ヘッドライト(1955)


 
 
「ヘッドライトはふたりの行く末も照らしたか?」
侘しく哀愁漂う恋愛物語。
 
妻子あるトラック運転手ジャンと、安宿でメイドとして働くクロ。
親子ほど年の違う男女が恋に落ちます。
男はそのことが会社にばれてしまい仕事をクビになります。
女は妊娠し、男の家族にその存在を知られます。
 
多くの女性は男性を好きになる場合
第一印象で生理的にあう、あわないというのが
結構重要なポイントになるのではないでしょうか。
 
若い娘がなぜ、初老の醜男に恋をしたのか?
はじめて逢った時からクロはジャンが気になります。
一目見て好きなタイプなのでしょう。
ジャンに父親のようなぬくもりを感じたのかもしれません。
やがて彼の大人の男らしさや寛容さを知るうちに
好意が愛情へと変わっていったのです。
 
ジャンのほうはどうなのでしょう。
口うるさい嫁、居場所のない家庭、忙しく休む間もない仕事。
そんな荒れた生活の中、自分を慕ってくれるクロが可愛い。
そしてクロの若い肉体に、忘れていた熱い思いを
男を、取り戻したのではないでしょうか。
 
男性の場合は女性側から言い寄られたら
断る男性は少ないような気がしますよね。笑
それが若くて可愛いくて純情そうならなおのこと。笑
 
しかし不倫なのです。
ジャンにはまだ幼い子もいるのです。
ふたりが一緒になることは難しい、すぐにとはいきません。
 
ひとりで生きていくことを決心し、中絶するクロ。
しかしその生きるためにした行為が、彼女の命を奪います。
最期まで幸せを掴めなかった女・・
 
男は元の生活に戻ります。
ただ時々、昔愛した女を思い出しながら。
 
それでも
 
どんなに悲しくても
たとえ幸せになれなくても
愛のない人生よりは
愛のある人生のほうがずっといい・・
そういう物語なのでしょう。
たぶん、きっと。
 

 
【解説】allcinemaより
ギャバンが初老男の哀感を滲ませて素晴らしいメロドラマの佳作。パリとボルドー間を走る初老のトラック運転手ジャンはこの日、街道筋の常宿でふと一年前の出来事に思いを馳せた。あの日もこの宿を訪れた彼は、そこで年若い女中クロチルドと出会い、恋に落ちた。冷たく暗い家庭に嫌気が差していた妻子持ちのジャンにとって、彼女は掛け替えのない存在となっていく。こうして新しい人生を歩む決心をするジャンだが、その矢先に職を失い、クロチルドとの連絡を絶ってしまう。クロチルドは妊娠していたが、彼の失業を知るとジャンに心配かけまいと、密かに堕胎医を訪れるのだが…。アルヌールも健気な古典的ヒロインにみずみずしい血を通わす好演で、ヴェルヌイユも細やかな演出をみせる。原題を『とるに足りない人々』という、しかし、心にいつまでも残る人物像が描けた作品。J・コズマのメランコリックな主題歌も大ヒットした。