ホワイトハンター ブラックハート(1990)





響く太鼓の音色、何も言わない少年
素晴らしいラストです。

この映画のタイトルはこういうことだったのか
主人公の絞り出す擦れた「アクション」の声には
鳥肌がたちました。


撮影エピソードを元にした物語。
容赦ない黒人やユダヤ人に対する差別の言葉が出てきたり
女性を罵倒するシーンなどは、見ていてヒヤヒヤします。

そして、映画の撮影よりもアフリカ像のハンティングに
魅せられてしまった映画監督。

「観客がどう思うかなんてクソくらえ。俺はやりたいように撮る」

我儘で破天荒、周囲のスタッフには迷惑をかけてばかりだったそうですが
公開した作品はヒット。
壮大なアフリカの風景は、たまらなく美しい。


「俺達は映画の中の人物の運命を操る神なんだ」


だけどその傲慢さを、浅はかさを
自分自身が知ることになるのです。

強さの象徴への批判。
それが私がこの作品から私が受けたメッセージ。
そしてどのイーストウッド監督作品でも感じる
批判に対する批判を、より一層感じます。

それぞれの国や、人の文化や、考え方と
自分の思想を同調させる必要はない
ましてや強要するべきではないのです。

これも隠れた秀作でしょう。
シリアスな映画が好きな方にオススメです。



【解説】allcinemaより
 映画「アフリカの女王」とその監督ジョン・ヒューストンをモデルに、“象狩り”に憑かれた映画監督を描いたイーストウッドの力作。1950年代、黄金期のハリウッド。多くの負債を抱えながらも、自分の気に入った作品しか撮らない映画監督ジョン・ウィルソン。新作の撮影のために、若き脚本家ピート・ヴェリルと共にアフリカへと旅立つが、ウィルソンの本当の目的は野生の象を狩ることにあった。現地人ガイドを案内に早々と象撃ちを始めるウィルソンに、脚本を進めることが出来ないヴェリルは苛立ちを隠せない。やがて脚本が完成しないまま、現地にはプロデューサーのランダースをはじめ多くのスタッフや俳優たちがやって来るが、ウィルソンは撮影を放棄してしまう…。
映画は、天才肌の監督のわがままさや気骨のある行状を、美しく捉えたアフリカの自然を背景にエピソードで追うだけで、そこに明確なテーマも派手な見せ場も持ち込まないが、それでいて忘れ難い魅力を放ち続けている。多分にそれは役者としてのイーストウッドの魅力が大きいのだろうが、それは、淡々として力強い演出で作品を支えた監督イーストウッドがあればこそである。ラストの数分間はそのイーストウッドの二つの顔が最大限に効果を発揮した名シーンとなった。「アフリカの女王」の脚本家ピーター・ヴィアテルの原作をヴィアテルとジェームズ・ブリッジス(「チャイナ・シンドローム」の監督)とバート・ケネディ(「夕陽に立つ保安官」などの娯楽西部劇監督)が共同で脚色したのも興味深い。