M★A★S★H マッシュ(1970)

 
 
MASH(Mobil Army Surgical Hospital)とは
米陸軍移動野戦病院のことで
戦場近くに設置された、いまでいう「ER」のようなもの
 
制作当時はベトナム戦争批判だと公開されないために
朝鮮戦争に舞台を変えたということ
ハイで、下品で、エッチ、そしてたっぷりのブラック・ユーモア
「FUCK」という言葉を初めて使った作品としても有名なのだそうです
カンヌではパルムドールアカデミー賞では脚色賞を受賞しています
 
 
朝鮮戦争まっただ中、最前線近くの野戦病院へ赴任した
ホークアイ(サザーランド)、デューク(スケリット)
トラッパー・ジョン(グールド)の3人は腕いい医師なのでしょう
負傷兵をひっきりなしに手術、数々の命を救っているようです
 
しかし日常では軍の規律を破り続け
お堅い人間にはイタズラをし、散々な目にあわせる
 
もちろんそれは、戦争と官僚主義への反発のメタファーなのですが
この「おふざけ」には、笑えるよりも
不快感を覚える方も多いのではないかと思います
 
気に入らないものを、懲らしめたり、いじめたりすることは
するほうにしたら快感かもしれませんが
差別やいじめにあったことのある人間が、この作品を見た場合には
もしかしたら怒りさえ覚えるかもしれません
 
ベトナム人や、南北分裂を憂いている韓国人が見たらどう思うのだろう
もし舞台が沖縄の米軍基地でも笑えるでしょうか
私の場合は、医大生による女性への集団暴行事件を思い浮かべました
「おふざけ」が、どんなに相手を傷つけ苦しめるのか考えもしない
 
 


しかしこういう、不快感を与える作品もまた
傑作には違いないと思うのです
これも戦争映画であり、社会の縮図
考えさせられることは多い
 
帰国が決まった時の、ホークアイとデュークの現実に戻った顔
それはおバカに、青春に終わりを告げた顔でした
 
 
重たいテーマを、ここまでさらりと粋に描いてしまうとは
さすがアルトマン監督の代表作のひとつ
 
この作品では無名だったという主演者たちも
みんな大物スターになりました
 
すごい映画には違いないと思います
 

 
【解説】allcinemaより
朝鮮戦争野戦病院に、人手不足から二人の医師が補充された。ところがこの医師たち、軍規を無視してやりたい放題。いかつい女性将校をからかうのに夢中になってしまう……。鬼才R・アルトマンが朝鮮戦争を題材にしたブラック・コメディの大傑作。馬鹿馬鹿しいまでのオフザケ・シーンに交錯するリアルな手術シーンが戦争の狂気を浮き上がらせる造りも見事なら、E・グールド、D・サザーランドら出演陣の個性も特筆もの。主題歌“自殺のすすめ”は作品のメッセージを唄うだけでなく、涙が出るような名曲である。