ノスタルジア(1983)




オープニングのタイトルバックから
あまりの美しさに溜息がでます

完璧な構図、色あい、驚くべき奥行き
まるで天国へ向かう場所のよう
それとも、その通りなのでしょうか

物語は、故郷を捨てた詩人が
旅先で狂った男と出逢うというもの
そして詩人はその男と約束をし
それを果たして死ぬのです

なんて虚しい・・・

本当の自由も、世界平和も
叶うことなんてないのに

自分のことしか考えず
家族さえ幸せにできなかったくせに

後悔し
過去に生きる

これは、すべてを捨ててしまいたいときや
すべてを捨てたあとに見るのに
ふさわしい作品のような気がします

私も自分の死期を知ったとき
大切なものを失ったとき
もう一度見てみよう
そう思う






これが天才の作った映画
お気に入りで



【解説】allcinemaより
ソ連を離れ“亡命者”となったタルコフスキーの初の異国での作品であり、祖国を失ってさまよう彼の心情が如実に出た、哀しく重厚で、イマジネーションに溢れた映像詩。主人公を彼と同じく国を追われた詩人とし、彼が不治の病に犯されながらイタリアで放浪を続け、故郷への想いや死への畏れ、実存的苦悩に囚われるさまを、独特の湿気にすべてがおぼろになるような映像でゆったりと綴っている。催眠効果は抜群だが、寝てしまっては勿体ない(それも快いのだけども、そうなっても、臆せずもう一度観ましょう)。ソ連が泡沫と消えても、世界中のどこかで同じ痛みが孤独に味わわれている限り、本作を観ることは無駄ではない。旅の果て、主人公アンドレイは寒村の湯治場にたどりつき、そこで狂人扱いされている老人ドメニコに出会う。彼はアンドレイに“ロウソクの火を消さずに広場を渡るように”と謎めいた依頼をする。それが“世界の救済”に結びつく、と言うのだ。そしてドメニコはローマの騎馬像の上で、平和に関する演説をぶち、焼身自殺を図る。と場面は、アンドレイがロウソクの炎を、吹きすさぶ風から必死に守りながら幾度となく、ぬかるむ広場の横断を試みる様子に切り替わる。そして、遂に渡り切ろうという時、篠つく雨は雪に変わり…。他の多くの亡命芸術家と違い、国を棄てることなく愛し続けたゆえに、魂の越境者にされてしまったタルコフスキーが、今生きていれば、“崩壊”後の世界とどのように格闘したろう。近年のミハルコフの如才ない愚作あたりを見、この映画を思い起こすにつけ、そう思う。