国や時代を超えて女性の共感を呼ぶに違いない作品。
家事と6人の子供と夫の世話、家族からはまるでモノ扱いの毎日。
給料も出るし休みだってある家政婦のほうがまだましですよね。笑
ひとりぽっちでの終わらない労働、決して男性には理解できない孤独・・
ヒトラーのイタリア訪問の式典の日。
集会に出かけ、誰もいない静まりかえったアパート。
鳥かごから逃げた九官鳥を追い、向かいの部屋を訪ねたアントニエッタ。
片付いた部屋、床に描いたステップの練習用の足形、積み重ねられた本
そして身なりのいい伊達男ガブリエレ(マストロヤンニ)。
ふたりはずっと今まで、向かい合ったアパートの
お互いの窓を見ていたのかもしれません。
アントニエッタはひとり暮らしでお洒落で教養のありそうな男性が気になっていた。
ガブリエレは子育てと家事に追われるアントニエッタに家庭の温かさや
母性を感じていたのでしょう。
そんな男女が出会った。
ふたりの意味ありげな会話。
エプロンを外す
髪をカールする
ヒールに履き替える・・・
母親から女に戻る瞬間。
しかしガブリエレはホモでした。
だけれどふたりは抱き合います。
私の解釈が正しいかどうかわからないし、理解も難しいのですけど
ゲイの男性にとって、愛することのできる女性って母親だけなのかなと。
母親の愛を感じるようなアントニエッタとのセックス。
心情が伝わるローレンとマストロヤンニの名演技はまさしく逸品。
「三銃士」、垂れさがってしまう電灯、コーヒーミル、洗濯物・・
小道具の巧みな使い方も素晴らしい。
すべてのセリフが名言のように心に沁み入ります。
連れ去られるガブリエレ
食器棚にしまわれる本
ひとつづつ消えていく灯り
夫の待つベッドにもぐりこむアントニエッタ・・
最後の最後まで雰囲気は十分
たっぷりと余韻を残してくれました。
知られざる名作でしょう。
お気に入りで。
【解説】allcinemaより
限定された状況をきわめて映画的なドラマに作り替える名人、E・スコラの、鮮やかな手並みが鑑賞できる作品である。ムッソリーニ支配下のローマで、アパートの住人全てがファシスト集会に出向いた後に残された主婦と、官憲に追われそこに忍んでいた反ファシストの男の、一日だけの恋を描く。ほとんど密室劇に近い内容だが、アパートの外観の取り入れ方が、ヒッチコックの「裏窓」を思わせて見事である。二大俳優の熱演(特に倦怠期の女を演じるローレンが絶妙)と相まって、官能のスリルを細やかに表現している。