螢川/泥の河(1978)


 
 
「泥の河」は映画のほうを先に観まして
私にとっての邦画ランキングではかなりの上位。
素晴らしい作品でした。
ぜひ原作も読んでみたく、古本屋で購入。
太宰賞「泥の河」、芥川賞「螢川」受賞作品。
88円でした・・・値段の割にはかなりの価値があったかも。
 
「泥の河」は戦後の傷跡がまだ残る大阪で、
川のふもとで飲食店を経営する両親と暮らす少年と
川に浮かぶ廓舟(くるわぶね)に暮らす姉弟との交友の物語。
あっけなく死んでしまう男。
渡せなかったラムネ。
花柄の洋服。
子どもたちの繊細な心情が心に痛い。
映画同様、ラストは切ないですね。
 
「螢川」は北陸富山の中学生の初恋物語
苦しくもあり、また至福でもある初恋の相手に対するあこがれや想い。
生きることを、とても真剣で純粋で美しく描いていました。
ラストはまるで自分も、光り輝くホタルの大群を観ているような
気持ちになります。
 
どちらの作品も淡々としていますが、
読後に余韻を残す奥行きのある物語だと思います。
 

 
宮本輝/著
幼年期と思春期のふたつの視線で、人の世の哀歓を大阪と富山の二筋の川面に映し、生死を超えた命の輝きを刻む初期の代表作2編。