ボビー・フィッシャーを探して(1993)




ボビー・フィッシャーとは、アメリカ人で初めて
チェスの世界チャンピオンになった伝説的な天才で
チェスをする人々にとっては神のような存在のようです
そんな彼の再来を夢見る物語

7歳のジョシュは野球が好き、レゴが好き、そんな普通の男の子
ある日公園で遊んでいるときストリート・チェスをしている人々と出会います
しかもジョシュは彼らをただ見ていただけで
チェスの攻略法まで覚えてしまうのです

大会に出ては次々と優勝
チェスの先生はジョシュにボビー・フィッシャーのやり方を伝授しようとし
父親はだんだんと勝つことに厳しくなっていきます
そこにもうひとり、ボビー・フィッシャーの再来と言われる神童が現れる
ジョシュは楽しかったチェスがだんだんと苦痛になり
やがて大会に出ることさえ怖くなり、ついに負け試合をしてしまいます

いますよね、こういう親にコーチ
私も息子ふたりを幼稚園から小学卒業まで
サッカークラブに通わせていた経験があるのですが
親御さんのほうが練習にも応援にも熱が入って
時には激しい罵倒が飛ぶこともありました

ステージママと子役、ジュニアゴルファー
有名私学への合格を目指す場合などでも
こういう親子の確執は、多くあるのではないのでしょうか

息子の才能を伸ばそうと奮闘する父親にジョー・モンティーニャ
2人の対象的な師匠には、楽しさを伝えるローレンス・フィッシュバーン
チェスの厳しさと芸術性を教え混むベン・キングズレー
常に高い評価を受けている俳優さんが顔を揃えていて
演技には見ごたえがあります

そして、ジョシュの純粋でやさしい心には
本当に胸を突かれます
親が子どもに教えられることは多い



実在の天才チェス・プレイヤーがモデルだそうですが
大人になったジョシュは、太極拳や、メンタル系の指導者的な仕事をして
普通の人生を歩んでいるということです

ボビー・フィッシャーが行方不明になってしまったように
彼もまた、チェスの才能とは別の違う生き方を選んだのです


アメリカでは「感動の映画ベスト100」にも選ばれたという感動作

なにか習い事をさせている、何か目指しているものがある
そんなお子さんがいるお父さん、お母さんには
ぜひ見ていただきたい作品だと思います



【解説】allcinemaより
かつて全米にチェス・ブームを巻き起こし、その後忽然と姿を消した天才プレイヤー、ボビー・フィッシャー。そのフィッシャーの再来を思わせる天才少年ジョシュ・ウェイツキンの成長を、父フレッド・ウェイツキンが綴った同名ノンフィクションの映画化。いわば“現在進行形の伝説”とでも言った題材を、「レナードの朝」「シンドラーのリスト」の若き名脚本家S・ザイリアンが脚色、自らメガホンも取り監督デビューを飾った。格闘技を思わせるようなチェス・シーン自体の面白さもさる事ながら、天才少年と彼を取り巻く家族や恩師の葛藤も丹念に描かれ、小品ながら忘れ難い魅力を放っている。主人公ジョシュに扮したM・ポメランクの澄んだ瞳も印象的で、脇を固める演技陣も充実、光の柔らかさを見事に捉えた撮影も見事。