アラビアのロレンス(1962)




「なぜ砂漠が好きなのか?」
「清潔だから」


こういう名高い名作のほとんどは10代の頃
テレビの吹き替えで見ました。

この作品ではオマー・シャリフの登場するシーンに
「なんてカッコいいんだ!」とずいぶん感動した記憶があります。
今思うと10代にしては、あまりにも渋い男性の好みだなとは思いますが(笑)

しかし、いくら素晴らしい作品とはいえ4時間近い長尺
何度も見るのには勇気がいりますね(笑)
申し訳ないけどインターミッションとか早送り(笑)

この作品を見れば、地球上で人間の住めないところが
いかに美しいかがわかります。
人間が足を踏み入れた場所を人間が汚していくのです。
自然が浄化できないくらいに。

でも50年以上前のこの作品
なぜか今見ても、とても馴染のある映像に思えます。

そうか
イスラム国だ。

武器を持つアラビアの兵士たち。
馬やラクダがトヨタ車になっただけで
あとは私たちがメディアで見る
イスラム国の兵士たちと同じ光景なのです。

彼らに武器を与え戦い方を教えたのは
しかも同じ民族でさえ「人間ではない」と呼ぶ
過激派を集めては戦闘させたのは
最初はイギリスだったのですね。

それでも世界から責められないのは
戦勝国の特権なのでしょうか。

女性がひとりも登場しない、男だけの映画。
ロレンスはトルコ兵に捕らえられたとき、ムチ打ちだけでなく
もっと屈辱的な行為を受けたのでしょう。

そのことが彼を、無秩序に、残虐にし
それが、まさか21世紀まで繋がってしまうとは・・
そのことを知るだけでも偉大な作品だと思います。

今はもうオマー・シャリフはタイプでないですが(笑)
でもアリ酋長のような指導者はやはり魅力的ですし
現代であっても政治のトップに立ってほしい人物ですよね。

自然も、殺戮も、全てのシーンが美しい色と画の
完璧な演出の映画。
傑作でしょう、間違いない。



【解説】allcinemaより
 1916年、カイロに赴いている英国陸軍のロレンス少尉は、トルコへの反乱に意気込むアラブ民族の現状を確かめに向かった。そこで彼は反乱軍の非力を痛感し、アラブ種族をまとめ上げてゲリラ戦へ打って出ることに。やがて、トルコの一大拠点を巡って激闘を展開し、勝利する。そして、再びゲリラ戦の指揮官として新しい任務を与えられ、トルコ軍を打倒するロレンス。だが、一方でアラブ同士の争いが起こり、彼も尽力むなしく徐々に孤立していく…。
 D・リーンの数ある名作の中でも紛れもない最高傑作で、アカデミー賞7部門を受賞。1914年、第一次大戦中のアラブ。砂漠の利権を狙い侵攻するトルコ軍とアラブ人たちとの激突、大英帝国の介入と、激動するアラブ社会に突如現れた英国人T・E・ロレンス。ドラマは、砂漠とその民を深く愛し、しかし英国人であるがために深い挫折に追い込まれていく青年リーダー、ロレンスの苦悩を中心に、砂漠の一大戦争スペクタクルを展開していく。ベドウィン族の戦闘部隊が一瞬の内に一村を壊滅させるシーン、疾走する列車を爆破するシーン他、その迫力は今なお圧倒的で、今日では絶対撮影不可能とまで言われている。D・リーンが長年こだわり続けている“人間と自然”“西欧文明と異文化の相克”のテーマがここでも徹底して描かれ、深い感動を呼ぶ。