バンド・ワゴン(1953)




アステアのために撮った
アステアの映画なのでしょう

決してハンサムとは言えない風貌
だけど、このエレガントさは他にはない
ダンスにいたってはもう神業

ミュージカルで、映画で成功し
アステアの長いキャリアの中での頂点と言われている作品
ミュージカル・ナンバーは最高でしょう

トニー・ハンター(アステア54歳)は
かっての映画スター、でも今は誰も見向きもしません
でも彼は明るい
自分の身の丈を知り、大きなことも望んではいません
舞台の依頼をうけ、NYへ

新進の演出家に、新進の若いバレリーナ
こりゃ自分には無理だと思いつつも
なんとか公演までたどりつきます
だけど大ゴケ

そこでも落ち込まないのがいい(笑)
仲間と地方巡業だ
皆がもう古いと思っていた
トニーのスタイルの舞台は大成功
そして諦めていた恋も手に入れます

実際にも彼はとてもシャイで紳士で
周囲から好かれていたようです
晩年には若い奥さんももらったそうで(笑)

落ちぶれた中年男子も、そう悪いもんじゃない
まだまだやれるんだと
元気になれる作品でした



【解説allcinema】より
MGMミュージカルの熱烈なファンはまず本作をベストに上げる。有名なラスト・ナンバー“That’s Entertainment”に胸躍らせない人はいないだろう。それがMGMのテーマ曲ともなり、アンソロジー映画の題名にそのままなった。アステアの落ち目ダンサーが再び成功を目指すという、バック・ステージものだが、彼が共演するのが新進バレリーナのS・チャリシー。彼女がまたぐっとモダンな女の子で、往年の伊達男も戸惑うことばかり。しかし、彼は生来の粋人(そう、まるでアステアその人なのだ)、次第に彼女のハートを射止め、一度は失敗した舞台も自分達で創り変え、新たな成功を収める。そんな内容が、当時の最前衛のダンス表現にアステアを取り組ませることになり、非常にクリエイティブな成果をあげた(振り付けはマイケル・キッド)。特に“ガール・ハント・バレエ”の場面は、沢山のエピゴーネンを生んだ。