ケモノの城【誉田哲也】(2014)


 
 
「尼崎事件」や「北九州連続監禁殺人事件」という
実在の事件がベースのフィクション。
こんな怖いことが本当にあったのかと背筋が凍ります
ハードな描写が多かったですね。
心臓の弱い方にはお勧めできません。
 
東京町田。
自動車整備士の辰吾とファミレスで働く聖子は
20代のラブラブカップルで同棲しています。
そこにある日突然居候し始めた聖子の父親の三郎。
辰吾は無職で怪しい行動の三郎が気に入りません。
 
監禁虐待で警察に保護された少女、麻耶。
彼女の父親はヨシオとアツコに暴行され殺されたと言います。
麻耶の供述によって描かれたヨシオの似顔絵は三郎そっくりでした。
警察に身柄を拘留されたアツコ。
ヨシオと麻耶とアツコの住んでいたマンションから見つかった
大量の血痕、そして明らかに殺されたと思われる複数の人間のDNA。
 
とにかく取調官の木和田に話すアツコと称する女の供述が凄いのです
凄すぎます。
このリアルでグロテスクな拷問描写には
普通の人間ならば不快になって当然でしょう。
 
なのにどんどんと読み進めてしまうのです。
時間を忘れてページをめくってしまう。
拷問、マインドコントロール、殺人・・・
この先の展開がどうなるのか
気になってしょうがない。
 
そうか、こうすればすべての証拠が消えるのか。
なにもかもが、本当に存在したかどうかさえ分からなくなる。
 
終盤に聖子が辰吾に自分の幼い頃の話をした時にはウルっとしましたね。
明るくて無邪気そうに語るのが余計に辛い・・
 
だけれど犯人が決してあがらないこの事件の黒幕は
三郎と聖子だと思ってしまう私の推理は当たっているでしょうか?
 
ラストはちょっと物足りない気がしましたが
公務員が職務で出来ることは限られていますものね。
グレーゾーンな畳み方になってしまったのは
しょうがないことなのでしょう。
 
とにかく読み始めたら一気読みできる素晴らしい筆致。
読んだ人は警察小説の傑作と思うか
後味の悪さに後悔するか
どちらかふたつにひとつでしょう。
 

 
【解説】GoogleBooksより
ある街で起きた監禁事件。保護された少女の証言に翻弄される警察。そんな中、少女が監禁されていたマンションの浴室から何人もの血痕が見つかった―。あまりにも深い闇に、果たして出口はあるのか?小説でしか描けない“現実”がここにある―。圧倒的な描写力で迫る衝撃のミステリー。