山椒大夫(1954)

 
 
ジャン・リュック・ゴダール監督が
好きな映画監督を3人あげてくださいという質問に
「ミゾグチ、ミゾグチ、ミゾグチ」
と答えたのは有名な話ですよね。
 
しかし私がいままで見ている溝口監督作品は
祇園の姉妹」と「雨月物語」だけではないかと思います。
映画通への道のりはまだまだ遠い。笑
 
物語のすじは子どもの頃、童話「あんじゅとずしおう」を
読んでいたので知っています。
離れ離れになり、苦労した母と出世した息子が
最後に再会するというハッピーエンドの記憶があるのですが。
大人版はかなり非情でございました。
 
安寿と厨子王は、父親が政策のため身分を失ったとはいえ
いいところのお坊ちゃんとお嬢様。
なのに旅の途中、騙され誘拐されてしまいます。
そして山椒大夫亭の奴隷となります。
 
召使は殺され母親は売春宿に売られます。
安寿と厨子王を探すため逃げようとした母親は
売春宿の主に目をつぶされてしまいます。
 
逃亡しようとすれば顔に焼印。
病人がいれば山に生きたまま棄てられる。
入水自殺してしまう安寿。
情け容赦が全くありません。
 
さすがのカメラは宮川一夫さん
やっぱり素晴らしいですね。
舟で親子が引き裂かれるシーンや
お寺で山椒大夫の手下が厨子王を探すシーンなど
息を飲みます。
悲惨で残酷、だけどとても美しい。
 
素手では帰れません、どうか賞を獲れますように」と
溝口監督が手をあわせ祈ったというのも有名な話。
見事受賞できて良かったですね。笑
 

 
【解説】allcinemaより
森鴎外の同名小説を、八尋不二と依田義賢が共同で脚色し、溝口健二がメガホンをとった文芸作品。特に美術と撮影はレベルが高く、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した。美しいラストシーンは、ゴダールが「気狂いピエロ」において引用したことでも知られる。
 平安時代末期、農民を救うため将軍にたてついた平正氏が左遷された。妻の玉木、娘の安寿と息子の厨子王は越後を旅している途中、人買いにだまされ離ればなれになってしまう。玉木は佐渡に、安寿と厨子王は丹後の山椒大夫に奴隷として売られた。きょうだいはそれから十年もの間、奴隷としての生活を続けるが、ついに意を決して逃げ出すことにする。しかし追っ手に迫られ、安寿は厨子王を逃すため池に身を投げるのだった。