新選組始末記(1963)


 
 
新選組って女性ファンも結構多いですよね。
しかしこの物語、近藤勇でも土方歳三でも沖田総司でもなく
(私にとって名前さえ知らない)山崎蒸が主人公です。
私は時代劇には詳しくないのですけれど
山崎蒸という人物を主役においた新選組というのは珍しいのではないでしょうか。
 
 
そんな人気の新撰組、さぞかしカッコイイ集団と思っていたのですが
山崎(雷蔵)の恋人の志満(藤村志保)の言うセリフにびっくり。
 
「・・・新選組は、あれが武士の集まりでしょうか。
町の人たちが新選組を何と呼んでるか知ってるでしょ?
壬生狼、壬生狼。牙をむいて野良犬のように。
イヤ、あなたがそんな人殺しの群れに入るなんて。」
 
そんな恋人の反対を押し切って
憧れの近藤勇の率いる新撰組に入団したはよかったものの
志満の言った通り、卑怯な振る舞いも平気でするゴロツキ軍団。
山崎は理想とかけ離れた組織の実体を知ってしまいます。
そのうえ土方歳三の陰険な策略に遭ってしまいます。
 
土方歳三を演じた天知茂さんがまさにハマリ役です。
そして土方に乗せられたフリをする近藤勇のズル賢さ。
ただ、近藤勇役の若山富三郎さんの顔が
西郷どん」にしか見えないのがなんとも・・でしたが。笑
 
きちんと着物の織り目を正したような
ちょっと浮世絵風な構図というか演出は、なかなかのもので見る価値ありです。
クライマックスの池田屋襲撃の大乱闘も結構な迫力で良いですね。
特にセットがとても凝っていて眼を見張るものがあります。
 
信頼、人情、真面目、ズルさ、冷酷、葛藤、裏切り・・
新選組という過去の組織に
現代社会でも十分あてはまるものを感じることのできる作品でしょう。
 

 
【解説】allcinemaより
子母沢寛のデビュー作であり新選組研究の古典でもある同名小説をもとに「零戦黒雲一家」の星川清司が脚本を書き「斬る」の三隅研次がメガホンをとった。おなじみの題材である新選組を、その中心人物ではなく山崎蒸という隊士の視点で描いている。土方歳三をクールに演じた天知茂が印象に残る。
 剣こそ男の生きる道と信じる山崎烝は、恋人である志満の反対を振り切って、壬生の新選組に入った。だが局長の芹沢鴨は粗暴で、烝が尊敬する近藤勇の苦言は一向に聞き入れられなかった。土方歳三は芹沢の腹心を切腹に追い込み、さらに泥酔した芹沢をも斬殺。烝は土方のやり方に反発、黙認する近藤も詰った。ある夜、誤って公儀役人を斬ってしまった烝は、近藤に命じられ勤王浪士たちの動向を見張る探偵方になり、池田屋に集まる浪士たちを発見する。