市子(2023)

杉咲花演じるファム・ファタールもの

大絶賛です、杉咲花ちゃんがとにかくヨカッタ

 

これが是枝裕和なら社会に取り残された「可哀そうな若者」の

ファンタジーにしてしまうのでしょうが(笑)

脚本は上村奈帆、素晴らしいですね

どんな事情があろうとも、無用な同情などバッサリ斬って

毒女はどこまでいっても毒女、女性らしいリアルさがハンパない

私にも、ファム・ファタールな知人がいるんですよ

ひとりは父親から殴られるなどの虐待を受け

ひとりは兄妹と養護施設で育った女性

生い立ちを理由に同情されることを得意としながら(天才といっていい)

他人の苦しみにはひとつも同情しない

本当に市子も、市子に振り回される男性もそのもので

昔を思い出しました(笑)

3年間同棲している恋人、長谷川(若葉竜也)からのプロポーズを受けた翌日

突然姿を消してしまった川辺市子(杉咲花)

テレビでは山中で発見された白骨死体が「川辺月子」という女性と

判明したニュースが流れていました

途方に暮れていた⻑谷川の前に

市子の写真を持って現れた刑事、後藤(宇野祥平

彼は「川辺月子」の死体遺棄事件の捜査をしていて

⻑谷川に「川辺市子」という人間は存在しない

「この女性は誰なのでしょうか」と訪ねます

⻑谷川と後藤刑事は、市子の幼馴染や高校時代の同級生と会い

市子はかって東大阪にある団地に住み、「月子」と名乗り

父親はなく母親はスナックで働いていたことを突きとめます

さらに市子が残したバックの底から、「月子」という名の保険証と

古い家族写真を見つけた⻑谷川は

写真の裏に書かれた住所、母親のなつみ(中村ゆり)を訪ねると

なつみは21歳で市子を出産したものの、DVだった夫が失踪

出生届を出さないままスナックで働くようになり

翌年、資産家の男性と再婚

市子が3歳のとき妹の月子が産まれたことを打ち明けます

しかし月子が難病(筋ジストロフィー)にかかり

バブル崩壊借金に陥った夫と離婚

再びスナックに務めると、なつみに思いを寄せる

市役所の職員でソーシャルワーカーの小泉(渡辺大)が

月子への福祉支援を惜しみなくしてくれたのです

戸籍のない市子が「月子」の名前で学校に通えたのも

彼が書類をうまく捏造してくれたおかげかも知れません

そのうえ働いている母親の代わりに

難病の月子を介護していたのは市子だったんですね(ヤングケアラー)

高校生になり自我が芽生えた市子は、月子の呼吸器を外し殺してしまいます

そのことを知ったなつみは「ありがとう」とだけ呟くのでした

そのころ市子と親しくなったのが同級生の森永悠希

売店で「ガリガリ君」を食べている北に

ガリガリ君」を買った市子が「同じだね」と声かけるのです

(これ、ちゃんと計算している行動だから)

しかもあの関西弁はズルい(笑)

花火大会で花火を見ている人が好きという市子を

花火大会に誘おうと彼女の家に向う北

そこで(役所をクビになった)小泉が市子を襲おうとして

市子が包丁で刺殺してしまう現場に遭遇してしまう(それも計算)

より一層、彼女を救いたいという思いが強くなる北

北は市子とともに小泉の遺体を線路に置き去りにし

警察は小泉の死を自殺とみなしました

でもそこまでは許せる範囲(いや、人殺してるから 笑)

問題はそれを複数の男性に同時に出来てしまうこと

そして都合のいいほうの男性と、どこかに消えてしまうこと

(ちょうどいい男がいない場合は、女友達のときもある)

「運命の女」という名の魑魅魍魎(ちみもうりょう)

ガリガリ君」1本で、殺人の共犯者にまで仕上げる

危険な「わらしべ長者

そうすると捨てられた男たちが、私のところにやってくるわけですよ

「何処に行ったか、あてを知らないか?」と

他に男が出来たから、諦めたほうが身のためよと言っても

魔法が強すぎて解けやしない

ホント、この映画と同じ

高校卒業後、北は失踪した市子の働くケーキショップ探し出し

今度は長谷川が市子を探し、北のアパートにたどり着きますが

すでに市子は姿を消したあとでした

さらに北のもとに市子に会いに来たと

保険証と引き換えに、北見冬子という自殺志願者の女性が現れます

そこに市子から電話があり、北と冬子は車で市子が指示した埠頭に向かいます

 

翌日、海に落ちた車の中から男女の遺体が見つかり

ふたりは心中と思われ、所持品から北と

「川辺月子」の身分証を持った市子であったことが判明します

この日から市子は北見冬子として生き

「川辺月子」死体遺棄事件は未解決のまま終わるのでした

 

 

【解説】映画.COMより

「僕たちは変わらない朝を迎える」「名前」などの戸田彬弘監督が、自身の主宰する劇団チーズtheaterの旗揚げ公演として上演した舞台「川辺市子のために」を、杉咲花を主演に迎えて映画化した人間ドラマ。
川辺市子は3年間一緒に暮らしてきた恋人・長谷川義則からプロポーズを受けるが、その翌日にこつ然と姿を消してしまう。途方に暮れる長谷川の前に、市子を捜しているという刑事・後藤が現れ、彼女について信じがたい話を告げる。市子の行方を追う長谷川は、昔の友人や幼なじみ、高校時代の同級生など彼女と関わりのあった人々から話を聞くうちに、かつて市子が違う名前を名乗っていたことを知る。やがて長谷川は部屋の中で1枚の写真を発見し、その裏に書かれていた住所を訪れるが……。
過酷な境遇に翻弄されて生きてきた市子を杉咲が熱演し、彼女の行方を追う恋人・長谷川を「街の上で」「愛にイナズマ」の若葉竜也が演じる。

2023年製作/126分/G/日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ

 

シティーハンター(2024)

「下品なアラジン」(笑)

令和の新宿に蘇った昭和のスイーパー(始末屋)冴羽リョウ

相棒の妹、槇村香がバディになるまでの「はじまりの物語」

素直に面白かったです

 

漫画原作の実写版として、今までにないクオリティの高さ

ギリギリまで追及したお下劣とお色気とスケベ加減

おバカとシリアスの絶妙なバランス

無駄な作りを全て削ぎ落し、約100分というコンパクト

新宿東口の伝言板に書かれた「XYZ」のメッセージから始まり

TM NETWORKの「Get Wild」のエンディングで終わる見事な演出

(ブレイク前のTM NETWORK函館市民会館ホールに見に行ったなあ 笑)

しかも鈴木亮平がここまでピッタリ冴羽リョウに寄せてくるなんて(笑)

見る側を決して裏切らない実に見事な演技

かなりのガンマニアということで

ガン・アクションシーンもばっちり決まっています

(日本映画の最高峰とも囁かれています)

 

世界32の国と地域でTOP10入り(5/1発表)

SNSではトレンド入りを果たし、これは続編ありきかも

なにより鈴木亮平さんのリョウをこのまま終わらせちゃいけない(笑)

新宿の掲示板で「XYZ 妹を探して下さい」という依頼を受けたリョウは

依頼主が白ニットの「もっこりちゃん」だったので快諾

(リョウは美女のことを「もっこりちゃん」と呼ぶ)

相棒の槇村と共にトー横キッズのくるみを捜索することにします

 

しかし、くるみはリョウをも凌ぐ身体能力の持ち主

槇村は逃げたくるみが落としていった、ふたつの青い薬剤を拾います

その日は槇村の妹、香の誕生日

予約した高級レストランに、時間に遅れて行った槇村は

香に本当の妹でないことを伝えようとします

その時レストランに大型トラックが突っ込んできて

槇村はくるみと同じように、人間離れした身体能力をもった運転手の男に

何度も刺されてしまい、かけつけたリョウに「香を頼む」と息を引き取ります

槇村を殺した犯人は死体で見つかり

香は兄の仇を討つため「XYZ 」の文字を伝言板に残しますが

リョウは香の依頼を受けませんでした

しかも香がひとり夜の新宿を歩いていると

楽しそうに女遊びしているリョウを発見し落胆します

キャバ嬢の女の子が「何かわかったら連絡するね」と話していたことから

こう見えてもリョウは槇村の死について聞き込みをしてるんですね

警視庁の野上冴子は、槇村がリョウに託した青い薬剤を

トー横などで行方不明になった若者が突如狂暴化して現れ

事件を起こしていることと関係していることを疑います

リョウの(肩書は冴羽商事取締役社長)事務所に押しかけた香

そこには資料という名の大量のキャバ嬢やソープ嬢の名刺と、AV

さらに兄の愛用していたコルトローマン・MkⅢを見つけます

香のあまりのしつこさに、リョウは裏社会の真実を見せようと

阿久津組の経営する会員制の裏カジノに連れて行きます

阿久津組長によると、南米を拠点にもつ謎の組織「ユニオン・テオーペ」による

ネットカフェ難民やトー横キッズ、ホームレスの若者を狙った

人間を超人化する実験が行なわれていて

リョウの探す「くるみ」はその実験で唯一正気を失わず生き延びた人物

「ユニオン・テオーペ」の戦争用の人間を人間兵器にするための新薬

「エンジェル・ダスト」の改良のためくるみは狙われていたのです

が、トー横に向かった香にいともあっさり「くるみ」は見つかり

くるみに姉などいないこと

友人のケントが失踪し、彼を探しているところを謎の組織に捕まり

注射を打たれたことを打ち明けます

さらにくるみの正体は「ミルク」という有名コスプレイヤー

化粧品ブランド、ローレのコスプレイベントに招かれていました

ここでコスプレのアイテムとして

香のトレードマークである100tハンマーが渡されるのですね(笑)

しかし会場には「ユニオン・テオーペ」の刺客

サソリ(白ニットもっこりちゃん)とヒグマがリョウを殺し

くるみを奪回するため待ち受けていました

シティーハンターは決して悪を許さない

コスプレ会場で、ローアングルを狙うカメラ小僧も許さない(笑)

そこに現れたサソリとリョウとの戦いに会場は大盛り上がり

さらに天井からはヒグマの麻酔銃がリョウとくるみを狙います

リョウは股間の「お馬ちゃん」人形で注射をかわし(笑)

ヒグマの手を撃ち抜くと、ヒグマが撃ち損じた麻酔弾でサソリを捕獲

サソリは警視庁に身柄を引き渡されますが、護送中

首に仕込まれたマイクロ爆弾により爆死してしまいます

その間、ローレの秘書である伊東がくるみを預かり、彼女を連れ去ってしまいます

伊藤は「ユニオン・テオーペ」の一味で

ローレは「ユニオン・テオーペ」から資金提供を受けているフロント企業でした

さらにローレ社の地下には「エンジェル・ダスト」を製造する施設があり

「ユニオン・テオーペ」の戦闘員たちがリョウを待ち構えていました

「ウーバーイーツで~す♪」と誤魔化したものの(誤魔化せるか! 笑)

銃弾を浴びることになるリョウと香

「しかたない プランBだ」

「もとからAなんてないでしょ!」

プランCに切り替える

さらにエンジェル・ダスト漬けによりさらに狂暴になり

全身を装甲で覆ったヒグマがリョウをしにやってきます

リョウはヒグマのマスクを剥ぐと、口に手榴弾を押し込み爆破させます

一方伊藤を追っていた香は防弾ガラス越しのヘリポート

「ユニオン・テオーペ」の助けヘリを待つ伊藤から

香の実の父親が「ユニオン・テオーペ」の構成員だったこと

子どもが出来たからと「ユニオン・テオーペ」を脱退しようとした父親を

エンジェル・ダスト漬けにして殺し屋に仕立て

それを殺したのが香の育ての父で刑事だった槇村だと教えられます

その時リョウの357マグナム弾が何発も打ち込まれ、防弾ガラスが砕け散ります

は兄のを伊藤に向けますが、撃つことはできませんでした

しかし伊藤を見捨てた「ユニオン・テオーペ」のヘリから信号が送られ

伊藤は爆死したのでした

翌朝リョウが目を覚ますと、事務所を片づけている香の姿

ゴミ袋に入れられたお宝のアダルトDVDを救おうとするリョウを

香はハンマーを持ち追いかけ

 

スマホにはくるみから、コスプレイヤー「ミルク」として

新たな仕事に就いたという知らせが入っていました

 

 

【解説】Netflixより

射撃スキルは抜群、でも美女にはめっぽう弱い超一流のスイーパー、冴羽獠。亡き相棒の妹に懇願され、しかたなくふたりでその死をめぐる真実を追い始める。

出演:鈴木亮平、森田望智、安藤政信華村あすか水崎綾女片山萌美

阿見201杉本哲太迫田孝也木村文乃橋爪功

2024 | 年齢制限:16+ | 1時間 44分 | アクション

 

 

正欲(2023)

 

「自分がこんな人間だとバレる前に親が死んでくれて良かった
誰にもバレないように無事に死ぬために生きてる
夜寝る時は、明日自分以外の誰かになっていることを願う」

原作は朝井リョウの同名小説

水フェチの男女

異性恐怖症の女子学生

登校拒否の児童とその両親

小児性愛者の小学校教諭(このテーマを同じ土俵にあげたのは間違い)

といった「多様性」のさらに外側にいる人たちの生きざまと

ネット友だちとのリアル化の危険性

私もマイノリティな人間ですが(笑)

それぞれの人間が違って当たり前、夫婦でも親子でも

100%分かり合うことは不可能だと思っているので(笑)

いわんとしていることは理解できましたが

共感はできませんでしたね

ネット友だちとも、オフ会やプライベートでお会いすることもありますが

映画ファンだからといって、好きな映画のジャンルも感想も様々

だからといって思ったのとは違った、裏切られたとはなりません

共通点がないからこそ面白い、新しい発見があることのほうが多い

 

彼らが社会に馴染めない、一部の人間にしか心を開けないのは

マイノリティのせいでなく

コミュニケーション障害といったほうが正解でしょう

 

寺井啓喜(ひろき)(稲垣吾郎

横浜地方検察庁の検事

10歳になる息子の泰希(たいき)不登校になり

教育方針やYouTubeでの動画発信を巡って

妻の由美(山田真歩)と意見があわない

 

息子がおなじ引き籠りの友だちと立ち上げた動画チャンネルが

わいせつ動画サイトと見なされアカウントが停止されたのをきっかけに

(コメントのリクエストに答え、内容が徐々に過激になっていった)

寺井と対立した由美は、泰希を連れ実家に帰ってしまう

 

俗にいう「一般的」「常識的」な考えの持ち主

残業で夜遅く帰宅してレンチンご飯を食べる光景がリアルすぎ(笑)



桐生夏月(きりゅう なつき)(新垣結衣

広島県福山市イオンモール内の寝具コーナーに勤める販売員

人との会話や付き合いが苦手、実家暮らし

水に性的な快感を覚える

中学の同級生だった佐々木にストーカー的関心を持っている

 

佐々木佳道(よしみち)(磯村勇斗

水に異常な執着心をもっている

横浜の食品メーカーに勤めていたが、両親の交通事故死をきっかけに実家に戻る

同級生の結婚式で夏月と再会

 

「普通」に見えるよう、夏月に偽装結婚を持ち掛け

横浜で同居生活を始めると、お互いの暮らしが心地いいものになっていく

 

神戸八重子(かんべ やえこ) (東野絢香

横浜の大学に通う大学生

男性が近くに寄っただけでパニックや過呼吸になってしまう異性恐怖症

(兄からの近親相姦によるものと思わせるセリフがある)

ダンスサークル「スペード」のダンサー

大也にだけ恐怖を感じないため、大也を理解するため

学祭実行委員でダイバーシティフェス」(Diversity=多様性)の開催

「スペード」の公演を提案する

しかしその直後大也は大学を去り行方不明になってしまう

 

この子、演技巧いなあ(笑)

 

高見優坂東希

スペードの代表ダイバーシティ」に理解を示し協力してくれる

大地の気難しさに頭を悩ませ

大地を救えるのは八重子しかいないと思っている

 

諸橋大也(もろはし だいや) (佐藤寛太

八重子と同じ学部に通う「スペード」の実力派ダンサー

大学祭のミスコンで準ミスターに選ばれるイケメン

 

佐々木と夏月は、ネットの観覧やコメントから

大也も水フェチに違いないとチャットで接触する

 

矢田部陽平(岩瀬亮)

小学校の非常勤講師

ネット上で同じ水フェチをきっかけに知り合い

佐々木と大也の3人で噴水公園で会い、その場にいた子どもたちと遊ぶが

矢田部が児童売春で逮捕され、佐々木と大也も容疑者として逮捕されてしまう

 

結果、性的マイノリティに苦しむ人間と

小児性愛者の犯罪者をごっちゃにしてしまったため

(もっと傷つき苦しむのは被害者の少年のほう)

この作品を肯定できないものにしてしまった

 

越川宇野祥平

検察庁に勤める事務官、寺井の相棒
蛇口を(水を出しっぱなしにするため)んだという藤原という男の記事を読み

「藤原は水に興奮し、盗むことで性的興奮を得たのではないか」と推測

(大也のニックネームはこの犯行に共感したfuziwara)

 

セリフのない短いシーンでも、圧倒的な存在感を見せる凄さ

作中で一番変態力を感じた(褒めています 笑)

 

右近一将(鈴木康介

不登校の児童を支援するNPO団体「ライオンキッズ」のスタッフ

ボランティア活動の一環として、動画配信による子どもたちと

社会との繋がりを増やす活動もしていて

泰希の動画に字幕をつけたり編集したりYouTubeに投稿する協力

由美は夫より右近を頼りにしている

 

那須沙保里(徳永えり

夏月と同じイオンモールに勤める妊婦の副店長

夏月を気にかけ、何かと(結婚や彼氏や子どもについてばかり)話しかけるが

夏月に迷惑がられ対立してしまう

 

捜査の聞き取りのため、寺井と面会した夏月は

拘束された夫へメッセージを頼みます

ただひとこと「いなくならないから」と

それにしても、大人が噴水公園で水遊びの動画撮ったり

(あれくいらいの子どもたちなら、親が近くで見守っているはず)

犯罪者とネットやチャットでやりとりしただけで

証拠もなく逮捕されるものなのかな(笑)

八重子のその後もわからないし(笑)

原作は未読なのでわかりませんが

映画という限られた時間の中で何人もの主人公を描くのには

相当な編集力が必要なのだと思いました



【解説】映画.COMより

第34回柴田錬三郎賞を受賞した朝井リョウの同名ベストセラー小説を、稲垣吾郎新垣結衣の共演で映画化。「あゝ、荒野」の監督・岸善幸と脚本家・港岳彦が再タッグを組み、家庭環境、性的指向、容姿などさまざまな“選べない”背景を持つ人々の人生が、ある事件をきっかけに交差する姿を描く。
横浜に暮らす検事の寺井啓喜は、不登校になった息子の教育方針をめぐり妻と衝突を繰り返している。広島のショッピングモールで契約社員として働きながら実家で代わり映えのない日々を過ごす桐生夏月は、中学の時に転校していった佐々木佳道が地元に戻ってきたことを知る。大学のダンスサークルに所属する諸橋大也は準ミスターに選ばれるほどの容姿だが、心を誰にも開かずにいる。学園祭実行委員としてダイバーシティフェスを企画した神戸八重子は、大也のダンスサークルに出演を依頼する。
啓喜を稲垣、夏月を新垣が演じ、佳道役で磯村勇斗、大也役で佐藤寛太、八重子役で東野絢香が共演。第36回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、最優秀監督賞および観客賞を受賞した。

2023年製作/134分/G/日本
配給:ビターズ・エンド

 

バービー(2023)

マーゴット・ロビーが言っても説得力ゼロ」(笑)

(Margot Robbie is not the actress to get this point across.)

原題は「Barbie」

「バービー」の世界観を忠実に再現したと評価が高く

ワーナー・ブラザースの長い歴史の中で最も稼いだということですが

予想外にかなりマニアックな映画でした(笑)

冒頭から「2001年宇宙の旅」のパロディ

(母性を否定するブラックにはちょっと引く 笑)

他にも「シャイニング」に関するセリフがあったり

時計じかけのオレンジ」の白い廊下のシーンなど

キューブリックへのオマージュが散りばめられているし

ダンスシーンはジーン・ケリーのようでもあるし

ジョン・トラボルタでフィーバーもしている(笑)

終盤にかけての展開は「ベルリン天使の詩

バス停で登場する老女は現在も活躍する

(「人の美しさはその瞬間の見かけだけじゃない」のポリシーで有名)

カリスマ衣装デザイナーのアン・ロス

いったい誰サービス?(笑)

しかもバービーランドは、マテル社の生産中止モデルたちによる

「女家長(母系)」(女性が支配的・権威的な地位を占める社会制度 )なのですね

これを見て、イマドキの子どもやZ世代が理解できるのでしょうか

グレタ・ガーウィグは意地悪だな(笑)

バービーランドでいつもの完璧な朝を迎える定番バービー(マーゴット・ロビー

ここでは大統領も弁護士も医者も作家もノーベル賞学者もみんなバービー

バービーが女性の社会的地位を確率させたのです

男性はみんなケンで、バービーと曖昧な関係のボーイフレンド

白人のケン(ライアン・ゴズリング)とアジア系のケン(シム・リウ)はライバル

ケンはバービーと関係を深めようとしていますが(でも下はツルペタ)

バービーはケンを冷たくあしらっています

いつものパーティで、ふと「死」について考えてしまったバービー

すると翌朝からシャワーの水は冷たく、家の2階から落下

足のかかとが地面についてしまいます

バービーはほかのバービーたちからバービーランドのはずれに住む

変てこバービーケイト・マッキノンら原因がわかるかもと教えられます

変てこによると、バービーが発症した偏平足やセルライトや口臭は

人間界とバービーランドの境目に亀裂が入ったためで

亀裂を修復するためには人間界に行って

持ち主の悩みを解消するしかないと教えられます

変てこは、片手にピンクのハイヒール(嘘のバービーランド)

もう一方に「ビルケンシュトック」のサンダル(人間界の真実)を持ち

バービーに選ばせます、でもサンダル以外選択肢はない(笑)

人間界に旅立つバービーの車に忍び込んだケンとともに

ふたりはマテル社のあるカルフォルニアに向かうのでした

しかし到着したベニスビーチで、バービーは男たちの好奇の目にさらされ

万引きしたり、体を触ってきた男性を殴ったり逮捕と保釈を繰り返します

そこからバービーとケンはふたてに分かれ

バービーは人形の持ち主と思われる少女を探すことにし

ケンは男性と馬が優位の人間界に感激し、人間界で働こうとします

が学歴も資格もないため採用されず、すぐに諦め(潔い 笑)

図書館で「家父長制」(男性が支配的特権的な地位を占める社会制度)の

本を何冊も見つけ、ひとりバービーランドに持ち帰ります

バービーは自分のもつ記憶から

サーシャアリアナ・グリーンブラット という少女を探しあてますが

サーシャから「セクシーだけが売りで頭は空っぽ」

「女性の社会進出を50年遅らせた」 挙句の果て「ファシスト」呼ばわりされ

その場を立ち去ります

そこにバービーを探すマテル社の社員が現われ、会議室に連れていかれると

重役に男性しかいないことにショックを受けます

CEO(ウィル・フェレル)が上手く取り繕い

バービーを(身動きできないよう)梱包しようとしますが

共和党にしか見えない、ブッシュ風なウィル・フェレルのさすが 笑)

逃げたバービーを助ける謎の老女

アメリカ映画の「トイレ行きたい」で逃げるマンネリ 笑)

さらにバービーがマテル社から出てきたところを

サーシャの母親グロリアアメリカ・フェレーラ)が救います

グロリアはマテル社のデザイナーで、仕事のプレッシャーのため

「死を意識したバービー」や「鬱のバービー」を描いていたのです

しかもサーシャが幼いころ遊んでいたバービーで、自らが遊んでいたため

グロリアの意識がバービーに移り、バービーに変化をもたらせたのです

グロリアとサーシャはバービーとバービーランドに向かうことにし

それを追いかけるマテル社の重役たち

バービーはいかにバービーランドが女性の地位を確立させた

素晴らしい場所かを解説しますが

着いてみたら、かってのバービーランドはそこにはなく

ケンはバービーのいない間に、バービーランドを「男性優位」「男中心社会」の

「ケンダム」に変えてしまったのです

ケンに洗脳されたバービーたちは、嬉々としてケンたちの言いなり

しかもケンはバービーの家を乗っ取り、憲法まで改憲しようとしていました

グロリアとサーシャが人間界に帰ろうとすると

唯一ケンに洗脳されていなかったアランマイケル・セラ)が同行します

途中で人間界とバービーランドを遮断する壁を作る工事現場に遭遇

作業員を倒したアランと(意外に強い 笑)グロリアとサーシャは

(国境を遮る壁を作ることは許さないと)バービーランドに引き返すことにします

バービーを助けた変てこに合流したグロリアが

人間界の歴史でいかに女性が妨げられ我慢してきたかを熱弁すると

作家バービーが洗脳から覚めことにより

スピーチ(言論)こそが洗脳を解くカギだということがわかります

(これもアメリカらしいなあ)

バービーは男の心理をくすぐる「知らない」「バカなふり」作戦でケンたちの気を惹き

大統領バービー、物理学者バービー、バービーたちを次々と拉致すると

グロリアの言葉で洗脳を解いていきます

〆はロマンチックな夜を演出し、ケンにラブソングを歌わせること

最高潮のムードの中、他のケンからの誘いがあったふりをして

ケンとケンを戦わせることにするのです、決戦は憲法改憲の選挙の日

バービーたちは「ケンダム」を乗っ取り、ケンの夢は儚く消えたのでした

バービーの添え物でしかなかったと嘆くケンに

「ケンはケン」「自分でいることが幸せ」 が大切だと伝えるバービー

そうして人間界に行くことを決意するしたバービーの前に再び現れた謎の老女

彼女は「バービー」の生みの親は娘の「バーバラ」で娘の愛称だったこと

脱税と乳がんで、リーダーシップを失ってしまったことを打ち明けます

彼女こそバービーを開発したルース・ハンドラー(リー・パールマン) でした

バービーが「誰の許可もなく 人間になっていいの?」と訪ねると

「誰の許可もいらない  自分のことは自分で決めれる」と去っていきました

そうして車の中、グロリアの夫が「Sí Se Puede!(やればできる)」と励ますと

「それは政治的な声明よ」とグロリア

「それは盗用」と返すサーシャ

 

(「シ、セ・プエデ!」 とは労働組合公民権団体で使われているスローガンで

 オバマ元大統領が使った「Yes, we can!」は英語版)

スーツ姿でさっそうとビルの中に入り、受付に向かったバービーは

「バーバラ・ハンドラー」と名乗り、仕事の初面接かと思いきや

 

まさかの「婦人科受診」

決して「ツルペタ」がどうなったか調べるためでなく(笑)

女性への(乳がん、子宮がんなど)婦人科受診を勧めているんですね

こういう隠喩を散りばめた複雑な映画も嫌いではないですが

もう少し分かりやすいほうが良かったと思いますね

 

特にサーシャのキャラが明確でない事

リアルワールド側の問題がひとつも解決していないことが

私的にはつまらなく感じてしまいました

 

 

【解説】映画.COMより

世界中で愛され続けるアメリカのファッションドール「バービー」を、マーゴット・ロビーライアン・ゴズリングの共演で実写映画化。さまざまなバービーたちが暮らす完璧な世界「バービーランド」から人間の世界にやってきたひとりのバービーが、世界の真実に直面しながらも大切なことは何かを見つけていく姿を描く。
ピンクに彩られた夢のような世界「バービーランド」。そこに暮らす住民は、皆が「バービー」であり、皆が「ケン」と呼ばれている。そんなバービーランドで、オシャレ好きなバービーは、ピュアなボーイフレンドのケンとともに、完璧でハッピーな毎日を過ごしていた。ところがある日、彼女の身体に異変が起こる。困った彼女は世界の秘密を知る変わり者のバービーに導かれ、ケンとともに人間の世界へと旅に出る。しかしロサンゼルスにたどり着いたバービーとケンは人間たちから好奇の目を向けられ、思わぬトラブルに見舞われてしまう。
監督は「レディ・バード」「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」のグレタ・ガーウィグ。脚本はガーウィグと「マリッジ・ストーリー」のノア・バームバック。世界各国で大ヒットを記録し、全米興行収入は6.3億万ドルを超えて同国歴代11位、世界興収は14.4億円を超えてワーナー・ブラザース映画史上最高のヒット作となった。第96回アカデミー賞では作品賞、助演男優賞助演女優賞、歌曲賞(2曲)など7部門8ノミネートを獲得。ビリー・アイリッシュ&フィニアス・オコネルによる「What Was I Made For?」が歌曲賞を受賞した。

2023年製作/114分/G/アメリ
原題:Barbie
配給:ワーナー・ブラザース映画

 

白い花びら(1999)

「ふたりは子供のように幸せでした

原題はJuha」(ユハ=男の名前)

原作はフィンランド国民的作家ユハニ・アホによる古典小説

アキ・カウリスマキによるサイレント映画で4度目の映画化

アキラらしい妙にコメディと、悲惨なラスト

セリフ無しでも全く問題ない展開は、相変わらずさすがの手腕ですが

後味の悪さは一番かも(笑)

貧しくとも幸せな生活を送っていたキャベツ農家の夫婦ところに

車の故障で突然やって来た伊達男シュメイッカ(アンドレ・ウィルムス)

お人好しの夫ユハ(サカリ・クオウスマネン)はシュメイッカを家に泊め

彼の高級車(コンバーチブル)を修理することにします

ユハは真面目で優しい夫だけれど、お酒を飲みすぎて酔っぱらうと

妻のマルヤ(カティ・オウティネン)をないがしろにしてしまうのですね

そんなこと一見でお見通しのシュメイッカは、マルヤを甘い言葉で口説き

車が直ると「必ず迎えに来る」とマルヤに約束し帰って行きました

それからというもの、マルヤは化粧をしファッションに目ざめます

家事は疎かになり、ユハは不機嫌

しばらくして、夫婦の家に戻ってきた来たシュメイッカ

ふたりをダンスホールに誘い、そこでもユハは酔いつぶれてしまい

マルヤは寝ているユハを残し、シュメイッカと逃げていきます

憧れの都会に着き、シュメイッカに案内されたのは売春の斡旋所

初めてシュメイッカ騙されたことに気付くマルヤ

しかも彼の子を妊娠していました

マルヤがシュメイッカに連れてこられたのは白海カレリア

(大昔からロシア(ルーシ)とスウェーデンが争っている場所)

なのでユハはマルヤがシュメイッカに誘拐されたと信じていて

マルヤを取り戻すため都会に行く計画を立てます

(ユハが乗るバスを追いかけるワンコに涙)

マルヤを見つけたユハは、彼女が接客婦として働かされているうえ

赤子までいることに激高

ユハはマルヤと赤子を田舎に向かうバスに乗せると

シュメイッカを殺しに行きます

そして自らも銃で撃たれた傷で、ゴミ捨て場でゴミ同様に息絶えたのでした

それでもアキはこの物語が不幸なだけでなく

妻が再びささやかな幸せを知り、やさしさを取り戻ってくれることへの

希望を託したのかも知れません

 

 

【解説】映画.COMより

フィンランドの小さな村でキャベツを作る幸せな夫婦、ユハとマルヤ。ある日、村にシェメイッカと名乗る男が車で通 りかかる。車が故障したという男は畑にいたユハに助けを求め、ユハは快く車の修理を引き受ける。しかしシェメイッカは隙を見てはマルヤを誘惑、マルヤも彼を強く意識するようになる。再びシェメイッカが2人を訪れ、マルヤはシェメイッカと駆け落ちするが、2人が結ばれたあとシェメイッカの態度は豹変する。

1998年製作/78分/フィンランド
原題:Juha
配給:ユーロスペース

 

籠の中の乙女(2009)

原題は「Κυνόδοντας(犬歯=牙)

常に「性」と「暴力」というのが

ヨルゴス・ランティモスの作品テーマだと思うのですが

これは「哀れなるものたち」より、さらに”哀れなるものたち”の物語でした(笑)

プロパガンダ」を「家庭」という小さな世界に置き換えた傑作

その方法とは、子どもたちを「犬」のようにしつけること

(そういえばプーチンも犬好きで有名)

ただ犬が飼い主に似ることを忘れている

愛情を持って正しく育てれば誠実に

暴力をもって育てれば暴力的に、あるいは無気力になる可能性だってあるのです

「子どもたちを外の世界の汚らわしい影響から守るため」という名目で

3人の兄妹3人とも成人していて名前はない)

家の中に閉じ込めて教育してきた両親

テレビで見るのはホームビデオ

ラジオから流れるのは母親自作のカセットテープ

「電話とは塩入れのこと」「海とは革張りのソファーのこと」

「高速道路とは強い風のこと」 と延々とデタラメを聞かされています

さらに外の世界は恐ろしいと洗脳させるため

彼らにはもうひとり兄がいて、兄は家を出たせいで猫に食べられたと教えられます

猫は最も危険な動物で、外には車でしか出られないと(サファリパークか 笑)

さらに子どもが外出できるようになるのは、左右の犬歯が抜けたとき

犬歯が生え変わった場合に限り、車も運転できるようになるといいます

(もちろん永久歯だから生え変わることはない)

それでも父親は、長男の性欲を解消させるため

クリスティーナという、父親の経営する工場の警備員の女性に

お金を渡し長男の相手をするよう連れてきます

長女と次女はクリスティーナに興味深々

長男とのセックスに満足できなかったクリスティーナは

世間知らずの姉妹をからかうように刺激を与え

特に好奇心旺盛な長女に性的な関係を求め、代わりに映画のビデオを与えます

映画を見て今まで知らなかった外の世界に憧れるようになる長女

ビデオの存在を知った父親は長女を折檻するとクリスティーナの家に行き

彼女をビデオデッキで死ぬほど殴りクビにします

だけど長女の好奇心は抑えられない

庭に迷い込んできた「恐ろしい」子猫を無残に殺してしまった長男に

(家族は時々犬になったつもりで猫を追いはらう練習をしている)

父親の話とは違い猫(外の世界)が怖くないことを知る

それでもまだ「犬歯が抜けたら外に出られる」ことを信じている長女は

自らハンマーで犬歯を折ると、父親の車のトランクに忍び込みます

その夜家族はワンワンと犬のふりをして長女を探しますが見つからない

翌朝父親は工場に向かうため、車を走らせたのでした

母親(どう見ても子どもを産める年齢ではない)が

「次は双子が欲しい」と言ったり

父親が「今度、お母さんは双子と犬を産みます」 と宣言するところをみると

この兄妹も実の子ではなく、どこからか連れ去られて来た子(拉致)

というニュアンスが感じられますし

ここまで性的な描写

(かってのギリシアでの軍事独裁政権下において)外的な娯楽が

なにひとつなくなった時

人間に残るのは「性」と「暴力」という風にも受け止められます

人間に最も必要なのは、自分で良し悪しを判断する能力であって

情報操作されることではない

それは民主主義の先進国においても「旨すぎる話」には

騙されてはいけないという教訓でしょうか

 

 

【解説】allcinema より

第62回カンヌ国際映画祭“ある視点部門”でグランプリを獲得し、第83回アカデミー賞ではみごと外国語映画賞にノミネートされるなど世界中でセンセーションを巻き起こしたギリシャ発の不条理家族ドラマ。子どもたちを汚れや危険から守るべく歪んだ妄執に取り憑かれた父親によって、子どもたちが外界から完全に隔離された特殊な環境下で育てられている奇妙な家族の肖像とその崩壊を、過激な性描写を織り交ぜつつシュールなタッチで綴る。監督は本作で一躍世界的に注目を集めたギリシャの新鋭ヨルゴス・ランティモス
 ギリシャ郊外でプール付きの豪邸に暮らすとある裕福な家庭。3人の子どもたちは両親に大切に育てられ、生まれてから一度も外の世界に出たことがなかった。それは、世の中の汚らわしきものの影響から守るため。両親は外の世界がいかに恐ろしいかを様々な形で信じ込ませ、従順な子どもたちも清潔で安全な家の中で不満を感じることなくすくすくと成長していった。やがて年頃となった長男の性欲を処理するため、父親は金で雇った女性をあてがうことに。しかし外の世界からやって来た女性の出現に長女の好奇心が刺激され、両親が懸命に守ってきた無菌環境にはいつしか小さな綻びが生じはじめる。

 

ラ・カリファ(1970)

原題は「La califfa」(カリファ夫人)

エンニオ・モリコーネ特選上映 Morricone Special Screening×2」2本目

なぜ今まで日本未公開だったのか

しかもロミー人気が絶大なドイツでさえ

あまり知られていない映画ということ

ロミーのフィルモ・グラフィーのなかでも

最も大胆にヌードを披露していて

おそらくロミーありきの企画だったと思うのですが

ひとことでいえば駄作でした(笑)

テーマはゼネストか、恋愛か、反共産党か、

経営者間の軋轢なのか、はたまた息子の成長を願うものなのか

ひとつひとつのエピソードが大雑把でつぎはぎ

盛り上がりそうな場面で唐突にシーンが切り替わり

当然モリコーネの音楽もぶつ切り

余韻に浸れないったらありゃしない

(ワンコとスズメは可哀想だったけど)

モリコーネの曲はこの映画とは違ったところで

音楽ファンを魅了し有名になりますが

ロミーは監督の采配について

「映画が何なのかわかっていなかった!」と吐き捨て

自身の伝記本の中でも「最も嫌いな作品」と延べているそうです

ただロミーの美しさは本作でも際立っていました

お宝映像と言っていいと思います


1970年代初頭のイタリアのエミリア

ストライキによる暴動で、カリファと呼ばれる労働者階級の男が

機動隊と衝突し死んでしまいます

それを見ていた妻のアイリーン(ロミー・シュナイダー)は

夫の遺志とカリファという名を継ぎ、ストライキを率いるリーダーとなり

配送トラックを占領、女性たちを煽り電化製品を川に投げ捨てます

(もったいないと思うのは、私の心が汚れているからかしら)

その頃 セメント工場の経営者で実業家のドベルド(ウーゴ・トニャッツイ)は

ひとり息子が海外に放浪の旅をしたいと言い出し

妻のクレメンティーナを哀しませるのではないかと悩みます

カリファは別の倒産した工場から解雇された労働者たちと連帯し

(経営者はドベルドらに救いを求めたが報われず首吊り自殺してしまう)

ドベルドのセメント工場工場を占拠します

ドベルドはストライキを終わらせるため、労働者たちと話し合いに行くことにします

ドベルドはいわゆる「成り上がり」で、かっては自分も貧しい労働者でした

彼らと理解しあえると信じていたのです

そこでどう、ドベルドとカリファが惹かれ合ったのかはわかりませんが(笑)

ドベルドは突然カリファの部屋(社宅のようなもの)を訪ね

ベッドを共にしていた男が出て行くと、カリファを抱くのでした

そうしてふたりは情事を繰り返すようになり

(カリファがドベルドの父親と友人なのはなぜ? 笑)

ドベルドは労働者たちの共同経営、利益分配といった組合設立の要求を認め

(利益は見込めなくなるものの)倒産した工場を再開し労働者たちを再雇用します

しかしそのことは、ほかの工場の経営者たちから強い反感を受けるだけでなく

同じ労働者階級の中にも容認できないという極右の市民も多くいて

対立は深まるばかり

偉いのは奥さんですね(笑)

夫の不倫を知っても、彼の生きる気力を

やるべき道の方向を示してくれたと、カリファを責めることはありませんでした

息子の海外行きも許します

その間、ドベルド以外の経営者たちは重大な決断をします

カリファと会った帰り道、ドベルドは何者かに誘拐され

遺体は海辺に捨てられたのでした

あれもこれも詰め込もうとせず、単純に労働者と経営側の分断と

そこで起こった悲愛モノにしたほうが良かったんでしょうね

ロミーの言う通り、確かに監督は映画が何なのかわかっていなかった(笑)



【解説】映画.COMより

「ルートヴィヒ」「夕なぎ」などに出演しヨーロッパ映画界で人気を誇った女優ロミー・シュナイダーが、許されざる恋に落ちた女性を体当たりで演じた1970年製作の社会派メロドラマ。亡き夫の遺志を継いでストライキのリーダーとなった女性が、かつての仲間であった工場長の男性と対立しながらも次第にひかれ合っていく姿を、巨匠エンニオ・モリコーネの甘美なメロディに乗せて描き出す。「Mr.レディMr.マダム」シリーズのウーゴ・トニャッツィが工場長を演じ、イタリアの脚本家アルベルト・ベビラクアが長編初メガホンをとった。モリコーネによるテーマ曲は数ある彼の作品の中でも特に人気が高いことで知られるが、映画自体は日本では長らく未公開のままだった。2024年4月、特集企画「エンニオ・モリコーネ特選上映 Morricone Special Screening×2」にて日本初公開。

1970年製作/91分/イタリア・フランス合作
原題:La califfa
配給:キングレコード