伊豆の踊り子(1963)

 

 
 
10代の頃原作は読んでいますが、その時は面白いとは思いませんでした。
この作品も10代、20代で見たならつまらなかったかも知れません。
・・でも良かったですね、文芸的ですし。
大人にならなければわからない世の中の事情というものを
少しは私も理解したからかも知れません。
 
旅の途中で、旅芸人の娘で踊り子の薫にひと目惚れしてしまった大学生。
彼は旅芸人の一家と行動を共にするようになります。
可愛い顔の薫をそっと目で追う・・
お座敷に上がれば酔っ払いの相手もするのかと思うと気が気ではありません。
 
一方の薫は無邪気で、世間知らずであり、まだ子どもっぽさが残っていました。
カッコよくて頭も育ちもいい書生に、ストレートに憧れの眼差しをぶつけます。
しかしその思いが純真無垢なほどに
薫の心の傷が大きくなると家族は心配します。
 
キラキラと眩しく、輝くほどに可憐な若い踊り子。
しかしやがて、酔客にからまれるようになるのです。
悪い男につかまるかもしれないし、娼婦になるのかも知れない。
ましてや金持ちのエリート学生と踊り子が結ばれることは決してないのです。
 
自分の立場と恋する気持ちを整理できなくなった書生は
踊り子から逃げたのでしょう。
なのに薫は書生を追い、船で去っていく彼に懸命に手を振ります。
それは彼の心に一生の悔恨となって残ってしまいます。
 
本当に好きな人と結ばれるって、意外と誰しも難しいのではないかと思うのです。
立場や責任、年齢やささいな喧嘩・・いろいろな壁が立ちはだかり別れてしまう。
そしてまた、穴のあいたような失恋の虚無感を埋めるために
新しい恋を探すのかも知れないですよね・・
 
岸壁の別れも、ラストの踊りも、だだせつない。
お気に入りです。
 

 
【あらすじ】ウィキペディアより
大学教授の川崎は、教え子である男子学生から或る相談を持ち込まれていた。それは「結婚の仲人になってほしい」という話だったが、学生結婚というものに少々の不安や心配を持つ川崎教授は躊躇を覚える。しかし、その男子学生と将来を誓い合う少女が「ダンサー」であることを知った教授の胸に、かつて旅芸人の踊子に淡い恋心を寄せた青春の思い出が甦るのだった。若い二人を見守りながら、教授の心は遠い過去へ遡っていく。