男はつらいよ 奮闘篇(1971)


 
 
シリーズ7作目。
マドンナは榊原るみさん。
 
津軽に始まり津軽で終えるこの作品。
冒頭の集団就職列車に乗り込む若者たちに
「親を恨むなよ」
寅さんはしみじみ語りかけます。
(そして自分は列車に乗り遅れます・・笑)
 
しかし産みの母のお菊(ミヤコ蝶々)にはさんざん毒を吐きます。
負けじとお菊も「脳が足りない」などと毒で返します。
似た者同士の母子に見えましたね、とても自然。さすがです。
 
ラーメン屋で知り合った「頭が足りない」花子。
交番で保護されているのを見かけた寅さんは
彼女を故郷に帰すために駅まで見送ります。
釣銭を持たせる小さん師匠、月給前なのに汽車賃を財布から出すお巡りさん、
悪い男に声を掛けられないようにと心配する寅さん。
山田監督ワールドの人情ウルルン攻撃が炸裂。笑
 
「寅ちゃんの嫁っこになるかなあ~」
 
寅さんはただただ花子のことが心配だったのでしょう。
純真無垢な彼女を、世間の悪いこと全てから守ってあげたかった。
花子と一緒になれたならヤクザな生活は棄て、堅気になったかもしれません。
しかし養護施設から先生が迎えに来て
別れも告げないまま花子は青森に帰ってしまいました。
 
「あの娘は普通の人じゃないんだぞ」
 
「とらや」のみんなは、花子が帰って内心安心したでしょう。
いくら可愛くても、いい子でも、結婚となると話は別なのです。
だけれど、さくらちゃんだけは兄に幸せになって欲しかった。
願いを叶えてあげたかった・・
 
壊れた小屋の陰で、独り寒さに震える寅さんの姿はとても切ない・・
そして次の瞬間、またいつものお調子者へと戻るのです。
 
人情度はシリーズの中でも、さらに高めでしょう。
さくらちゃんがお菊さんの前で寅さんをかばうシーン。
駅の階段でみかんを落とす花子を見送るシーン・・
ジーンとくる名場面がいっぱい。
 
ただ現在では不適切な言葉を使った会話も多いので
不快に感じる方もいらっしゃるかも知れませんね。
 


 
【あらすじ】ウィキペディアより
いつものように当てもなく旅を続ける寅次郎は、ひょんなことから津軽訛りの少女花子(榊原るみ)と沼津で知り合った。話をしているうちに、花子が普通の女の子よりやや頭が弱いことに気が付いた寅次郎は放っておけなくなり、別れ際に「かつしか」、「しばまた」と書いたメモを渡す。後にとらやに住みついた花子は、面倒見のよい寅次郎にいつしか好意を抱くようになり、ついにプロポーズ。不測の事態に大いに慌て感激する寅次郎だが、間もなく花子は津軽に帰っていく。フラれっ放しの寅次郎が、初めてマドンナの方から恋心を打ち明けられた画期的な作品。