素晴らしき哉、人生!(1946)

 
フランク・キャプラ監督の、人生の意義、人々の善意を訴えた
クリスマスの定番作品。
 
大学に行きたい、世界を旅したい・・
そんな希望にあふれた若者ジョージ(スチュアート)が、
自分の夢を捨て、町の人のために、父の会社の住宅金融を引き継ぎます。
彼は美しい妻や可愛い子どもに恵まれ、仕事も軌道に乗りましたが
イブの日に大金を紛失してしまい、追い詰められ自殺を考えます。
 
ある日突然、失業したら?無一文になったら?投獄されたら?
この先の生活を、食べる物を、住む場所を考えたら
目の前が真っ暗になるでしょう。
今までは幸せと思っていた子どもたちの賑やかな声さえ、騒音に感じ
うっとおしく感じてしまうかも知れません。
 
ジョージは他人のために尽くしてきた人間ですが
自らが他人に頼ったりお願いをするのは苦手な人間なのでしょう。
彼が唯一頼った人間は、もっとも嫌っていた町の権力者のポッターでした。
家族の生活のためにプライドを捨てたのです。
すぐその過ちに気が付いたものの、お金のあてはありません。
酒に酔い、途方に暮れる・・・
 
ジョージの家に集まってきた町の人々。
身銭を削っただろう小銭、こっそり隠し持っていたヘソクリ・・
ひとりひとりの金額はとても小さくても
テーブルの上に置かれたのはお金の山でした。
ここはとても感動するシーン。
町中の人にとって、彼は必要で大切な人間なのです。
 
ひとつひとつはたとえ小さな善意でも、集まると大きなものになります。
できることをできる範囲で・・
それは私もときどき思い出しては実行しなければいけないことでしょう。
 
天からの使いの2級天使が、おじいちゃんというのは可愛いかったですね。
「翼をありがとう」
最後に天使から届く感謝の言葉・・素敵なラストでした。
 
この作品は公開時には黙殺されたにもかかわらず、後年再評価を受け
今では「アメリカで最も親しまれている映画」の一本となったそうです。
これもまたクリスマスの「奇跡」の1つかもしれませんね。
 

 
【解説】allcinemaより
主人公のジョージという男は、いつも何処かでツキに見放され、逆境にばかり立ち向かう運命にあった。自分のミスではなく大金を失った彼は、全てに絶望して自殺を図る。ところが、12月の冷たい河に飛び降りようとしたとき、彼より先に一人の男が身を投げて救けてくれと叫んだ。あわてて救けたジョージに、男は、自分は見習い天使だと告げるが……。映画はまず、挫折つづきのジョージの人生を語る。この、希望が幾度となく打ち砕かれるエピソードの積み重ねには、ジョージばかりではなく観る側も、その理不尽さに怒りを感じずにはいられないだろう。そして、天使の案内する“もし彼が生きていなかったら”という仮定の世界で、彼は自分の存在理由をかいま見る事になる。果たして彼は自殺を思いとどまる充分な理由を見つけることが出来るのか、という部分がこの作品の要になるのだが、安易なハッピー・エンドに逃げていないのはF・キャプラの理想主義の賜物である。