花様年華(かようねんか)(2000)

 
「女は顔を伏せ、男に近付く機会を与えるが
男には勇気が無く、女は去る」
 
 
美しい映画でした
東洋的な愛のかたち
「愛してる」「君だけだ」「離さない」
そんな相手を縛り付けるような言葉は一切ありません
 
ゆっくりと流れる水のような
舞い上がる煙草の煙のような
時間とともに形を変えながら
成熟して
消えていく
そういう愛
 
 
マギー・チャンは子どもが欲しかったのでしょう
どちらかが不妊だったか
それとも夫に拒まれていたのか
 
同じ日に同じアパートに引っ越してきたチャウとチャン夫人
お互いの夫と妻は海外に出張中
そして、そのお互いの夫と妻は不倫関係にありました
 
パートナーの浮気相手のことを知りたい
ふたりはたびたび逢い、探り合うようになります
 
なぜ彼らは、結婚しているのに愛し合うようになったのだろう
海外出張が多いことで話があったのか
食べ物の好みが、ネクタイやバッグの趣味が似ていたのか
今も仕事先の日本で、一緒にいるに違いない
 
裏切られた哀しみ
耐えられない孤独
 
しかし、チャウとチャン夫人も密会するうち
まるで傷を癒し合うように、惹かれあっていきます
 
しかしそれではいけないと、不倫に対する良心のとがめから
シンガポールに赴任してしまうチャウ
 
やはり見どころはマギー・チャンのチャイナ・ドレス
チャイナ・ドレスのオーダーメイドは女性の身体を
隅々まで細かく採寸し、体型ピッタリに作るそうです
そのために、歩く後姿までもが官能的
 
キスシーンのひとつもない
だけど彼女のドレス姿だけでエロスなのです
 
 
何も言わずに切った電話は
チャウに妊娠と、夫との離婚を伝えようとしたのでしょう
でもためらった、そっと受話器を置くチャン
 
原題は「in the mood for love」
その通り、ただただ大人の男と女のムードに酔う作品
綺麗が好きな方にお勧めです
 
そして私も「お気に入り」になりました
 

 
【解説】allcinemaより
欲望の翼」「ブエノスアイレス」のウォン・カーウァイ監督がトニー・レオンマギー・チャン主演で描く大人の恋愛ドラマ。1962年、香港。新聞社の編集者であるチャウ夫妻がアパートに引っ越してきた日、隣の部屋にもチャンが夫と引っ越してきた。チャンは商社で秘書として働いている。ふたりとも忙しく、夫や妻とはすれ違いが多かった。やがて、チャウは妻がチャンの夫と不倫していることに気づく。怒るチャウは復讐心からチャンに接近するのだが……。