戦場にかける橋(1957)




さすが戦争映画の金字塔のひとつ、素晴らしい名作ですね
昔、テレビの吹き替え版では見たことはあるのですが
大人になってから見たほうが、やはりいろいろと考えさせられます

日本人を見下していると評する方も多いようですが
制作年が戦後十数年しか経っていないことを考えると
私には十分、好意的に描かれていると思います

国や考え方の違う軍人同士が
反発しあいながらも、信頼していくようになる
やがて友情のような感情が芽生えてくる
そんな気持ちの移り変わりが伝わってきます


大戦下、ビルマ・タイ国境近くにある日本軍捕虜収容所
期日までに橋を完成させたい斎藤大佐(早川)は
捕虜全員を建設に動員せせようとしますが
英軍捕虜のニコルスン大佐(ギネス)は
ジュネーブ協定に背反すると将校の労役を拒否します

男と意地とメンツの戦い
しかし橋の建設は思うように進まず、ついに斎藤が折れます
むせび泣く斎藤
橋の完成のために自分の意思を曲げざるを得なかった
無念さがにじみ出ていました

しかし、そのことは捕虜たちの志気を高めることに成功します
橋を完成させる、その目標が敵も味方も超え
いつしか将校も負傷兵たちまでもが橋の建設に携わります

殺し合いではなく、橋の建設という競い合い
ニコルソンは斎藤の「喜んで働け」に共感し
斎藤もまた捕虜たちに対する待遇をよくします

しかし、ついに橋が完成し列車が通過したその時
すべては失われるのです
ひとり生き残った医師は叫ぶ、「狂気だ」と

クワイ川には「英軍将士によって建造されたものなり」と書かれた
板が一枚漂うだけ

とはいえ十分に娯楽性もある作品
現地の荷物運びの女性たちは何気にチャーミング(笑)
戦時下で村には男性はおらず
女性が肉体労働で稼いでいたのでしょう


アカデミー賞では7部門受賞という快挙を成し遂げていますね
早川雪州さんは助演賞受賞とはなりませんでしたが
ノミネートされただけでも時代を考えると
ものすごいことなのだと思います


モデルとなった、カンチャナブリーの橋
今では観光地として栄えているそうです
この平和が、この先もずっと続いてほしい
そう願います





【解説】allcinemaより
巨匠D・リーンが、第二次大戦を背景に戦争の愚かさと人間の尊厳を描き出した不朽の名作。タイとビルマの国境近くにある日本軍の捕虜収容所では、連合軍捕虜を使って、国境に流れるクワイ河に橋を架ける準備が進められていた。だが、英軍大佐(ギネス)はジュネーヴ協定に反するとして、所長(早川雪洲)と対立。一方、米軍捕虜の海軍少佐(ホールデン)は脱走を試み、辛くも収容所を後にした。英軍大佐の気骨に共感した所長は、捕虜の恩赦を条件に再度協力を要請。捕虜たちに生きがいを与えようと考えていた大佐はこれを承諾し、こうして建設工事が始まった。だが同時に、生き延びた米海軍少佐の手引きによって、連合軍による架橋爆破作戦も開始されようとしていた……。
 戦後50年を過ぎ、次第に明らかになってきた戦中当時の証言によれば、日本軍の行った捕虜を使っての労役にはもっと非人道的なものがあり、この映画で描かれているような事は絵空事でしかないのだろうが、その事実とこの作品の良さは別次元で語られるべきであろう。我々にはもはやこの“戦争映画”は寓話としてしか観る事ができないかもしれないが、その寓話は非常に感動的で、人間ドラマとしての素晴らしさ、スペクタクルの醍醐味を持っているのだ。アカデミー作品・監督・脚色・主演男優(A・ギネス)・編集・撮影・音楽賞受賞。脚本のM・ウィルソンとC・フォアマンは当時赤狩りの疑いをかけられていたためクレジットを削除されていたが、1984年のアカデミーで改めてこれを表彰、後に製作されたドルビー改訂版ではクレジットも復活した(C・ウィリンガムは元々クレジットされていない)。