郵便配達は二度ベルを鳴らす(1946)



このタイトルは印象に残る良いタイトルですよね
何を意味しているのか、想像を膨らませます
81年版のジェシカ・ラング×ニコルソン版は見ています

1作目はフランス製作(戦争などの影響で現存していないのでしょうか)
2作目は42年のヴィスコンティ監督の長編処女作
その4回映画化されたうちの3作目ということ

しかし日本では未公開だったそうです
不倫で夫殺害、当時の映倫では
上映許可するのは不可能だったのかも知れませんね



流れ者のフランクはヒッチハイクで旅行中の途中
レストラン兼ガソリンスタンドの「MAN WANTED」を発見し
そこで働くことにします
主人のニックは人の好さそうな初老の男

一方、下着姿同然で現れた妻のコーラはまだ若く
落とした口紅をニックに拾わせます
まるでニックを挑発しているかのようです

その気になってしまうニックですが
コーラは冷たい態度をしてみたり
気まぐれな女の気持ちというものは
なかなか掴めない

とはいえ、子どももいなく、酔っ払いの老いた夫
客もあまりこない田舎のバーガーショップ
刺激を求める若い男女が愛し合うのに時間はかかりません

やがてふたりは夫殺しを計画します
完全犯罪にするための、完璧な辻褄合わせ

だけれどこんな田舎町、日ごろから
善人の老いた店主のもとで働く男と若い妻の関係を
世間も、警察も、検事も、誰もが怪しんだに違いないでしょう

検事の計略、弁護士の策略
弁護士の元事務員からの脅迫
ふたりは激しく憎しみあい
お互いを罵りあうことになる

それでも愛が欲しかった
愛を確かめたかった
幸せになりたかった、満たされたかった

だけれど運命は
ふたりの罪を許しませんでした
強欲という名の善人殺し

それなりに緊迫感はありますし
ヒロインも魅力的で、悪くはなかったですけれど
もう少しコンパクトに仕上げたほうがよかったかもですね

1作目のフランス版もぜひ見てみたいものです



【解説】allcinemaより
 J・M・ケインの傑作ハードボイルド小説のハリウッドでの最初の映画化で、原作の激しい性と暴力の表現はやはり当時の製作コード上抑えた形で描写されたが、むしろ、その抑圧的なムードがヒロインのターナーの頽廃美を伴って、得も言われぬノワールな趣をかもしている。が、そんな魅惑的な彼女もガーフィールドのいきがった小悪党の流れ者の前では影が薄い。不貞の妻の彼女にそそのかされて、その旦那のレストラン店主殺害の共犯となる彼のモノローグで、この暗い物語は展開していくのだが、その頃、若き演技派としてめきめき頭角を顕していた彼の語り、芝居には自然であることに加え、後のM・ブランドに通ずる新しい輝きが鈍く光っており、その後に赤狩りの犠牲となり失意のうちに急死したことが全く悔やまれる。古式ゆかしいタッチとリアルな新味が混然となった作品。