シン・ウルトラマン(2022)

1966年(昭41)のウルトラマンの世界観を2022年に現出させた

庵野秀明「俺のウルトラマン

と、庵野秀明の「俺の長澤まさみ

で、「シン・ゴジラ」の続編

ウルトラマンは意外とノーマル(笑)

カラータイマーはない

怪獣は禍威獣

科学特捜隊は禍特対(国家公務員)

カボラは顔が使徒

ゼットンは役目が使徒


マルチバースの概念(マーベルか!)

(自分のいる世界とは別の世界が複数存在するという

 マルチ(複数)とユニバース(宇宙・世界)を合成した造語)

ウルトラマンエヴァンゲリオン両方好きな人、か
両方とも思い入れのない90年代以後に生まれた若者向け
以上
(おいっ! 笑)

神永 新二(斎藤工

本作の主人公警察庁公安部より出向した作戦担当官
単独行動が多
浅見弘子長澤まさみ

公安調査庁より出向した分析官神永とバディを組むことになる
ウルトラマン

禍威獣と戦う外星人、スペシウム光線を発射する
神永がベーターカプセルを起動させることにより出現する
ゾーフィ

光の星使い
オリジナルではウルトラマンのお兄ちゃん(ウルトラ兄弟の長男)
ザラブ

外星人言語を用いて人類コンタクトを図るザラブ星の工作員
オリジナルでは科学と言語を理解
人間に対して友好的である行動をとりながら裏切る
別名「凶悪宇宙人」
メフィラス山本耕史

外星人第0号を名乗る謎の
メフィラス星人オリジナルでは暴力反対にこだわり
知能高く自意識過剰、武力によらない地球征服を目論んでいる
ゴメス

禍威獣第1号
古代怪獣、地底に生息しているため光に弱い
マンモスフラワー

禍威獣第2
オリジナルではジュラ紀に生息していた花「ジュラン」
毒性の花粉を撒きちらし、伸ばした根で人間を絞め無数のトゲで血液を吸収する
ペギラ

禍威獣第3
オリジナルでは核実験の影響でペンギンが突然変異、南極に棲息する怪獣
マイナス130度に達する冷凍光線を放射し敵を凍死させる
ラルゲユウス

(飛翔)禍威獣第4
空腹になると巨大化して暴れる古代怪鳥
普段は文鳥の姿で孤児の少年に飼われているが
夜になると動物園の動物や、集落の家畜を襲って捕食する
飛行速度はマッハ1.5
カイゲル

溶解禍威獣第5
オリジナルの貝獣ゴーガ、タツムリのような体を持ち
眼から溶解液(破壊光線)を発して人間を溶かす
巻き貝の後尾をドリルのように回転させ、地中を掘り進むことができる

パゴス

放射性物質捕食禍威獣第6
オリジナルではウランを常食にする地底怪獣
北京のウラン貯蔵庫や筑波原子力発電所を襲撃し
分子構造破壊光線で攻撃する
ネロンガ

電気捕食透明禍威獣第7

普段は電子イオンの働き透明、充電が満タンにになった時だけ姿を現す

オリジナルでは頭部の触角スパークさせて攻撃する(さほど威力はない 笑)

 

ガボラ

地底)禍威獣第8
オリジナルではウランが好物で1日に1万トン食べ

その際に周囲に放射能を放出する危険怪獣

口から放射能光線を放つ

 

ゼットン

マルチバースの外星人が地球人を生物兵器に転用する前に
地球人を太陽系もろとも滅ぼすため
ゾーフィが光の星から持って来た最終兵器
オリジナルではウルトラマンを完全に倒した初の宇宙怪獣

ウルトラマンは単身ゼットンに挑むものの失敗

神永は人間の姿に戻り昏睡状態

ウルトラマンは次元の裂け目に飛ばされてしまいますが

神永が残したUSBにベーターシステムが書かれていることが判り

異次元にいるウルトラマン本体をこの世界に戻すシステム

(それがUSBモリーに保存出来る程度 笑)

禍特対は世界中の科学者を集め解読に成功

しかしウルトラマンは脱出に失敗

異次元空間を彷徨うことになります

そこにウルトラマンを光の星に連れ戻そうとゾフィーが現れるも

ウルトラマンは拒否

そのかわり自分の命を神永に与えてほしいとゾフィーに頼みます

ゾフィが(一体化した)ウルトラマンと神永を分離する

神永は浅見たち禍特対の前で目を覚ますのでした

 

終盤は哲学的っぽい屁理屈ゴネゴネより

もっとシンプルで躍動感あるほうがよかったかな

こういう難解でメッセージ性の強い外星人との邂逅(かいこう)は

ドゥニ・ヴィルヌーヴに任せておけばいい(笑)

 

でもこの(既存のキャラをオリジナル的にした)同人誌や

マニアのオフ会みたいな感覚は、嫌いじゃない(笑)

それぞれの、シン・ヤマト(宇宙戦艦ヤマト)や

シン・タイガーマスク梶原一騎)だって

あっていいかもですね(笑)

 

 

【解説】allcinema より

世代を超えて愛され続ける“ウルトラマン”を「シン・ゴジラ」の庵野秀明企画・脚本、樋口真嗣監督で実写映画化した特撮アクション・エンタテインメント。謎の巨大生物“禍威獣(カイジュウ)”の出現が日常となった日本を舞台に、新たに設立されたカイジュウ対策専門組織“禍威獣特設対策室専従班”に所属する隊員たちの奮闘を描くとともに、宇宙から突如飛来した正体不明の銀色の巨人“ウルトラマン”の目的と、カイジュウとの壮絶な戦いの行方を、実力派キャスト陣の豪華共演で描き出す。出演は斎藤工長澤まさみ、有岡大貴、早見あかり田中哲司西島秀俊

ギレルモ・デル・トロのピノッキオ(2022)

「幸福だった だからこんなに悲しいんだ」

 

原題も「Guillermo del Toro's Pinocchio

ピノ(Pino)とは松の木のこと

原作はイタリアのカルロ・コッローディの児童文学

Storia di un burattino」(あやつり人形の物語)

みんなが知ってる「ピノッキオ(ピノキオ)」

何度も映像化されている「ピノッキオ」

何を今さらストップモーション・アニメにする必要があると思ったのですが

これが意外と好かった(笑)

デル・トロお得意の異形への愛と

有害な「家父長制度」や

ファシストに対する批判

解釈的にも見事で、しっくりくる

第二次世界大戦中のイタリア

おもちゃ職人で大工のゼペットは10歳になる息子

カルロをハンガリー軍の誤爆で亡くしてしまいます

優しくて賢かったカルロ

 

ゼペットは立ち直ることができず

仕事もせず酒に溺れるようになります

 

それから何年かして、カルロの墓のそばに植えた松ぼっくりが育つと

ゼペットはその松の木を切り、カルロの代わりになる木の人形を作りました

酔っぱらって作った人形(笑)

釘は曲がり、左右はバラバラ

だけど「木の青い精霊」はゼペットの願いを叶え人形に命を与え

木の穴に住んでいたコオロギのクリケットに教育係を命じます

 

が、ピノッキオは何をやっても失敗ばかり

とんでもない乱暴者の破壊者で町の人々を怖がらせてしまいます

ゼペットといい子になり学校に通うことを約束したピノッキオ

しかし自由に動き喋る木の人形を発見した

ショーマンのヴォルペ伯爵と猿スパッツァトゥーラは

彼らのサーカスでピノッキオを働かせるため

嘘の甘い言葉でピノッキオを騙すのでした

ピノッキオのショーは話題となり、なんとムッソリーニまでやって来ます

しかしスパッツァトゥーラからヴォルペ伯爵が

お金を全部だまし取っていることを聞いたピノッキオは

ヴォルペ伯爵に復讐するためムッソリーニの前で

屈辱的な「うんち」「鼻くそ」の歌を歌います

銃で処刑されてしまうピノッキオ

 

その頃ピノッキオを探す旅に出たゼペットとクリケット

巨大な海の怪物に飲み込まれていました

「死の青い精霊」(木の精霊の姉)によって復活したピノッキオが到着したのは

少年が戦争で戦うための(ファシストによる)訓練校でした

そこで軍の高官ポデスタの息子、キャンドルウィックと友達になります

キャンドルウィックははじめて父親に反抗し

ポデスタは敵機に爆撃され死に、ピノッキオは爆風で飛ばされてしまいます

そこでヴォルペ伯爵に捕まり

改心したスパザトゥーラの助けで3人は崖から転落、ヴォルペは死に

ピノッキオとスパッツァトゥーラは海の怪物に飲み込まれ

ゼペットと再会するのでした

ピノッキオは怪物から脱出するため嘘をついて鼻を伸ばし

自らが犠牲となって魚雷を怪物に飲み込ませ爆発させることに成功

いつの間にこんなに賢くなったんだ(笑)

ピノッキオは海に投げ出されたゼペットを救うため

今すぐ生き返させてくれと「死の精霊」に頼みます

そうすれば永遠の命を失う、ゼペットは助かってもお前は死ぬという精霊に

それでも「パパを助けたい」と砂時計を壊すピノッキオ

 

ピノッキオは海底に沈んでいくゼペットを助け

クリケットとスパッツァトゥーラも無事浜辺に打ち上げられました

しかしピノッキオの意識は戻らず、そこにあるのはただの木の人形でした

クリケットは、木の精霊との

ピノッキオをいい子に導く役目を果たしたら、願いを一つ叶える」

という約束を思い出し「ピノッキオを生き返らせて」と願います

(オマエが導いたのはピノッキオでなくゼペットだったがな 笑)

そうして蘇ったピノッキオはゼペットと家に帰り

クリケットとスパッツァトゥーラと共に暮らします

やがてゼペットも、クリケットも、スパッツァトゥーラも、老いて死に

新たな旅に出る決意をしたピノッキオ

(キャンドルウィックと再会できるといいね)

人間になるとは、成長とは

失敗から学ぶこと

肉体ではなく、心(精神)が大人になること

家族を愛し、平和を愛するということ

外見的にも性質的にも違う人間をどう受け入れるかということ

 

ピノッキオは木の造形のままでした

でも最後には、不完全だからこそ愛おしいことに気付くのです

 

自分だって完璧じゃない

ちなみに原作ではピノッキオがいい子になることはなく(笑)

ゼペット爺さんを見捨て、コオロギは金槌で殺し、精霊を裏切る

ラストは詐欺師の狐と猫に木に吊るされ、ナイフで刺され放置

何日も叫びながら死ぬという

さすがイタリア、児童文学までマフィアの抗争(笑)

 

さすがに残酷すぎると批判が殺到し

「改心して妖精に本物の人間に変えてもらう」という

ラストに書き換えられたそうです

 

 

 

【解説】allcinema より

カルロ・コロディの名作童話を「パンズ・ラビリンス」「シェイプ・オブ・ウォーター」のギレルモ・デル・トロ監督がストップモーション・アニメで映画化したファンタジー・ドラマ。孤独なおもちゃ職人のゼペットじいさんによって作られ、命を宿した木製の人形“ピノッキオ”が、人間になることを夢見ながらゼペットじいさんと繰り広げる愛と葛藤の大冒険を、ダークかつファンタジックなヴィジュアルで切なくもハートウォーミングに描き出していく。声の出演はピノッキオ役に新人のグレゴリー・マン、ゼペットじいさん役に「ハリー・ポッター」シリーズのデヴィッド・ブラッドリー、その他ユアン・マクレガーティルダ・スウィントンクリストフ・ヴァルツケイト・ブランシェットロン・パールマンら豪華俳優陣が名を連ねる。共同監督には「ファンタスティック Mr.FOX」でアニメーション監督を務めたマーク・グスタフソン。Netflixでの配信に先立ち、一部劇場でも上映。

戒厳令(1972)

「俺がお前だったら、俺を殺すだろう」

 

原題も「État de siège」(戒厳令

戒厳令とは国内に戦争や内乱などの非常事態が発生したとき

司法権立法権、行政権の行使を軍の支配下に移すこと

物語は1970年、南米ウルグアイ極左武装組織

トゥパマロス(民族解放運動)に

USAID(米国国際開発庁)の通信技師のダン・ミトリオーネが誘拐され

CIAのスパイだとして処刑された事件がモデル

私は左翼には反対ではないけど、「極」やテロはいかんと思う

でも、そうならざるを得なかった理由もあるんですね

そのひとつがウルグアイ警察による「拷問」

たとえ身に覚えがなくても、警察に目を付けられたら終わり

電気ショックに水攻め

そのための武器の提供や指導をしたのはアメリカでした

復讐を誓うのもあたりまえ

テロや誘拐殺人は許せることではない

しかしそれ以上に拷問が苦痛であることを知ってほしい

政治家が自身の権益を守るためには何をしてもいいのか

コスタ=ガブラスの伝えたかったテーマの重さを感じます

そしてガブラスアメリカ政府のブラックリストに載る 笑)

映画はウルグアイの首都モンテビデオ戒厳令がひかれ

軍や警察による厳しい検問が行われているシーンからはじまります

そして盗難車からアメリカ人の通信技師

フィリップ・マイケル・サントール(イヴ・モンタン)の遺体が見つかります

当時の左翼の政治思想や運動を知ってる人間であれば

説明はいらないのでしょうが(笑)

前半は少々わかりにくい

ゲリラも、誘拐されたサントーレもインテリジェンス

どちらの言ってることも正しく思えます

ゲリラの目的は、政府と政治犯を釈放する交渉をすること
最初から人質を殺すつもりはありませんでした

証拠に誘拐するより手間かけてサントーレの傷の手当をします

 

サントーレもそのことはわかってくる

でもなぜ経済開発と人道支援で派遣された技師が人質に選ばれたのか

ゲリラはサントーレが何者であるか、少しづつ証拠を突き付けていきます

通信技師という職業は隠れ蓑で

CIAの警察学校の元教官であり、FBIの覆面捜査官

南米各国で警察や軍隊にゲリラを掃討するための指導をし
ウルグアイではスパイ、拷問、暗殺(虐殺)の

特殊チームの指揮官であることが明らかにされます

君らのほうがスパイじゃないか

全てがバレた時のサントーレの言葉に

すべてが詰まってる

君らは破壊者だ

キリスト文明の根底を、自由を、転覆したいのだ

倒すべき敵だ

教えて欲しい、君らの理想とする文明を

ゲリラは答えます

 

(理想とするのは)弱い文明だ

君のような人間

(死の部隊=虐殺を繰り返す白色テロキリスト教原理主義)を

不要な文明だ

政府はゲリラが宣言したサントーレの処刑日が近づくと

仲間を射殺し、指導者メンバーを逮捕していきます

それは交渉が決裂したことを意味していました

 

ゲリラの幹部たちはサントーレを処刑するのに賛成か否か、決を取り

賛成多数でサントーレは射殺されます

アメリカにとっては、結局はサントーレもただの駒のひとつ

使えなくなったらそれでおしまい

サントーレは政府によってテロに屈しない英雄として国葬され

国の誇りだと、マスコミ受けするお悔やみが発表される

最後は次の軍事顧問が空港に到着するという

シニカルエンド

しかも怖いのはこれが50年前の話ではなく

いまも多くの国でジェノサイドが行われていうということ

オールドファンだけでなく、若い世代にもぜひ見ていただきたい

コスタ=カヴラスの政治三部作これにて終了

ギドラ伯爵の貴重なDVDコレクションのおかげで

国際問題についてまた少し賢くなれた気がします

次のユニセフ親善大使は私かもしれない(笑)

 

 

【解説】allcinema より

緊迫した政治情勢を調査するために、南米ウルグアイを訪れ、銃射された民間人と称するアメリカ人、実は政治組織の高級官僚だったダン・アンソニー・ミトリオンをモデルに、“戒厳令”下の恐怖政治の実態を暴く。製作総指揮はジャック・アンリ・バラエティエ、製作と監督は「Z」のコンビのジャック・ペランとコスタ・ガブラス、脚本はフランコ・ソリナスとコスタ・ガブラス、原案はフランコ・ソリナス、撮影はピエール・ウィリアム・グレン、音楽はミキス・テオドラキス、編集はフランンワ・ボ

一九七〇年八月、南米ウルグアイモンテビデオは黒い霧に包まれていた。緊迫した政治情勢下にある月曜日の朝、イタリア系アメリカ人フィリップ・マイケル・サントール(Y・モンタン)ブラジル領事ロベルト・カンポスが、都市ゲリラの革命グループ“ツパマロス”に誘拐され、街の一角にある地下本部に連れ去られた。この国際的誘拐事件は、ジャーナリズムで異常な反響を呼び起こした。なかでも、進歩的な新聞社を主宰するカルロス・デュカス(O・L・ハッセ)は曖昧な答えしかしない政府側に疑問を感じ、単独で調査に乗り出した。フィリップ・マイケル・サントール--国際開発機関の交通・通信部担当技師ということで警察に籍をおいていたが、事実は違っていた。彼は、アメリカ国家の命により、ウルグアイ政府と手を結んで進歩的左翼勢力を弾圧する目的でこの国にやってきたのだ。ワシントンの国家警察の教官であり、既に数多くの左翼グループ弾圧のメンバーを育成していた。ウルグアイの政府内部でも、ロペス大尉(R・サルバトーリ)とロメロ大尉の二人が彼の教育を受けていた。サントールの正体を知り、さらにブラジルその他の中南米諸国を廻り、左翼グループ抹殺を遂行してきたことを知ったカルロスは、ただ愕然とするしかなかった。月曜日の夕方、政府は全市に厳重なる“戒厳令”をしき、特殊軍事警察指令部のロペス大尉をその隊長に任命した。一日おいた水曜日、“ツパマロス”は、捕われの同志と二人を交換する条件をうち出したが、政府はこれを拒絶した。街では軍隊の一般の人々に対する拷問や殺戮が続き、議会でも野党によって政府への批判が行なわれた。その頃、カルロスはさらに大きな事実をさぐりあてた。それは、特殊軍事警察とは名ばかりで、実は裏では“死の中隊”と呼ばれ、暗殺、スパイ活動、拷問を行う秘密組織であり、ロペスらはサントールの指揮下で秘密裡に暗殺団を結成し革命勢力を撲滅すべく、魔の手を伸ばしている、ということだった。凍るような寒さの金曜日、“ツパマロス”は、二人の正体を暴露した。だが、事実を知った国民の批判をよそに、大統領は“正義と権力を守る”とくり返すだけだった。土曜日、“死の中隊”によって“ツパマロス”の連絡所が発見され、革命グループの闘士たちは次々に射殺された。“ツパマロス”の幹部闘士は、二十四時間以内に捕えられた多くの政治犯を釈放しなければ、サントールを処刑すると通告したが、政府は同じ言葉をくり返すだけだった。サントールの処刑は決定した。数時間後、胸部に二発の銃弾を受けたサントールの死体が盗難車の中から発見された。--サントールの国家葬儀が、何事もなかったように整然と行われている。そして、政府はサントールの後任者を迎える準備に余念がない。美しいモンテビデオ空港に降り立つ第二のサントール。だが、既にそのことを知っていた“ツパマロス”の闘士たちの眼が光っていた。彼らの胸の中には、まだ続く自由への解放と闘争への息吹きが静かに波打っていた。戦いはいつ終わるともしれず果てしなく続くのだ。

告白(1970)

原題は「L’Aveu 」(自白)

原作はスラーンスキー事件の当事者のひとり

アルトゥール・ロンドンの手記



スラーンスキー事件(スラーンスキー裁判)とは

チェコスロバキア共産党14人のメンバーに対する

反ユダヤ主義の見せしめ裁判で

血の粛清(しゅくせい)(独裁権力が反対勢力の人々を暴力で排除すること)

そもそも共産主義社会主義の違いもよく解っていない私にとって

心底理解して面白いといえる内容ではないのですが(笑)

映画のほとんどを占めているのが拷問と

嘘の証言の強要なのでわかりやすい

 

後ろ手に縛られ、牢獄の中を歩き続けることを強いられ

食事も水もろくに与えられず眠ることも許されない

やがて栄養不足と睡眠不足と疲労で正気を失ってしまう

イヴ・モンタンはこの映画の撮影で体重を15キロ落としたそうです

あばら骨と垂れ下がった二の腕の皮膚がリアル

 

ストーリーらしいストーリーがあるわけではないのですが

映画を見るまえに知っておいたほうがいいと思ったことを

何点かとりあげて見ます

ルドルフ・スラーンスキー(19011952

第二次世界大戦チェコスロバキア共産党の書記長に選出され

社会主義化を推進するも

1951年、アメリカ帝国主義に加担したと

トロツキー主義者、チトー主義者、シオニスト」の罪で逮捕

死刑判決を受け1952123日に処刑、1968年名誉回復されます



スターリン主義

1924年から1953年までソ連の最高指導者スターリンの発想と実践の総体

指導者に対する個人崇拝、軍事力や秘密警察の支配を背景とした恐怖政治

大規模な粛清を特徴とする全体主義、それに通じる思想や体制のこと

トロツキスト

トロツキズムトロツキー主義) を主張する者

トロツキーとは 「左翼を装った挑発者」

反革命分子で帝国主義の手先(スパイ)の群れ」という意味で

共産党にとって最悪の裏切り者の代名詞

 

シオニスト

シオニズム(シオン運動、シオン主義)を主張する者

シオニズムとはイスラエルの地(パレスチナ)に故郷を再建しよう

ユダヤ教ユダヤ・イディッシュ・イスラエル文化の復興(ルネサンス

しようとするユダヤ人の運動のこと

チトー主義(チトーイズム)

ユーゴスラビア社会主義国初代首相チトー元帥の名にちなむ

共産党を支配政党とする社会主義国ユーゴスラビアにおいて

1948スターリン率いるソ連との対立以降に採用された

労働者自主管理、市場社会主義、非同盟外交政策など

それを支える理論や思想のこと

 

大粛清(ロシア語:Большой террор

1930年代からスターリンが実行した党の浄化

ソ連および衛星国での大規模な政治弾圧

スペイン内戦(19361939

マヌエル・アサーニャ率いる左派の人民戦線政府(ロイヤリスト派)と

フランシスコ・フランコ率いる右派の反乱軍(ナショナリスト派)との争い

ファシズムである人民戦線をソ連、メキシコが支援

西欧国からは文化人、知識人が多く支持した

右派の反乱軍をドイツ、イタリア、ポルトガルが支援した

プラハの春

1968年4月に始まったチェコスロヴァキアでの民主化運動

自国の経済的自立を目指した共産党書記長ドプチェクの指導のもと展開されるも

8月にソ連軍(ワルシャワ条約機構軍)が軍事侵攻したことで鎮圧される

1951年、チェコの首都プラハ

外務次官ジェラール(イヴ・モンタン)は、突然何者かに拉致され

拷問、睡眠時間の強奪、訊問

犯罪の自白(アメリカのスパイとの接触、トロキストのリーダーであること)

の強要を執拗に迫られます

 

党内抗争による大粛清であり、スターリン主義者の陰謀だと知っても

信頼していた仲間たち(ユダヤ人)の自白のコピーを見せられ

嘘の供述書にサインさせられてしまう

奥さん(シモーヌ・シニョレ)は仕事も家も

家財道具すべて奪われ、安いボロアパートに引っ越し

子どもたちの命を守るため夫の罪を告白し

そのことはラジオで放送されます



筋書き通りの裁判では、容疑者たちは覚えさせられた評言を暗唱するだけ

11人が死刑、ジェラールを含めた3人に無期懲役の判決が出ます

スターリンの死後ジェラールは釈放され、1956年名誉回復

(拷問した軍幹部が、一般市民に戻るといい人すぎるのがまた怖い)

1968年、チェコ作家同盟の援助で自叙伝を出版するため

プラハにやって来たジェラールは

ソ連ワルシャワ条約機構軍によるチェコ侵攻を目撃



レーニンよ目を醒ませ、奴らは発狂した」の文字で

映画は終わりを告げます

同じドキュメンタリー風サスペンスタッチでも

面白さもエンタメ性も「Z」(1969)のほうが高い

ただ本作では、映画の役目とは歴史の記録をとどめること

過去の過ちを繰り返さないためには真実を風化させてはいけないという

コスタ=ガヴラスの熱意とメッセージを感じました





【解説】allcinema より

この作品は、51年にチェコスロヴァキアで起こったスランスキー事件を体験した夫妻の共著『告白』を映画化したものだ。スランスキー事件とは、当時チェコ共産党の高官だったアルトゥール・ロンドンほか14名が突然逮捕され、22カ月間監禁拷問され、身に覚えのない反逆行為の“自白”を強要されたあげく、裁判によって断罪された事件である。妻リーズは、突然の夫の失踪に何とか安否を尋ね廻るが、全く解らなかった。やがて突然に職場を追われ、事件が公表されると、党の為に公式に夫を否定しなければならなくなる……。
 この急進的なスターリン主義者たちの策謀によって“自白”にサインした11名は死刑、アルトゥールを含めわずか3名が死刑を免れ終身刑となった。アルトゥールの名誉が回復されたのは、4年後の56年のことである。主人公の夫妻を実生活でも夫婦であるイヴ・モンタン(役名ではジェラール)とシモーヌ・シニョレが演じた。製作に当たっては“プラハの春”の時期にあたりチェコとの合作になる予定だったが、68年に多くの映画人の亡命者を出したことでも知られる動乱で断念を余儀なくされ、映画のエピローグとしてソ連の軍事介入の痛烈な批判が付け加えられた。なお、スチル写真はクリス・マルケルが撮影。コスタ=ガブラスの“伝統的な娯楽映画のテクニックを偽装し、利用しつつ、その政治性を大衆に到達させる試み”は、ここでも絶大な効果をあげている。

モスクワは涙を信じない(1979)

「ずっと待っていた」
「たった8日間じゃないか」
「いえ、ずっと待っていたのよ」

 

原題も「МОСКВА СЛЕЗ АЛ НЕ ВЕРИТ」(モスクワは涙を信じない)

1985年、レーガン大統領がゴルバチョフ大統領と初めて会う前に

「ロシアの魂」を理解しようと、この作品を少なくとも8回鑑賞したと

インタビューで答えたそうですが

他にもソビエト映画の秀作はたくさんあるんだから(笑)

単にハマっただけとしか思えない(笑)

見やすく、わかりやすく、ユーモアがある

成瀬己喜男や木下恵介など、女性がテーマという

日本映画の(たぶん)影響も受けていて共感もてます

 

disc1、1958

モスクワの職業女子寮の仲良しルームメイト3人組

カテリーナは化学の国家試験合格を目指しながら工場で働き

機械が壊れれば自分で修理する腕前、だけど恋愛には奥手

パン屋で働くリュドミラは、行動力があり華やか

女の幸福は結婚相手(芸術家、芸能人、スポーツ選手、科学者)で

決まると信じていて、セレブのお嬢様を装い玉の輿を狙っています

アントニーナは建設現場の佐官工で真面目なタイプ

同じ職場の電気技師、ニコライと結婚を前提に付き合っています

 

ある日カテリーナが大学教授の叔父のマンションの留守番を頼まれると

リュドミラはカテリーナを教授の娘に仕立て上げ

知り合った男たちをマンションに招待します

その中のひとりがオスタンキノ・テレビセンター

(ロシアの報道機関組織でヨーロッバ最大の放送センター)のカメラマンで

ハンサムなルドルフでした

男に免疫のないカテリーナはすぐにルドルフを好きになってしまいます

ルドルフのお母さんは教授の娘で高級マンションに住むカテリーナを

暖かくおもてなししてくれました

シャンパンに魚料理、だけどカテリーナはテーブルマナーがわからない

魚は食べれないの

ひとつの嘘が、次の嘘を生みだします

真実を伝えたい、だけど引き返せない

でもこんなにも優しくて、私を愛してくれる彼なら

わかってくれるはず

カテリーナはルドルフに求められるまま身体を許してしまいます

そして一度のセックスで妊娠してしまう

しかも工場にテレビクルーが取材に来て

「労働のヒロイン」として取材を受けることになったカテリーナ

カメラマンはルドルフ

嘘はばれ、カテリーナが工婦だと知ったルドルフは

「病院に連れて行って」と願うカテリーナを無視して去ってしまいます

代わりに手切れ金を持ってやって来たのはルドルフの母親

カテリーナは「働いていますから」と母親を追い返します

(私なら貰うがな)

アントニーナはニコライとの結婚式で皆からの祝福どころでない

カテリーナの話に耳がダンボ(笑)

そうしてカテリーナはアントニーナとリュドミラに見守られながら

女の子を出産、アレクサンドリアと名付けます

仕事と育児と勉強で疲れ果てて寝る毎日

目覚ましだけは忘れずに・・

この目覚まし時計の使い方がうまいですね

これひとつだけでタイム・マシーン(笑)



disc2、1978

娘のアレクサンドリアは美しく成長し、音楽が大好きな大学生

カテリーナは化学プラントの責任者で工場長に昇格

出会い系(社会主義国家だから公務か)の顧問も勤めることになります

どこの国も結婚や出産率の低下による生産性の低下は社会問題なんですね

しかも戦争ばかりしている国は、男性の数が圧倒的に少ない

安定した職業で経済力のある男はもっと少ない

カテリーナも出会いを求めていたのでしょうが

妻子ある男性と不倫(いい男はみんな結婚してる)

だけど所詮自分は遊びで、家族が大切なことを知ります

リュドミラはアイスホッケーのスター選手セルゲイと結婚しましたが

セルゲイがアルコールで身を滅ぼし7年前に離婚

それでも金を無心にやって来るセルゲイに身銭を渡してしまう(腐れ縁)

だけど男狩りハンターの目は40歳になっても健在(笑)

職場のクリーニング店に将校さんがくれば熱い眼差しでアイコンタクト

相手に奥さんがいようがかまいません

アントニーナは今も建設現場で働きながら

夫の両親の農場で三人の息子たちと暮らしています

カテリーナとリュドミラもときどきやって来て農場を手伝ったり

とれた野菜で料理を作っています

休日は田舎でのんびりが理想は、万国共通ですね(笑)

そこでカテリーナは「靴の汚い男は嫌」という話をするのですが

その後、通勤途中の列車の向かいに座ったのが靴の汚い男

カテリーナの一瞬の表情に気付いた男は

「その目は刑事か、男を探る女の目」と彼女の分析を始めます

ゴーシャと名乗るその男は、カテリーナをタクシーで駅から家まで送り

次の日もやって来て、疲れているというカテリーナの代わりに料理

しかもいきなりプロポーズ

さすがに早いか、返事は5日待とう

明日はピクニック行くぞ

彼の職場の同僚もやって来てバーベキュー

娘のアレクサンドリアの元カレとのトラブルは喧嘩で解決

カテリーナ「もうそんなことしないで」(怒)

ゴーシャ「俺に命令するな」(怒)

アレクサンドリアが席を外すと

「娘の前では言わないでくれ」(願)

常に男の立場は女の上でなくてはいけない

時代遅れで男尊女子な男

だけど、散々男で苦い経験をしたはずのバリキャリが

意外とこういう強引な男に弱いんですね

 

本当はずっと、誰かにリードしてもらいたかったのです

自分より強い男を探していたのです

そんなとき、テレビの取材で20年ぶりにルドルフと再会

出世したカテリーナを見て逃がした魚が大きかったことに気付いた彼は

娘に会いたい言い出します

なんていう糞(本人は無意識だろうけど)

そうして突然ディナータイムに花束とプレゼントを持って来る

アレクサンドリアに父親だと説明するカテリーナ

「パパは死んだのでは」とアレクサンドリア

「ごゆっくり」と部屋を出て行ってしまうゴーシャ

 

テレビ局に勤めるルドルフと工場長のカテリーナ

格下の工員、ただの技師など出る幕はない

ゴーシャはたぶん戻らない

悲しくて悲しくて泣いてしまうカテリーナ

しかも駆け付けたリュドミラとアントニーナに

カテリーナはゴーシャの苗字も住所も知らないという

そこでゴーシャを探すことを買って出たのは

アントニーナの夫ニコライでした(ゴーシャと同じ本業は技師)

ゴーシャは本で埋もれた質素な部屋で

干し鱈を肴に酒を飲んでいました

この無機質で女っ気のなさがまたいい(笑)

ニコライも鱈で酒を飲む(一緒に酒を飲めば友だちの文化)

ニコライとわかりあえたゴーシャはカテリーナの元に戻ってきます

リュドミラにも嬉しい知らせがありました

元夫のセルゲイがアルコールを断ち、昔のように素敵なスーツ姿で

アイスホッケー界に呼ばれたことを知らせに来たのです

どんな強い女でも、男を本気で好きになってしまえば

鋼鉄のような心もメロメロ、過ちを犯してしまう

モスクワは涙を信じない(泣いたところで誰も助けてくれない)

でも苦労を乗りこえれば、努力さえすれば

きっと幸せは待っているはず

そうやって女たちは生きてきたんだな



これがソ連時代のロマコメの傑作

女性の友情を描いた先駆けでもあります

53アカデミー賞では本命黒澤明の「影武者」を押さえ

外国語映画賞を受賞しました



【解説】KINENOTEより

それぞれに夢と希望を抱いてモスクワに出てきた三人の娘の20年に亘る愛と苦悩、友情を描く。監督はウラジーミル・メニショフ、脚本はワレンチン・チェルヌィフ、撮影はイーゴリ・スラブネビッチ、音楽はセルゲイ・ニキーチンが各々担当。出演はヴェーラ・アレントワ、アレクセイ・バターロフ、イリーナ・ムラヴィヨワ、ライサ・リャザノワ、ナターリヤ・ワヴィーロワ、ユーリー・バシリエフ、ボリス・スモルチコフ、アレクザンドル・ファチューシンなど。

1958年モスクワ。カテリーナ(ヴェーラ・アレントワ)、リュドミーラ(イリーナ・ムラヴィヨワ)、アントニーナ(ライサ・リャザノワ)の三人は、同じ女子労働者寮に住む親友同士。カテリーナは専門学校の資格獲得をめざして学ぶ努力家。リュドミーラは、明るく積極的な性格で、有名人や芸術家に出会って成り上がろうと考えている。アントニーナは良妻賢母型の控え目な人柄、同じ職場のニコライ(ボリス・スモルチコフ)との結婚は時間の問題だった。そんなある日、大学教授の伯父の留守番を頼まれたカテリーナをリュドミーラが訪れ、カテリーナを大学教授の娘に仕たて、ハイ・レベルの男性たちを家に招いた。それがきっかけでリュドミーラはアイス・ホッケー選手グーリン(アレクザンドル・ファチューシン)と知り合い、カテリーナもTVカメラマンのラチコフ(ユーリー・バシリエフ)と愛し合うようになった。しかし、カテリーナが女性調整工であることを知ったラチコフは、彼女のもとを去った。カテリーナはすでに妊娠しており、未婚の母となってひとり工場で働きながら子供を育てた。それから18年、カテリーナはモスクワの大きな工場の工場長にまでなっており、娘アレクサンドラ(ナターリヤ・ワヴィーロワ)も美しく成長していた。一方、リュドミーラは、アルコール中毒の夫グーリンとは離婚して結婚相談所に通っていた。そして、アントニーナはニコライや子供たちと幸福に暮らしていた。ある日、カテリーナは、ゴーシャ(アレクセイ・バターロフ)という不思議な魅力をもつ中年の仕上工に出会い、プロポーズされる。初めての安らぎに満ちた愛を受けるカテリーナ。アレクサンドラともすぐ親しくなるゴーシャだったが、実の父ラチコフの出現で彼は姿を消した。そしてニコライたちが必死でゴーシャを探して彼を連れ戻した。涙ながらに、カテリーナは言うのだった。“一生涯あなたを探していたような気がする”と……。

忘れられた人々(1950)

原題は「Los olvidados」 (忘れられたもの)

ルイス・ブニュエルの作品の中でも評価の高い映画

メキシコでは公開時3日で打ち切りになったそうですが

4カンヌ国際映画祭では監督賞を受賞

2003にはユネスコの「世界の記憶」に登録

舞台はメキシコシティのスラム街

感化院から脱走してきハイポ18~19歳くらい?)

少年たちを集め盗みを働きます

しかも彼らが狙うのは自分たちより弱者である

盲目の老人や、足のない障害者

生きていくために情けも容赦もないんですね

さらにハイポは子分のペドロを使って

(自分を密告したと思い込んでいる)働き者のフリアンに復讐しに行き

勢い余って殴り殺してしまいます

そして「誰にも言うな」とフリアンから盗んだ金を半分ペドロに渡し

ペドロを共犯者にしてしまうのです

ハイポは本当に糞なんですね

でも考えてみれば両親もなく、正しいことを教える人間は誰ひとりいない

まわりの大人も糞しかいないのです

盲目の老人カルメロは父親に捨てられたヒート「小さな目」を助けたように見えて

実は自分の介護人としてこき使っている

おまけにミルクを届けてくれる少女メーチェに

2ペソあげるから」とキスを強要したりします

遊園地で薄給で子どもたちを働かせる支配人

(メリーゴーラウンドが人力・・)

夜の繁華街でペドロにお金を見せ近づく中年男

ペドロは妹や弟の面倒も見る心の優しい子

でも母親は彼を拒絶し冷たく当たります

その夜フリアンを殺した悪夢を見たペドロは

良い子になる誓いを立て、鍛冶屋で見習いの仕事をすることにします

しかし親方が出かけている最中にハイポが来てナイフを盗み

容疑がかけられてしまう

こんな悪ガキ、感化院に入れてくれと警察に頼む母親

(証拠がないので)農業訓練所に入れられることになったペドロ

校長先生が息子にやさしくできないかと訊ねると

母親は「父親のわからない子をどうして愛せますか」と答えるのでした

ペドロを産んだのは14歳(妊娠は13歳か)

夫が死んだのは5年前(でも1歳の赤ちゃんがいる)

生きていくためか、それとも女の性か

ハイポとも簡単に関係を持ってしまう

ブニュエルお得意の貧困と絶望のサイクルですが

単にストイックな社会派映画ではなく

いかに「脚フェチ」であるかもわかります(笑)

母親に捨てられたと思ったペドロは荒れ

訓練所で卵を投げたり、鶏を殺すわけですが

校長先生が寛容なんですね

ここは刑務所じゃない、出入りも自由だと

ペドロに50ペソ渡し煙草を買って来てくれと頼むのです

そのお金を様子を見に来たハイポに奪われてしまいます

校長先生の信頼を裏切ってしまう

なんとかお金を取り戻さなければ!

メーチェの家の納屋でハイポに殺されるペドロ

カルメロに通報され警察に撃たれるハイポ

ペドロの遺体をラバでゴミ捨て場に運ぶメーチェの爺

ラバとすれ違うペドロを探す母親

失ってはじめて気付いた

息子がどんなにやさしかったかを

老人カルメロは言った

これで一人減った

他の奴らも同じ運命になるべきだ

あいつらは生まれる前に殺されるべきさ、と

この85分の作品に社会の問題のすべてが詰まっていました

世の中がよくならないのは何故なのか

 

弱者の不満や怒りや暴力は、更なる弱者に向かっていき

誰も強者と戦おうとしないからです

 

 

 

【解説】allcinemaより

娯楽の核は残したメキシコ時代のブニュエルの諸作品と較べれば、本編や「ナサリン」はより根源的で、彼の代表的欲求により従って作られたものと言えるだろう。冒頭の解説--NY、ロンドン、パリの景観が映り、全世界で少年非行が社会問題に云々と入る--など煽情めくが、後はひたすら冷徹にメキシコシティのスラムの現状が語られる。ペドロは兄貴分のハイボの影響を受けて共に盲目の大道芸人を襲うが、まだそれほどワルでもなく、母親に邪慳にされながら幼い弟妹の面倒を見る健気な少年だ。なのに、ハイボは自分が感化院に入れられたのは彼の密告のせいと思い込む。彼はペドロの親友フリアンを撲殺し、ペドロは口をつぐむと約束させられた。その夜、ペドロは夢をみる。親友の死体、白い鳩、やさしい母……。しかし、母からもらった肉を奪おうとするハイボにペドロはうなされて目覚める。彼は夢で母に誓った通り、真面目に働こうと鍛冶屋の見習いとなるが、そこへもハイボが現われ、ペドロに隠れてナイフを盗み、これが彼のせいとなって感化院送りに。無実のペドロは反抗的だが、進歩的と自負する院長は試みに彼を使いに出す。しかし、またハイボが、預かった金を奪って消えた。追うペドロは遂にハイボの秘密を仲間に明かすが……。救いのない結末に向かって一気呵成に映画は動く。まるで獣のように。疫病神ハイボを少年の母が誘惑する背徳のエロス。そして、悪夢の中、ハイスピードで飛ぶ鶏のシュールなイメージ。安易な解釈を拒絶するハダカの映画には、観る者も心を裸にして触れ合わなければ……。

ダンディー少佐(1965)

お待たせしました(笑)

ダンディー・ギドラさんからDVDプレゼント

その名も「Major Dundee

136分修復版でございます

 

公開時は酷評、アメリカでは大コケしたそうですが

(日本ではヘストン人気でそれなりにヒット)

2005年、いくつかの復元シーンを加えた

拡張バージョンのDVDが発売され再評価

なんと音声解説が映画と同じくらい長い(笑)

なぜ本作が失敗したか

脚本の未完成、ロケ地選びの失敗、とってつけたようなラブシーン

プロデューサーのジェリー・ブレスラーと対立

(あげくの果て編集権まで取り上げられてしまう)

一方でキャラクターの際立つ個性、戦場のリアリティ

美しい視覚的質感、主演者から衣装選びに至るまでが

丁寧に語られています

いまやほとんどの映画が配信されるようになりましたが

DVDの凄いところは、映画に関わっている人間にしかわからない

映像特典を見れるところ

これも4丁目シスターズ&ブラザーズにとって

ギドラさんのおかげ、本当にありがとうございます

南北戦争末期

ある村がチャリバ酋長率いるアパッチ族に襲われ惨殺

牧場の子どもたちが誘拐されます

他の西部劇でも描かれていますが、ネイティブ・アメリカンの人々は

子どもは神からの授かりもの、という教えがあるんですね

なので敵の子であっても、自分たちの子と同じように育てるわけなんです

そこでチャリバを撃退し、子どもたちを救うため雇われたのが

北軍の捕虜収容所隊長、ダンディー少佐でした

しかし騎兵隊はほぼ全滅、ダンディー少佐は囚人や

タイリーン大尉率いる南軍の捕虜から志願兵をつのることにします

序盤はかなりいいセンいっています(笑)

北軍と南軍の兵が協働してアパッチを討伐(とうばつ)することが目的なのに

お互い反目しあい、脱走兵まで出てしまう

それをいちいち収めるのがダンディー少佐ではなくタイリーン大尉

(結局最後までカッコいいシーンはタイリーン大尉がもっていく 笑)

 

だけど救出が目的だったはずの子どもたちがあっさり保護

それでもチャリバをやっつけようと意気込んだのはいいものの

ダンディーフランス軍を襲い、未亡人テレサと湖でイチャ

がアパッチに見つかり太ももに矢を打ち込まれてしまいます

しかも村で手当てを受けると、看護してくれた女を口説き

そこに本命のテレサがやって来て女と鉢合わせ

そこからダンディー、騎兵隊には戻らずアルコールに溺れる日々

ダンディーと再会したタイリーンは殴り合い

ダンディーはやっと目が醒めるのでした

 

 

ンディー少佐(チャールトン・ヘストン

ヘストンさまの軍服、キタ━(゚∀゚)━!

予算超過を理由にペキンパーが解雇寸前になったとき

撮影存続のためにはギャラ(20万ドル)はいらん

制作費に回すよう依頼したそうな

全米ライフル協会NRA)の会長に就任したことで批判もありましたが

銃が悪いわけではない、使う人間の問題

 

サミュエル・ポッツ(ジェームズ・コバーン

片腕の斥候(せっこう)

障害者の美学を描くのもペキンパーはうまい

 

グラハム中尉(ジム・ハットン)

大砲に情熱を持つ男、不器用だけどチャーミング

 

ゴメス軍曹(マリオ・アドルフ)

ダンディーの右腕

 

テレサ(センタ・バーガー)

オーストリア人医師の未亡人

夫が亡くなった後も現地の人々の医療に尽くしている

当時センタ・バーガーはヨーロッパで絶大な人気で、ヘストンとのラブシーンを

(西欧での興行のため)ペキンパー強要される

 

ベンジャミン・プリアム(ダブ・テイラー)

留置所から採用された馬泥棒

意外とこういう奴が(仕事はともかく)真面目だったりする

 

イソップ(ブロック・ピーターズ)

黒人兵士グループのリーダー

 

ダールストロム牧師(RG・アームストロング)

格闘系の爺さん牧師

こういうギャップのあるキャラってみんな好きよね(笑)

 

ティム・ライアン(マイケル・アンダーソン・ジュニア)

生き残りのラッパ兵、本作の語りて

フランス兵に従属された村でリンダと知り合い

チェリーボーイを捧げ結婚を誓う

 

リンダ(ベゴナ・パラシオス

ラッパ兵に恋する若い女

現実ではペキンパーと結婚し、ひとり娘を授かったものの

その後20年にわたり腐れ縁で別れと復縁を繰り返したことで有名

 

 

タイリーン大尉(リチャード・ハリス

王族とか司祭のイメージが強いリチャード・ハリスだけど

タイリーン大尉いちばんカッコいいぜ(笑)

 

チルム軍曹(ベン・ジョンソン

タイリーン大尉の部下

 

OW・ハドリー(ウォーレン・オーツ

タイリーン大尉の部下のひとり、脱走しタイリーンに処刑される

 

アーサー・ハドリー( L.Q.ジョーンズ アーサー)

タイリーン大尉の部下のひとり、OWの兄

 

 

アパッチとの戦いで、あっけなくチャリバを倒したのは

なんとラッパ兵(笑)

クライマックスはフランス軍との河を挟んだ戦闘

ストーリー的には単純に北軍と南軍の確執と

アパッチとの戦い絞ったほうがヨカッタのでしょうが

いらないと思えるシーンでも、それだけ見れば凄すぎる

(大量の馬をどうやって激しく倒しているの)

カットできなかった理由がわかるというもの

 

そしてこの未完の傑作が、滅びの美学

ワイルドバンチ」(1969)に繋がることになります

 

 

 

【解説】KINENOTEより

ハリー・ジュリアン・フィンクの原作を、彼と「昼下りの決闘」のサム・ペキンパー、オスカー・ソウルが共同で脚色、サム・ペキンパーが監督した西部劇。撮影は「野望の系列」のサム・リーヴィット、音楽はダニエル・アンフィシアトロフ、主題曲“ダンディー少佐のマーチ”をミッチ・ミラー合唱団が担当している。出演は「北京の55日」のチャールトン・ヘストン、「戦艦バウンティ」のリチャード・ハリスのほかにジム・ハットン、ジェームズ・コバーンマイケル・アンダーソン・ジュニアなど。製作はジェリー・ブレスラー。

1864年、第五騎兵隊B中隊は伝令に出たライアンを残して、狂暴なアパッチの酋長チャリバの奇襲を受けて全滅した。本部ベンリン砦では、ダンディー少佐(チャールトン・ヘストン)が腹心の部下グレアム中尉と、チャリバ討伐の志願兵を募っていた。その中には南軍の捕虜や脱走兵もまじっていた。捕虜の中のタイリーン大尉(リチャード・ハリス)とダンディー士官学校の同期生であり、親友だったが、その友情も今は憎しみに変わっていた。しかし大尉は、チャリバを討伐するまでという約束で隊に加わった。チャリバがメキシコの奥地に入ったという報告を受けたダンディーは出発した。しかし、戦闘で3分の1の隊員を失い、その上チャリバを逃してしまった。その当時メキシコでは、フランス軍とファレス派の自由メキシコ軍が戦っていた。ダンディはフランス軍を襲い、武器や馬を奪った。だがその日から騎兵隊は、フランス軍の大部隊の追撃を受けることになった。ダンディーは足を負傷し、酒びたりの毎日だったが、彼を救ったのはタイリーンだった。タイリーンは約束を果たしたら、この手でダンディーを殺すと言った。リオ・ブラボー近くの谷で、ついにチャリバを倒した。ダンディーとタイリーンが対決した時、フランス軍が追ってきた。ダンディーは、リオ・グランデへの退却を命じた。河をわたればテキサスだが、そこにも敵が待ちうけていた。ダンディーとタイリーンは再び手を結び、フランス軍と戦った。河は血に染まり、星条旗フランス軍に奪われた。タイリーンは旗を奪い返した。しかし彼が高々と星条旗をかかげた時、敵弾が彼の胸を射た。そして背後に迫った敵の只中に単身躍りこみ、壮烈な戦死をとげた。生き残った11名の男たちは、星条旗と南軍の旗をかかげテキサスへと向かった。