や音楽、文学が好きなのに違いありません

あとは、ほとんどホラーにまでなっしまう原節子さんに
ただ驚くばかりの作品でした



【解説】allcinemaより
黒澤明監督の戦後最初の監督作品。京大・滝川事件とゾルゲ・スパイ事件をモチーフに、ファシズムの吹き荒れる時代にあって自らの信念に基づいて強く生きる女性の姿を謳い上げたドラマ。国民的アイドル原節子が芯の強いヒロインを好演。昭和8年。京都帝国大学の教授・八木原の教え子たちにとって教授の一人娘、幸枝は憧れの的。野毛、糸川の二人の学生も幸枝に想いを寄せていた。秀才型で日和見的な糸川に対して実直で行動派の野毛。軍国主義が強まる中、野毛が左翼運動へと身を投じる一方、糸川はひたすらに法曹の道を目指していた。やがて、幸枝は信念を持って行動する野毛に魅力を感じ始めるのだったが……。