声をかくす人(2011)





「暴君はかくのごとし!」

演出といい、編集といい、とても丁寧に作られた良作。
エンターテイメント性はありませんでしたが。笑

2008年、アメリカの真実を正確に描き
アメリカの歴史を学び直してもらうために設立されたという
アメリカン・フィルム・カンパニー(TAFC)の初作品ということです。

アメリカ合衆国の初期大統領、リンカーンといえば
南北戦争で南軍に勝利し奴隷解放に貢献した正義の勇者。
誰もが描くそういうイメージ。
そのリンカーンが南軍の残兵に暗殺されてしまいます。

逮捕されたのは犯人にアジトを提供したとされる
下宿屋を経営する女性メアリー・サラット。

そしてメアリーの息子、ジョンはリンカーン暗殺の犯人
ジョン・ウィルクス・ブースの仲間でした。

作品を見ていくうちに私たちは
彼女を弁護することになったエイキンと
同じ気持ちになって物語を追うことになります。

最初は間違いなく有罪だと
助けれるはずがない、弁護なんてとんでもない
そう思います。

しかしだんだんと裁判が進むにつれ
理不尽さを覚えるのです。
民間人にもかかわらず軍法会議にかけられる。
第一に彼女は大統領を殺した犯人ではないのに、なぜ。

次々と揉み消される彼女の無罪の証拠品。
嘘ばかりの証言。
過酷な状況に追い込まれるエイキン。

国家権力にかなうはずがないのです。
彼女は静かに死刑台に向かいます。

それは母親としての責任もあったのかも知れません。
わが子の罪を受けることは
それがただの見せしめであったとしても
自分の命なんか惜しくはない。

初めてアメリカで死刑になったという女性。
裁判での台詞も実際の記録がもとになっているそうです。

確かにアメリカの歴史を学ぶのには良い作品でしょう。
勉強になりました。



【解説】allcinemaより
ロバート・レッドフォードが監督を務め、リンカーン大統領の暗殺に関わったとしてアメリカで女性として初めて死刑に処せられたメアリー・サラットの史実を基に、その裁判の過程をできるだけ忠実に再現して描き出した法廷ドラマ。一貫して無実を主張しながら何かを守って沈黙を続けるサラットの姿と、予断と偏見の中で感情的な報復へと突き進む世論に抗い、真実と法の正義を求めて孤高の戦いを繰り広げる弁護士フレデリックの葛藤と奮闘を綴る。主演はロビン・ライトジェームズ・マカヴォイ、共演にトム・ウィルキンソンケヴィン・クラインエヴァン・レイチェル・ウッド
南北戦争終結間もない1865年。リンカーン大統領が南軍の残党によって暗殺される。主犯のジョン・ウィルクス・ブースは逃亡中に射殺され、さらに7人の男と1人の女が共犯として逮捕される。女の名前はメアリー・サラット。下宿屋を営みながら2人の子どもを育てる未亡人だった。元北軍大尉のフレデリック・エイキンは、元司法長官のジョンソン上院議員から彼女の弁護を頼まれる。犯人への憎しみを抱きながらも、渋々弁護を引き受けたフレデリックだったが、被告が民間人にもかかわらず、一般の法廷ではなく軍法会議にかけられることに違和感を覚える。そんな中、毅然と無罪を主張しながらも、それ以外のことは黙して語らないメアリーに戸惑うフレデリック。しかし、審理が進むにつれ彼女の無実を確信、弁護に力が入る。するとフレデリックへの風当たりも強くなり、いつしか四面楚歌の状況に追い込まれるが…。