果てしなき渇き【深町 秋生 】(2007)

 

 
狂気と暴力。
善人はひとりも出てきません。
そして誰も救われない。
滅亡という闇に堕ちていくだけ。
 
警備会社に勤める元警察官の藤島。
離婚した妻から娘の加奈子が行方不明になったと連絡がきます。
加奈子の部屋の箪笥には高校生が着るには高級そうなブランド物の服
そして覚せい剤が隠されていました。
加奈子の交友関係を調べていく藤島は
やがて彼女の裏の顔を知ることになります。
 
どいつもこいつもワルで誰にも共感できませんが
やはり一番気持ち悪いのは父親の藤島でしょう。
主人公が見境のない最低最悪の男なのです。
すぐ逆上する、暴力をふるう、暴言を吐く。
 
誰もが夢中になってしまうような聡明で美しい娘の加奈子。
彼女は男を狂わせてしまいます。
まるで女神のように君臨するのです。
 
藤島もまたそのうちの一人だったのでしょう。
加奈子に愛して欲しい・・
 
ただその欲望は普通の父親とは違った・・・
その愛欲のせいで加奈子は氷の心になってしまいます。
そしてその愛欲のせいで藤島は人を殺していく。
 
生々しい暴力シーンと性描写は嫌悪感120%ですが
それでも読ませてしまう深町氏の文章力はさすが。
 
読後感はとても、とても悪いですね。
せめて藤島が死んでくれたら良かったのに。
 

 
【ストリー】ウィキペディアより
元刑事の警備員の藤島秋弘はコンビニでの大量殺人を目撃してから間もなく、離婚した元妻から行方不明になった娘の加奈子の捜索を依頼される。しかし娘を探していく過程で加奈子が悪名高い不良グループと関係していることが露見し、さらに彼女の部屋から大量の覚醒剤を発見。いつしか藤島は、娘が地元の裏社会や財政界の人間までもを巻き込んだ大規模な犯罪行為の中心人物であることを知り、彼女を中心とした内部抗争に巻き込まれていくうちに娘を探す手口が徐々に凶暴になっていく。
そして3年前、加奈子はクラスの中でいじめられていた瀬岡という少年に目をつけていた。瀬岡は自殺してしまった加奈子の恋人の緒方のようになりたいと思っていたが、加奈子は既に彼に対して冷徹な罠を仕掛けていた。
瀬岡は加奈子が抱くことになった狂気を味わい、藤島は自ら加奈子に犯した残酷極まりない仕打ちを思い出すことになる。