愛されるために、ここにいる(2005)


 
 
 
大人の恋、大人の映画。
 
人生の潤いを失った年代になってから
若い頃のような、もしかしたら若かり日以上に
こみ上げてくる熱い思い。
分別ある年齢にもかかわらず。
人を好きになるって、苦しいことなのだなと思います。
 
ダンス教室に通う結婚間近でちょっとマリッジブルー
フランソワーズ(アンヌ・コンシニ)。
そのダンス教室で子どもの頃憧れていた
ジャン・クロード(パトリック・シェネ)と再会します。
 
欧米では結婚式のためにダンスを習う方が多いようですね。
結婚パーティでは新郎新婦、両家の両親が
ダンスを披露しなけばならないのです。
 
ジャン・クロードは裁判所の執行官という
家賃未払いの住民にお金を督促するという
硬いけけど、他人からは嫌われる仕事をしています。
妻とは離婚し子どもはすでに成人。
健康診断で医師から何かスポーツをするようにと薦められ
職場の近くのダンス教室に通い始めたのです。。
 
仕事に、親の介護に疲れた50歳の中年男。
恋愛の「れ」の字もなく、女性と付き合うなんて想像したことさえないでしょう。
そこに、かっての知り合いで
明るく自分を慕ってくれる女性が現れたのです。
 
私のこと覚えてる?
車で送って行って、家に行ってもいい?
 
一緒にタンゴのステップのおさらい。
息がかかる距離でダンス。
キスしたい
そんな抑えきれない気持ちを抑える・・
 
「結婚の準備は順調?」
 
しかし彼女には婚約者がいたのです。
プレゼントの香水を投げ捨てるジャン・クロード。
彼女に似合いそうな香りを必死で選んだ自分は
なんて滑稽なのだろう。
抑えきれない嫉妬心。
独占欲。
 
冷たくなってしまったジャン・クロード。
彼の気持ちを取り戻したいフランソワーズ。
大人のふたりは、そのことで責め合ったりはしません。
ただ頭の中で迷い、時間だけが経過していきます。
相手に迷惑になってはいけないのです。
やがてその恋をあきらめようとします。
 
だけど心の中の愛の灯は、消えることなく残っていました。
 
再会したふたりの、タンゴを踊るラストシーンは雰囲気十分。
言葉を交わさず熱い視線だけが交りあうたっぷりな余韻・・
 
人生の経験を積んだ大人にしかわからない恋。
フランス映画の王道ですね。
 
アンヌ・コンシニの笑顔がとてもチャーミングでした。
フランスの女性ってやっぱり素敵。
お気に入りにしてしまいます。
 


 
【解説】allcinemaより
人生に疲れた中年男が、ふとしたことから通い始めたタンゴ教室で若い女性と出会い、互いに秘めた感情が昂揚していくさまを繊細なタッチで綴る静かな愛のドラマ。主演は「読書する女」のパトリック・シェネ、共演に「灯台守の恋」のアンヌ・コンシニ。監督はこれが長編2作目の新鋭ステファヌ・ブリゼ
 50歳を迎えたジャン=クロードは、長年務めてきた裁判所の執行官という憎まれ仕事にも嫌気がさし、高齢の父や別れた妻との間の息子との関係にも問題を抱え、人生に疲れ果てていた。ある日、医者から運動を勧められたジャン=クロードは、以前から気になっていたタンゴ教室に通ってみることに。彼はそこでタンゴを習う若い女性フランソワーズと出会う。やがてレッスンを通じて次第に打ち解け合い、互いの気持ちが近づいていくのを感じる2人だったが…。