アレクサンドリア(2009)




「私が来たのは地上に平和をもたらすためだ、と思ってはならない。
 平和でなく、剣をもたらすために来たのだ」
(マタイ書第10章第34節)



4世紀末エジプト。
上流階級である学問家系のお嬢様、ヒュパティアは
たくさんの生徒をもつ哲学の教師でした。
頭がよく、公平で慈愛の心に満ち、そしてとても美しい女性。
生徒たちは皆、ヒュパティアを尊敬し愛していました。

やがて長官となるオレステス
元奴隷の修士ダオスも
ヒュパティアのことが大好きでした。

しかし、ヒュパティアにとっては学問がすべて。
宇宙の真理を解くために研究に身を捧げます。

現在でも学問に身を投じる人は
世俗に疎い方が多いよう気がします。
頭の中は自分の研究のことでいっぱい。
でもそういう人間って、魅力的でもありますよね。

ヒュパティアも聡明で無垢
世間知らず、だけどとても魅力的。

奴隷の身で生まれたダオスにでさえ愛情を注ぎ
素晴らしいと、完璧だと、これこそ私の思っていたことだと
ダオスの考えた惑星を配置した模型に感激してくれる。

ヒュパティアは神の世界の人間なのです。
「誰のものにもならないで・・」
ダオスは夜空の星に願います。

だんだんとキリスト教は勢力をつけ、暴徒化していき
建造物や貴重な資料を異教徒のものと破壊し燃やしていきます。
古代偶像崇拝ユダヤ教は迫害され
キリスト教に改宗するよう求められます。

当時の人間には理解できるはずもないヒュパティアの地動説。
やがてキリスト教の指導者達はそんな彼女を
「魔女」だと宣言します。

私はキリスト教の教えもキリスト教の歴史も
なぜ宗教的不寛容というものがあるのかもわかりません。

ただこの作品のなかで
真のキリスト教信者として描かれているのは
ダオスただひとりなのではないでしょうか。

罰を受けるものの罪をかぶり
宇宙の謎をも理解します。

神様は彼の願いを受け入れたのです。
ヒュパティアは未来からやってきた天才。
彼女の魂はダオスの手で神様のもとに戻す・・・
そういう役目を与えられたのだと。

しかし、史実によると
ダオスという人物は存在しなかったそう。
ヒュパティアは生きたまま皮を剥がれ
見世物にされたそうです。

悲しい。



【解説】allcinemaより
 「アザーズ」「海を飛ぶ夢」のアレハンドロ・アメナーバル監督が、4世紀のエジプト、アレクサンドリアに実在した伝説の女性天文学者ヒュパティアの悲劇の物語を壮大なスケールで映画化した歴史スペクタクル巨編。主演は「ナイロビの蜂」「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」のレイチェル・ワイズ、共演にマックス・ミンゲラオスカー・アイザック
 ローマ帝国崩壊寸前の4世紀末。東西交易の要衝として文化的な発展を遂げたエジプトの中心都市アレクサンドリアにも徐々に混乱の足音が迫りつつあった。そんな中、美貌と明晰な頭脳を兼ね備えた女性天文学者ヒュパティアは、学問に生涯を捧げ宇宙の真理を解明することに情熱を傾けていた。誰でも分け隔てなく弟子として受入れたヒュパティアだったが、少なからぬ教え子たちが抱いたであろう彼女への恋心が実ることは決してなかった。一方街では、急速に台頭してきたキリスト教徒と、古代の神々を信じてきた科学者たちの対立が激化し、ついには人類の叡智が詰まる図書館が両者の争いの犠牲となる。やがて、教え子の多くがキリスト教に改宗し出世を遂げる中、変わらず研究に没頭していたヒュパティアだったが…。