野いちご(1957)

 
ベルイマン監督の中でも特に評価の高い作品
映画史に残る名作とされています
 
その高名さに10代の頃鑑賞して
そして、全く理解できませんでした(笑)
 
大人の映画
老いと言ったほうが正解でしょうか
頑固、孤独、後悔、疎外感
過去と現在
迫ってくる死の影
 
しかし、なんて美しく穏やかなのでしょう
やはり素晴らしい映画ですね
 
年老いた細菌学者で医師のイサクは
名誉博士号を受賞するために息子の妻と出かけます
 
途中、イサクは若い頃過ごした場所に寄り
かって好きだった女性の幻影を見ます
野いちごを摘むサラ
野いちごと同じ、甘くて酸っぱい思い出
 
イサクは本当は優しい男性だったのでしょう
でも恋に破れてか、仕事や研究に忙しくてか
自分の妻にも、息子にも、厳しく冷酷でした
気づいていた、でも自分ではどうすることも出来ないでいたのです
 
一緒にドライブする若い娘と青年ふたりは
かっての自分とサラ、そしてサラを奪った弟
息子と嫁は、自分と死んだ妻のよう
 
若かりし頃の気持ちが蘇ってくる
彼らには寂しい人生は送って欲しくない
幸せになってほしい
 
遅かったけれど、人生の節目
先は決して長くないかも知れないけれど
老いてからこその希望や未来もあるのです
 
イサクの残りの人生は
メイドのアグダと好きなことを言いあいながら
過ごしていくのでしょう
 
「ご用がおありでしたらいつでもお越しください
 鍵はかけずに置きます」
 
お気に入りで
 

 
【解説】allcinemaより
 サイレント期にはハリウッドまで渡った、スウェーデン映画の基礎をなした名匠シェストレムを主演に迎えて、ベルイマンが人間の一生を深く掘り下げた詩編ともいうべき秀作。医師イサクは50年に及ぶ業績を讃えられ、名誉博士号授与に赴く前夜、自分が死ぬ夢を見る。彼は息子夫婦の運転で式場のあるルンドへ向かうが、途中、青年時代を過ごした旧宅に立ち寄り、原っぱの野いちごに、積極的な弟に奪われた婚約者サラ(アンデショーン)を想い出す。その後、彼がめとった妻はくだらない男と密通し、彼を傷つけたのだ。邸を発ってしばらくして、ヒッチハイクの三人組を拾うが、そのうちの一人、女学生のサラ(アンデショーンの二役)は昔の想い人にそっくりで、彼は思うままに過ごせなかった自らの青春を悔いる。次に乗せたのは、彼らの車と事故を起こしかけた夫婦者。しかし、その口論があまりにうるさいので降ろしてしまう。が、再びまどろむイサクの夢で、その無知と人生の空疎さをあげつらうのは、夫婦者の夫だった。イサクはそこで初めて、息子エヴァルドの嫁マリアンヌの苦悩を知る。息子もまた自分と似て厭世的で人生を楽しんでいない……。式典を終えたイサクは、例の三人組の祝いの訪問を受ける。勲章よりもそうした、人とのつながりの価値を思い知ったイサクのその夜の夢は、青春の頃に戻りサラに再会する幸福なものだった。人生が走馬灯のように、とはよく言うが、このように老いて、若き日を回想できるものなのか。そのためにも生きねばなるまいと思わせる映画です


ドレスデン(ドイツ)で1905年に前衛絵画グループ・ブリュッケが生まれ、ドイツ表現主義と言われる運動の起点になった。表現主義(Expressionism)は印象主義(Impressionism)に対する言葉で、不安の感情などを表現している。
建築においても、メンデルゾーンのアインシュタイン塔などの作品がある。
ナチス・ドイツ時代は、「退廃芸術」の一つと規定され、激しい弾圧を受けた。