ジャックは一体何をした? (2017)

原題は「What did Jack do?」(ジャックは何をした?)

わずか17分のショートー・ムービーですが

デビッド・リンチ健在

おかえり!デビッド・リンチ!!という感じ(笑)

 

駅で捜査官のリンチ(本人)が

オヤジの口(これがまたチープな合成)で人間の言葉を喋る

猿のジャックを尋問するだけの

50年代さながらのフィルム・ノワール

捜査官はジャックの殺人容疑を自白させようとしていますが

ジャックはあくまでしらを切る

しかし話している途中で余罪がいっぱい(笑)

 

昔は牧場に住んでいた何でも屋のジャック

ワニをナイフで殺したことがある

妻に尻に敷かれてたが、妻が殺されたおかげで解放された

その時雌鳥トゥータタボンに恋をした

トゥータタボンを巡ってマックス殺しの容疑をかけられるが

娼婦で友人のオラウータンサリーが証人

ついには言い訳も尽き、歌って現実逃避

人間と動物言語で繋がったら、実際こうなんだろうな

全く意思が通じない(笑)

 

私も愛猫の寅ちゃんと話が出来たら

「オマエ、台所のちゅーるを盗んだな」

「知らないぜ、俺じゃないぜ、たぶんリリーじゃないか

 アイツはまぐろ味に目がないからな」

「なくなったのはチキン味だ」

「・・・」

「・・・」

「にゃあ♡にゃあ♡」

みたいな(笑)

そこにトゥータタボンが現れ、ジャックは叫び

トゥータタボンを狂ったように追いかけ

捜査官は銃を取り出す

 

ラストの解釈は見る人に委ねられているんでしょうね

単純に愛するトゥータタボンを見つけて追いかけた

マックスと浮気したトゥータタボンが許せず復讐しようとした

マックスを殺した犯人が本当はトゥータタボンで

捜査官から逃がそうとした

私は③だと思います

その証拠に、マックスは駅でひとりで汽車を待っていたはずなのに

運ばれてきたコーヒーは2

(一緒に逃げようとしている)トゥータタボンが席を外している間

捜査官に見つかってしまったのです

 

そこに何も知らないトゥータタボンが戻って来て

ジャックは叫び彼女に危険を知らせたわけです

17分の尺もこれでしっくりくる

ジャックは背中から撃たれ、駆け寄るトゥータタボン

ふたりの周りには群衆が集まり、やがて激しい雨が降り出すのでした

(ちなみにこんなラストシーンはありません 笑)

 

リンチは深く考えると、逆に訳わかんなくなるので(笑)

見たまんまが正解

人間が動物と意思疎通できると思っているのは

人間の勝手な勘違い

彼らは彼らの習性から抜け出すことはできないのです



 

【解説】映画.COM

鬼才デビッド・リンチが手がけた17分の短編。リンチ本人とサルのジャックが登場するフィルムノワールで、列車のコンパートメントにいるサルのジャックは、ニワトリを殺害した罪でリンチ演じる刑事から尋問を受けているが、会話の内容はほとんどかみ合っておらず……。2016年にカルティエ財団のコミッションによって製作された作品で、18年にはニューヨークで行われたリンチ主催のイベント「Festival of Disruption」でも上映された。Netflix2020120日から配信。

 

舞妓さんちのまかないさん “The Makanai: Cooking for the Maiko House” (2023)

週刊少年サンデーに連載中の270万部超えのベストセラーコミック

小山愛子舞妓さんちのまかないさん」を

9話のNetflixシリーズとして是枝裕和が総合演出・監督・脚本

今一番Netflixの推しが凄いですよね(笑)

食事で癒される系の作品が好きな人におススメ

本作でもフードスタイリスト飯島奈美がいい仕事をしています(笑)

青森から京都の屋形「市」に「仕込みさん」(舞妓候補)としてやってきた

16歳のキヨとすみれ

すみれ(すーちゃん)が 「百年にひとりの逸材」と言われるのに対し

キヨはどのお稽古もうまくできない

早々に「お止め」(クビ)になり青森に返されそうになった時

台所のおばちゃんが腰を痛めて仕事ができなくな

代わりに作った親子丼が大好評

「まかないさん」として残ることになります

そこからすみれが「百はな」として

舞妓デビューするまでがおおよその筋

 

それでなくても女の世界は厳しいのに

ましてや芸奴ともなれば苛めに足のひっぱりあい

相当な根性がないとやっていけないと思うのですが(笑)

是枝(これえだ)の「誰かを悪者として描くことをしない」というスタンス

ここでも一緒

しかも是枝って、こんなに女優撮るのうまかった?というくらい(笑)

キヨの森七菜は愛らしいし、すみれ役の出口夏希は美少女

「お母さん」の常盤貴子や、完熟超えの松坂慶子でさえ(失礼)

とても可愛い

ユニセフのくだりが笑える)

目の保養になるうえ、ほんわか癒されること間違いありません

 

 

キヨ森七菜

 

すみれ出口夏希


涼子蒔田彩珠

屋形の女将さんの高校生の娘

 


千代松坂慶子

先代の女将さん

 


百子橋本愛

花街で人気No1の芸妓

 

 

吉乃松岡茉優

百子の元同期で出戻り

 


常盤貴子

屋形の女将さん涼子の母

 

白米、焼き魚、お味噌汁、玉子焼き

忙しいときも、疲れたときも、深夜の背徳めしも

普通のごはんがいちばん美味しい

だって日本人だから、あらためてそう思いました

ドリーム・ホース (2020)

OiOiOi

The Larks ”Maggie Maggie Maggie (Out Out Out)”

原題も「Dream Horse

 

ウェールズの田舎の主婦が

村人から週10ポンド(約1600円)の出費を募り

競走馬ドリームアライアンス(夢の連合)を育成する物語

見る前から結末はわかっているのですが(笑)

一丸となって応援するのが微笑ましいし

レースシーンは緊張、勝てば感動する

それに出産から育てたら、わが子も同然

離れて暮らすことになれば寂しいし

怪我をしたら自分の身が裂けるくらい辛いのもわかる

 

そして、美談だけというわけにはいかないんですね(笑)

ト二・コレット演じるヒロインはかなりクセが強いし

(スーパーの雑誌のページ破くのは最低)

欲が出たオーナーたちと対立するようにもなります

 

奇跡的に運の強い馬に出会えてよかった

だから映画にもなったんですけど(笑)

サウスウェールズの「谷 」と呼ばれる地域で生まれ育った主婦ジャンは

早朝からスーパーで働き、昼は両親の介助

夜はバーテンダーとして働いています

ふたりの子どもはすでに自立して家を出ており

夫のブライアンは無気力で妻には無関心

テレビを見てテレビに話しかけています

ジャンはかってレース鳩やドッグレースで優勝したことを

夢中になれることがあった事を懐かしく思い出します

 

いつものようにジャンがパブでビールを注いでいると
税理士のハワードの競馬の話に興味を持ち
自分も牝馬を買い、種付けをした仔馬を

競走馬に育てることを思いつきます

最初は夫もハワードも冗談かと思いましたが

ジャンはチラシを配り共同馬主を募集

集まった23人から出資金を集め組合を作ります

300ポンドで肌馬(繁殖用の牝馬)を買い

老後の資金3000ポンドで(アメリカのレースで実際に活躍した)

ビエンビエンに種付けをしてもらいます

 

無事妊娠に成功、元気な仔馬が生まれましたが

母馬は死んでしまいます

ジャンとブライアンは仔馬を大切に育て
馬主たちと協議の末ドリームアライアンスと名付けられました

ジャンとブライアンの夫婦仲はとっくに醒めていたけれど

彼らには動物好きという共通のところがあったんですね

ドリームを育てることで、夫婦の絆も取り戻して行きます


3
歳になったドリームは(押しかけ同然で)調教のため
ウェールズで一番有名なトレーナー、ホッブスに預けられます

そしてついにデビュー戦の日がやってきた

馬主たちはお祭り騒ぎ、バスに乗って応援に行きます

イギリスの競馬場って、ホントお金持ちのたしなみという感じで
「谷」から来た田舎者は浮きまくり
しかもドリームがスタートラインにもまともに立てず

出遅れてしまい皆の笑いもの、ダントツのビリ

しかしそこからが凄かった

どんどん距離を詰め4着でゴール、一同は大喜び


やがてドリームは32着と成績を上げていき

地元の新聞の紙面を飾るようになります
ついには大馬主エイブリー卿の本命馬を負かし優勝

組合の資金は10万ポンドを超えました

エイブリー卿がドリームを買いたいと申し出ると
ジャンはどんな大金を積まれても売らないと頑なに断り
馬主たちから勝手に決めるなと批判されてしまいます

 

しかも次のレースでドリームが転倒

脚の腱を怪我してしまいます

安楽死させるか、治療するか

治療した場合組合の資金10万ポンドは全てなくなってしまいます

しかも治る保証はありません

出費した人間なら、あの時エイブリー卿に売っていれば

と内心思ったと思うんですね

でもジャンにとってはミルクから与え育てた子どもなんです

お金のためだけじゃない

ドリームは夢で希望、生き甲斐なのです

レースに出れなくなっても、殺すことなんて出来ない

 

ジャンはドリームを救うため馬主たちを説得

ドリームは殺処分を免れ手術することになります

ドリームのレースがなくなり、皆は田舎のなんの刺激もない

今までの生活に戻るしかありませんでした

そんな中、ジャンの父親が亡くなり

そっけなかった彼の遺品から大量のドリームの新聞記事や

初めてドックレースで優勝した時の写真を見つけます

父親に愛されていたことを知り慟哭するジャン

 

ハワードはなんとかドリームの怪我を治したいと検索していました
そして幹細胞治療が有効であることを知ります

それは身体の他所から取り出した細胞から

損傷した組織を体内で再生させる方法で
日本ではこの治療法でカネヒキリ号が右前浅屈腱炎を克服し復帰
大レースで勝った事例があります

 

数か月後、ホッブスから連絡を受けたハワードは

ジャンとドリームに会いに行きます

ホッブスは傷は完治し、ドリームをウェールズグランドナショナルに参戦させたいが

大怪我の後なのでジャンにどうするか訊ねます

さすがに今回はブライアンとハワードに説得され

共同馬主たちと相談することになるわけですが

ドリームがまた怪我をしたらどうしようと

レースに出すことが不安でならないジャン

しかし馬主たちはレースに出すべきと強調します

(そのために高い治療費を払った)

 

ブライアンは覚悟を決めることが出来ないジャンに

「何よりドリームが走りたがっている」のだと伝えます

 

ドリームの復活戦は(2009年)グランドナショナルという大舞台

怪我は大丈夫か、また転倒したらどうしよう

手に汗握る馬たちのデッドヒート

 

興奮しているのは、馬主たちだけじゃない

会場の観客、「谷」の村人たち、テレビの前のみんな

これが競馬なのか(笑)

そしてドリームの勝利

ラストにはウェールズの国旗と国歌(のメロディ)まで覚えるわ(笑)

ドリームは全30レース、138,646ポンドの賞金を獲得

すべてのトレーニング代、手術や獣医を含む費用が支払われた後

23人の馬主はそれぞれ1430ポンド(約225千円)の利益を得ました

それこそ「胸の高鳴り」を得たという感じですね(笑)

 

2012年、ドリーム(肺の悪化で)引退

その後はサマセットイングランド南西部の州)の牧場で

余生を過ごしているそうです

 

そこはお父さんはビエンビエン

おじいちゃんはマニラ(アメリカの殿堂入り競走馬らしい)

種馬にならなかったの?と疑問に思うわけですが

ドリームは(牡馬を穏やかで行儀よくするための)去勢馬にされたんですね

なるほど、それを知るとレースの展開も見えてきます

(そんなことまで調べるから、オマエはブログを書くのに時間がかかるんだ)

 

過去のレビューでも何度も言っていますが(笑)

私にとって馬は世界で一番美しい動物

ダイナミックなレース(どう撮影したんだ?)に

サッカーワールドカップで優勝したくらいのお祭り騒ぎ

音楽のチョイスもいい

 

今年の目標は、劇場で10本以上映画を見ること

(目標が映画レビュアーとはいえない控えめさ 笑)

今年最初の映画は「アバター」と迷ったのですが(笑)

 

ドリーム、サクセス、新たな挑戦、そして実話

見て好かったです

実際のドリームと騎手トム・オブライエン



【解説】映画.COMより

イギリス・ウェールズを舞台に、片田舎の小さなコミュニティで育てた競走馬が最高峰のレースに挑んだ実話をもとに描いたヒューマンドラマ。
ウェールズの谷あいにある小さな村。無気力な夫と暮らすジャンは、パートと親の介護だけの単調な毎日に飽き飽きしていた。そんなある日、クラブで共同馬主の話を聞いた彼女は強く興味をもち、競走馬の飼育を決意。勝ったことはないが血統の良い牝馬を貯金をはたいて購入し、飼育資金を集めるため村の人々に馬主組合の結成を呼びかける。産まれた子馬は「ドリームアライアンス(夢の同盟)」と名付けられ、奇跡的にレースを勝ち進んで村の人々の人生にも変化をもたらしていく。
主人公ジャンを「ヘレディタリー 継承」のトニ・コレット、夫をドラマ「HOMELAND」のダミアン・ルイスが演じた。

ビューティフル・レターズ 綴られた言葉(2011)

原題は「THE LETTER WRITER」(手紙作家)

見知らぬ人からの一通の手紙に励まされことで

言葉の大切さに気付き

少しずつ気持ちが前向きになっていく女の子の物語

 

85分という小品のテレビ映画

監督はモルモン教末日聖徒イエス・キリスト教会)ということですが

宗教臭さはないですし(お葬式のシーンがあるくらい)

善意の押しつけもない

秋冬の風景はダグラス・サーク作品のように美しく

家族で見るのもよし、学校の授業で流すのもよし

人間がいかに言葉によって動かされているかを考えさせられるし

今日からの生き方をちょっと変えられる

子どもからご年配の方まで、全世代におススメできる良作だと思います

高校生のマギーはロックバンドのボーカル

でもバンドに打ち込むほど、授業はうわの空

成績は悪くなるいっぽう

母親とも折り合いが悪

 

なんとなくうまくいかない、気が晴れない毎日

そんなある日、手紙が届きます

そこにはたくさんの励ましと、前向きになれる言葉が綴られていました

差出人はサム、誰だかわからない

ママもわからないという

そこで疎遠になっていた父親に会いにいくと

父も再婚した女性も(子だくさん)

思いのほか温かく歓迎してくれました

やっぱり差出人はわからないという

筆跡や文面から考えるとたぶんお年寄りだろう

マギーは郵便局に行き、手紙を見せると

集配係が「老人ホーム」からだよ、と教えてくれました

 

マギーが施設を訪ねると、電話帳を調べている老人の姿

サムとは彼のペンネームで、不特定な住所を選び手紙を送っていたのです

マギーは今まで褒められたことがなかった、手紙に励まされた

なにか手伝いたいと伝えると、トムはカード配りに誘います

見知らぬ人を観察し、カードを渡す

それを読んだ人が笑顔になり、挨拶を交わす

 

マギーがなぜ手紙やカードを贈るのかと訊ねると

サムはかって大切な人を言葉で傷つけたからだと答えます

「言葉や行いは鏡のように自分に跳ね返ってくる」

それからは言葉を、役に立つことに使おうと誓ったのだと

マギーはサムのカードの一枚を

同じアパートに住んでいて、毎日玄関で外を眺めている

小児がんの少年)マイケルの靴に入れました

するとマイケルから「カードをありがとう、アップルパイを食べに来て」の返事

サムもアップルパイの招待に喜びます

 

同じ頃、クラスでは隣の席で親友のキムが

バンドがメジャーになるため、いろいろ提案をしてくれます

それにはお金が必要でしたが(母親のタンスの貯金から盗む)

人気のライブハウスで演奏したり

スタジオでデモテープを録音することが出来ました

ギタリストの彼氏とも順調に交際中

 

ところがキムにそそのかされたカンニングがバレ

おまけに彼氏も、バンドのボーカルの座もキムに奪われてしまいます

親友だと思っていたのに(親友だからこそあるある)

 

でもサムは決して悪口は言わない

言葉での解決を教えてくれる

サムの施設の友人ステラは老人ホームの合唱団に誘ってくれた

みんなで入院したマイケルをお見舞い行く

サムも約束のアップルパイを食べに行く

誰かの役に立ちたいと思ったとき

そこに不可能はないのです

 

マギーはひとりギターのレッスンをして、歌詞を口づさむ

サムが言葉を伝える手段が手紙なら、私は歌

だけど突然サムが倒れ、去ってしまう

ステラはサムのために歌いましょうと言うけれど

そんな気持ちにはなれない

でも卒業式が近づき、マギーは思い出します

サムが伝えたかったこと

「言葉や行いは鏡のように自分に跳ね返ってくる」

 

クライマックスはマギーの卒業式でのソロ演奏

ママにこれまでの感謝の気持ちを伝える

親友だったキムを許す

大事なのは相手の気持ちを考え

きちんと言葉にすること

マイケルが拍手する

ステラも拍手する

曲を聴いて涙ぐむ母親

演奏後、和解しようとするキム

 

人生に問題は山積み、すべては解決しない

でも自分の心がけ次第で、やさしさや思いやりで

いくつかはうまくいく

人はいかに言葉で左右されるか

使い道を間違ってはいけないのです

amazonプライムビデオ)



 

【解説】amazonプライムビデオより

それは、一通の手紙から始まった!人は言葉によって幸せにもなれるし、傷つきもする。大人たちの期待に応えられず、大好きなバンド活動もメンバーには快く受け入れられていない。そんな孤独な少女のもとに、一通の手紙が届く。そこに綴られた優しい言葉に勇気づけられた彼女は、差出人を探し始める。そして、その手紙をきっかけに老紳士と出会った少女の人生は少しずつ変わり始め、やがて祝福を与える才能を見つけ、多くの課題が立ちはだかる現実に向き合っていく。本編に登場する珠玉の“言葉”の数々が、人を思いやる優しい気持ちに変えていく感動のヒューマン・ドラマ!老紳士サム役のバーニー・ダイヤモンドは本作完成後、89歳で逝去。彼の遺作となった感動の1作。(C)2012 BYUtv/Mirror Films

灼熱の魂(2010)

「1+1=1 が、あり得るか?」

原題は「INCENDIES」(焼夷弾 しょういだん)

ドゥニ・ヴィルヌーヴらしい手強い作品

中東の国のどこかで少年たちが銃を持った男たちに頭を刈られています

ひとりの少年のかかとには三連星の刺青

憎しみとも哀しみともとれる鋭い眼差し

カナダで暮らす双子の姉弟ジャンヌとシモンは

母の雇い主で公証人でもあるルベルから遺言状を受け取ります

亡骸は裸のままでうつぶせにして葬り、墓石は立てず名前も刻まないこと

そして存在の知らない兄と、死んだと聞かされていた父親を探し

それぞれ宛てた手紙を渡してほしい

そのときやっと墓碑が立つのだと

姉のジャンヌは大学で数学の講師をしているんですね

そのことを教授に相談すると

その答えにもはや沈黙するしかない

ここから先は答えのない問題へと続く

解決不能な問題に直面するようになる

努力しても無駄だという人もいるだろう

想像を絶するほどに複雑で難解な問題を前に

自分を守る術はなくなる

純粋数学へようこそ

「孤独の世界」へ

eiπ+1=0」(オイラーの方程式)

故に神はいる

物語の背景にあるのは、 レバノン内戦(1975年~1990

キリスト教(マロン派)とイスラム教(PLO パレスチナ解放機構)の対立から

さらにシリア、イスラエルが介入し泥沼化

ジャンヌは母のパスポートと古い写真

形見である十字架のチョーカーを持ち、兄を探すため

母の故郷レバノン(ここでは架空の国)に旅立ちます

母ナワルの故郷では最初は歓迎してくれたものの

ナワルの娘だと知ると突然態度が変わり

兄を捜すよりまず彼女が何をしたかを知るべきだと伝えられます

ナワルはイスラム教徒の難民と恋に落ち妊娠しますが

兄弟によって恋人は撃ち殺され

生まれた赤ちゃん(かかとに三連星のしるしをつけられる)は

すぐに助産婦によって孤児院に引き取られます

祖母は村八分になったナワルを都会の大学に進学させますが

内戦が勃発

ナワルは息子を探しに行く決意をしますが、すでに孤児院は破壊

子どもたちはイスラム教徒に連れ去られていました

イスラム教徒のふりをしてバスに乗りますが

今度はキリスト教の過激派に襲撃され

息子が収容された場所は焼き払われていました

なにもかも火にかけて燃やしてしまうのは

死後の世界による復活(レクイエム)を信じる

イスラム教徒やキリスト教徒にとって

死んでも許さないという強烈なメッセージなのだそうです

大学は閉鎖され、ナワルは女闘士となり

社会主義党の有力者の暗殺に成功するものの

内戦が終わるまでの13年間投獄されます

ジャンヌは母が入所していた刑務所に行き

今は学校で用務員をしている元看守にたどりつきます

そこでナワルはどんな拷問にも耐え「歌う女」と呼ばれていたこと

アブ・タレクという極悪な拷問人によってレイプされ出産したことを聞き

立ち会った看護師の名前を教えてもらうのです

ジャンヌは弟のシモンを呼び看護師に会いにいきます

母の真実も、自分がレイプされた子であることも認めたくないシモン

でもジャンヌはここからはあなたの番よ、と言います

現地までついてきた公証人ルベルのコネで

兄ニハドの消息は意外にもあっけなくわかります

少年兵として訓練されたニハドはスナイパーとなりますが

イスラム教徒に捕まったあと洗脳され

アブ・タレクという名で拷問人になり

今は自分たちと同じケベックに住んでいるというのです

ナワルは偶然にもプールで三連星の刺青の男を見つけていました

息子だと確信し顔を見ると

それは忘れもしないアブ・タレクだったのです

ナワルが死んだのは自殺かも知れません

ナワルは双子の姉弟を愛せなかった

本当に愛したのは息子だけ

でもわが子は罪の子だった

(異教徒との間に生まれたうえ、近親相姦)

子どもたちの代わりに罪を償う

天国へは行けない

ジャンヌとシモンから2通の手紙を渡されるニハド

父親へ、そして息子へ

あなたは愛から生まれた

だから、姉弟も愛で結ばれている

怒りの連鎖を断ち

ともにいることが何より大切

墓碑の前に立ち尽くすニハド

だけど、戦争には武器を与えるけど

平和には手を貸さない

私たちに何が言えるでしょう

彼もまた過酷な人生を送ってきた被害者なのです

これが落ち込む映画、絶望する映画のランキング

上位に入っていないことが不思議ですね(笑)

頭を悩ましたい方に、ぜひ見ていただきたいです

amazonプライムビデオ)

 

 

【解説】allcinema より

カナダに在住するレバノン出身の劇作家ワジ・ムアワッドの同名戯曲を「渦」ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映画化した衝撃のヒューマン・ミステリー。亡くなった母の遺言に従い、父と兄を探す旅に出た双子の姉弟が、やがて自分たちのルーツでもある激しい宗教対立に翻弄され続けた母の数奇にして壮絶な運命と向き合っていく姿を、現在と過去それぞれのエピソードを通して力強い筆致で描き出していく。主演は「愛より強い旅」「パラダイス・ナウ」のルブナ・アザバル。2010年度のアカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品。
 中東系カナダ人女性ナワル・マルワンが亡くなり、公証人から遺された双子の姉弟ジャンヌとシモンに遺言が伝えられた。それは、父親と兄を見つけ出し、それぞれに宛てた母からの手紙を渡してほしいというもの。死んだと思い込んでいた父ばかりか、存在すら知らなかった兄がいることに当惑するジャンヌとシモン。それでもジャンヌは遺言に従い、中東にある母の祖国へと旅立つのだったが…。

ドリームプラン(2021)

原題は「KING RICHARD」(リチャード王)

でも「プラン」が物語を支配するキーワードなので

この邦題は最近では珍しく好い出来(笑)

 

公私ともに親ばか(というよりバカ親)をやらせたら

ウィル・スミスにかなう俳優はいない(笑)

しかし2021年のアカデミー賞授賞式で

妻を侮辱されたと思い込んだウィル・スミスが

プレゼンターのクロス・ロックを平手打ちにしたことで

映画の影は薄くなり、見る気さえおきなくなった災難な作品

ビーナスとセリーナ、共演者たちに同情します

だけど映画に罪はない(笑)

サクセスストーリーは多くあるけど、毒親が主人公は珍しい

でも差別や暴力を受け続けると

子どもを守るため行き過ぎた愛情をかけてしまうのはわかるし

何より子どもたちが可愛いので、いやな気分にはなりません

カリフォルニア州コンプトンで

妻のブランディ(ソジャーナ・トゥルースを敬愛している)

5人の娘(上の3人は妻の連れ子)と暮らすリチャードは

ビーナスとセリーナふたりの娘の才能をテニス関係者に売り込んでいます

しかし見ず知らずの黒人の男の話になど誰も耳を貸しません

ビーナスとセリーナは地元の汚れたテニスコートで練習するしかない

そこでは不良たちが娘に絡んで来て、リチャードも袋叩きにあいます

それでもリチャードは諦めない

彼には「プラン」があり、それを実行することが全てだからです

リチャードはポール・コーエンというコーチに会いに行き

(マッケンローとピート・サンプラスが練習している)

リチャードのあまりのしつこさに

ポールは渋々ビーナスとセリーナをコートに入れますが

ふたりのテニスの才能に驚き

無料でふたりをコーチする余裕はない

姉のビーナスだけ預かることにします

「プラン」「プラン」といってもほとんどがビーナスのためのもの

スポットライトはビーナスに当てられているのです

落ち込むセリーナ

母のブランディはセリーナを励まし

ビーナスの練習ビデオを研究しセリーナをコーチします

実はリチャードよりブランディのほうがコーチとして上だと思う(笑)

ポールはビーナスをジュニアトーナメントに参加させ

ビーナスは初大会で優勝します

するとリチャードは喜ぶ姉妹たちに「シンデレラ」を見せ

謙虚であることを説教するのです(まずオマエが謙虚になれ)

連勝を続けるビーナスのトーナメントのひとつに

セリーナは両親に内緒で勝手に申し込み、10歳の部で優勝します

やがてビーナスをプロにしたいと著名なエージェントが現れますが

リチャードは言葉尻を捕えては

上流社会の白人に馬鹿にされたと受け止め

ジュニアトーナメントに出場させることを完全に拒否

今まで世話になったポールまで解任してしまうのです

そこにフロリダにある全米プロテニス協会(USPTA) から

ふたりのプレーを見るためリック・マッシがやって来ます

リチャードはビーナスとセリーナを彼の施設で訓練させる条件として

(大学に通う長女を除く)家族全員で引っ越すこと

家とキャンピングカーを用意することを条件に出します

さらに試合には出さず、普通の女の子と同じように

学校と教会(エホバ)に通わせること

なのでその後3年間、ビーナスはトーナメントにも

メディアに出ることもありませんでした

代わりにカメラの前に登場するのは、毒を吐くだけのリチャード(笑)

まわりの子がどんどんプロデビューしていくなか

試合に出れず我慢できなくなったのは、リックでなくビーナスでした

リックになんとかパパを説得してと頼むビーナス

そんなときリックの教え子のひとり

ジェニファー・カプリアティの麻薬所持が報道され

娘を麻薬中毒者にはしないと、またまた出場を拒むわけですが

ブランディから離婚まで切り出されたら、渋々同意するしかない

(生活費は全てブランディが看護師として働いている)

驚くべきはこんな封建的な親父に娘たちが反抗もせず

(隣家から虐待で通報されるくらいだから、たぶん相当なもの)

素直に、しかも文武両道すくすくと育ったこと(母親のおかげだろうな)

 

制作総指揮に加わったセレナとヴィーナスによれば

映画は「可能な限り」現実に忠実に再現されたそうです

 

そしてついにビーナスのプロデビュー戦

バンク・オブ・ザ・ウェストクラシックの日がやってきます

最初からアメリカンドリームにはならなかった

ビーナスは2回戦でサンチェス・ビカリオから

技術よりむしろメンタル

初めて負ける、という屈辱を味わいます

試合後、無言でコートを見つめるセリーナの姿がいいですね

カメラはロバート・エルスウィット

 

でも家族がスタジアムを出ると、そこに待っていたのは

多くのサポーターと歓声でした

そして9か月後、ビーナスは15歳でリーボック1200万ドル

1ドル130円として156千万円)で契約

ウィンブルドン5回優勝

世界ランキング1位になった最初のアフリカ系アメリカ人女性

 

年後プロになったセリーナ23回のグランドスラムチャンピオン

テニス史上最高の女性プレーヤーと見なされていま

 

もしリチャードがビーナスのエージェントを断らなければ

ビーナスにもさらなる栄光が待っていた気もしますが

宿命ばかりはどうにもならない

暗転後のホームビデオの映像にはウルっときますね(笑)

こんな父親のために、こんな父親だから

娘たちも母親も、たゆまぬ努力と苦労を捧げたんだね

だけどリチャードはビーナスとセリーナの成功の後、ブランディと離婚

若い奥さんと再婚し息子を授かり(その女性とも2017年に離婚)

さらに結婚以外でも息子をもうけ

(最初の結婚では妻と幼い5人の子どもを棄て失踪している)

 

ビーナスとセリーナの異母姉妹は

今ではリチャードのことを

精子提供者」と呼んでいるそうです



【解説】allcinema より

ウィル・スミスが女子テニス界のスーパースター、ビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を育てた破天荒な父親を演じた伝記ドラマ。テニス未経験にもかかわらず、娘たちを世界チャンピオンにするという固い意志と独学による型破りな指導法で、不可能とも思える夢を実現させた父親と娘たちの驚きの実話を映画化。共演はアーンジャニュー・エリス、トニー・ゴールドウィンジョン・バーンサル。監督は「ジョー・ベル ~心の旅~」のレイナルド・マーカス・グリーン。
 カリフォルニア州のコンプトンに暮らすリチャード・ウィリアムズは、2人の娘ビーナスとセリーナを最高のテニスプレイヤーに育てると決意し、そのための詳細な計画書も作成していた。治安の悪い劣悪な環境の中、独学で姉妹を指導していくリチャード。姉妹もそんな父の熱意に応えてみるみる成長していく。いよいよ専門的な指導が必要になってくるが、貧しいリチャードには一流のコーチを雇うためのお金もコネもなかった。それでも、なんとかして姉妹にコーチをつけようと奔走するリチャードだったが…。

 

RUN/ラン(2020)

原題も「RUN」(走る)

何の前情報もなく鑑賞したのがよかった(笑)

短い尺の中に2度ほど大きな盛り上がりがあり

オチも効いている

監督のアニーシュ・チャガンティはインド系アメリカ人で

ハリウッド映画とはどこか一線を画しているのが面白い

ヒロインを演じたキーラ・アレンも実際に車椅子生活をおくる

コロンビア大学の学生ということ

困った顔のたれ目で可愛いうえ、作中でも賢いところが魅力的

 

ただ車椅子の女の子が立った!走った!という

母娘の感動モノでは決してなく(笑)

あくまでネタバレ禁止系なので、未見の方は

この先このレビューは読まないことをおススメします(笑)

ワシントン州パスコ

ダイアンは低体重児の娘クロエを出産(早産と思われる)

クロエは糖尿病、喘息、皮膚病、筋疾患など多くの疾患を抱え

車椅子生活をしながらも素直で明るく成長

ワシントン大学の合格発表を待つ日々

ダイアンは障害児を抱える親の会で、クロエが大学に進学したら

デートをしたり自分の時間を楽しみたいと話します

父親は誰か、なぜいないのかは一切語られません

母親が幼少時に親から虐待にあっていたというエピソードも

全てカットされたそうです

 

クロエは自宅で勉強してるんですね

自分で背中に薬を塗ることもできず、マッサージなど介助も必要

通学するためには慈善団体やボランティアの協力がいりますが

そのようなサービスは受けていません

母と娘の閉ざされた空間

でもクロエは拗ねることなく

ダイアンも優しく献身的にクロエを育ててきました

 

そんなある日、大好物のチョコを盗もうと

(血糖値のコントロールのため制限されている)

ダイアンの目を盗みスーパーの買いもの袋を漁っていると

ダイアンの名前の書いた薬瓶を見つけます

ママは何か病気なのかと心配するクロエ

だけどその緑色のカプセルを「新しい薬に代わった」と

クロエに飲ませようとするダイアン

薬瓶にママの名前が書いていたと言うと

レシートが巻きついていただけ、とはぐらかされてしまいます

 

不安になったクロエがもう一度薬瓶を確認すると

確かにクロエの名前で「トリゴクシン」という薬名が書いていました

しかしラベルの裏には、剥がされたシールの跡にダイアンという文字

クロエは「トリゴクシン」を検索しようとしますがネットが繋がらない

薬局に電話をかけると番号で問い合わせたことがバレてしまう

ついには全く知らない男性に電話をかけて調べてもらうと

「トリゴクシン」が心疾患の薬だとわかりましたが

カプセルは赤色の1種類だけだというのです

 

クロエはカプセルを吐き出し保管するようになります

そしてダイアンに映画を見に行くことを提案します

映画館は薬局のすぐそば

トイレに行くと嘘をつき薬局に向かうクロエ

薬剤師に緑のカプセルを見せると

それは「ライドケイン」という犬用の筋弛緩剤だと教えられます

もし健康な人間が飲んだとしたら、歩けなくなると

 

そこに現れたダイアン

新しい薬のせいで妄想がおこるのよと言い訳し

クロエを無理やり連れ戻し部屋に閉じこめてしまいます

でもたとえ歪んだ愛情でも、愛していることに違いないんですね

その証拠に食事はちゃんと用意している

(脱出をはかる前のクロエちゃんの食べっぷりが可愛い)

ただ娘を独占したい

障害児を立派に育てている母親だと認められたい

窓から抜け出し(シーツはそのために使うのか)屋根を這い

違う部屋から自分の部屋に向かい車椅子に乗る

今度は階段エレベーターのコンセントが壊され

やむなく階段を転げ落ちるクロエ

車椅子だし、歩けないし、喘息だし

アベンジャーズと真逆で、超ゆったりなのにハラハラする(笑)

動きが遅い分、いつ捕まるかもしれないという恐怖

偶然通りかかった知り合いの配達員トムに助けを求めると

「警察か、病院か」と訊ねられ「警察」と答える

しかしそこにダイアンが戻ってきて、トムの首にインスリンを打ち

クロエを地下室に閉じ込め、トムを殺害するのでした

(トム、めっちゃいい人だったのに)

地下室でクロエが見たのは大学の合格通知と

幼少期の自分が立っている姿の写真

クロエという名の赤ちゃんの死亡証明書

病院から新生児が誘拐されたという新聞記事の切り抜き

 

私はママの子じゃなかった

しかも病気でも何でもなく、健康で歩けた

ママが毒を盛って私をこんな身体にしたんだ

代理ミュンヒハウゼン症候群

2015年にアメリミズーリ―州で実際に起った

ディー・ディー・ブランチャード事件を思い浮かべます

 

クロエはいちかばちか、ダイアンの目の前で

地下室に保管していた劇薬有機リン酸塩」を飲みこみます

すぐに胃を洗浄しなければクロエは死んでしまう

やむなくクロエを病院に運ぶダイアン

一命を取りとめたクロエは、看護師に危険を知らせようとしますが

声が出せず、紙に「MOM」と書くのがやっと

その時ナースコールがなり看護師が出ていくと

ダイアンはクロエを車椅子に乗せ病院を出ようとしますが



看護師の知らせを受けた警備員に見つかり

銃を取り出したダイアンは肩を撃たれ

その衝撃で階段から落ちてしまいます

7年後

医療刑務所に入院しているダイアンの見舞いに来たクロエ

同じ障害をもつ子どもたちを助ける仕事をしていて

(結婚して)娘は両親に懐いていると話します

そして「おくすりの時間よ」と口の中から

ラップに包まれた緑色のカプセルを出すのでした

 

17年間ずっと愛していた、信じていた

そのぶん恨みも大きい

失った時間は永遠に取り戻せないのだから

ディー・ディー・ブランチャードの娘ジプシー・ローズも

母親を殺し、刑務所でやっと自由になれたと語ったそうです

 

 

【解説】allcinema より

search/サーチ」のアニーシュ・チャガンティ監督が車椅子の娘を溺愛する母親の狂気の暴走を描いたサイコ・スリラー。献身的に支えてくれる母への疑念が芽生え始めた車椅子の少女が、やがて恐るべき真実に近づき、必死の逃亡を図る恐怖の行方をスリリングに描く。出演は母親役に「キャロル」「ミスター・ガラス」のサラ・ポールソン、その娘役で新人のキーラ・アレン。
 郊外の一軒家に暮らすシングルマザーのダイアンと娘のクロエ。生まれつき体が弱く、車椅子生活を余儀なくされていた娘をダイアンは溺愛し、献身的に世話してきた。一方クロエは車椅子のハンデにも常に前向きで、大学へ進学し自立しようと勉学に励んでいた。そんな中、母親が新たに用意してくれた薬に疑問を抱き、自分で調べようとするクロエだったが…。