ナインハーフ(1985)

 

 
 
 
「これが、ぼくの、警告・・・だ」
 
 
この作品、エロチックなシーンばかりが話題になってしまって
過小評価されているのではないでしょうか。
出会いから別れまでの3ヶ月半・・
私は恋愛映画の傑作ではないかと思いました。
 
原作が女性、監督が女性ということもあるのでしょう
ヒロインの恋する、揺れ動く感情がとてもわかりやすい。
最後の別れには切なくて、切なくて、泣いてしまいました。
 
「あなたはいつも笑っているのね」
 
80年代のニューヨーク、中華食材店で一瞬出逢った
アートギャラリーに勤める離婚したばかりのエリザベス(キム)と
ウォール街に勤めるビジネスマンのジョン(ミッキー・ローク)。
いきなりのプレゼント
いきなりのベッドルーム
いきなりの目隠し、氷や食べ物を使ったプレイ・・
ふたりは付き合いはじめるものの
エリザベスにとってジョンの私生活は謎だらけでした。
 
奥さんは、ほかに彼女はいるのだろうか
ほかの女性ともこういうことをしているのだろうか
してきたのだろうか。
エリザベスは不安でいっぱいになるのです。
 
ジョンの職場に行く、そこで美人の秘書を見ます。
それだけで大きなショックを受けてしまう・・
ジョンはエリザベスの気持ちを見抜いているように
彼女の気持ちを揺さぶっていきます。
 
「なぜわかったの?、わたしがあなたの言うとおりになるってことが・・」
「君はぼくの分身だからさ」
 
やがてエリザベスは堪えられなくなっていきます。
ジョンの読めない心に
セックスだけの先の見えない付き合いに不安になり
苦しみます。
 
ああ、そういうことなのか。
髪結いの亭主」でマチルドが自殺したのは
ラストタンゴ・イン・パリ」でジャンヌが男を殺したのは
愛する辛さに耐えられなくなったからなのです。
男にほかの女性の存在があることが許せない・・・
そしてその責めは、相手ではなくすべて嫉妬した自分に向けられるのです。
 
マチルドは「バニラ風味のレモン」
ジャンヌは自殺した妻の存在を知ってしまいました。
エリザベスはジョンが他の女性に触れキスをしたのを見たことで
心が壊れてしまったのです。
 
エリザベスが別れを決心したとき
ジョンは初めて自分の身の上を話し出します。
遅い。
遅いよ・・
部屋を出て行き、むせびなくエリザベス。
 
 「髪結いの亭主」でアントワーヌがマチルドを追わなかったように
ジョンもエリザベスを追いませんでしたね。
もし追っていれば
別れはこなかったのにとも思います。
後ろから掴まえてくれるのを待っていたのかもと。
 
 

 
私的には素晴らしい恋愛映画でした。
(謎も解けたし。笑)
 
お気に入りで。
 

 
【解説】allcinemaより
エイドリアン・ライン監督の描く、エロティック・ラブ・ストーリー。物語は、主人公の女性がふとしたことで出会ったある一人の男から、様々なエロティックな行為を受けることによって、彼女の内側に潜む潜在的な欲求を開花させていくまでを、文字通り9週間半に渡って追ってゆくというもの。公開当時、目隠しをして彼女の体に氷を這わせたり、四つんばいにさせて彼のもとまで歩かせたり等、A・ライン監督の官能的な演出が話題となった異色ラブ・ストーリー