ぶあいそうな手紙(2019)

原題は「AOS OLHOS DE ERNESTO」(エルネストの目に

気難しくて孤独な老人が、隣人との交流によって心を開いていく・・

よくある話なんですが

(不愛想なのは手紙ではなくお爺ちゃん 笑)

ちょっと捻ったラストが微笑ましく、優しい気持ちになれる

あまり見る機会はないですが、ブラジル映画には秀作が多いですね

挿入歌の「ドレス一枚と愛ひとつ」(カエターノ・ヴェローゾ)もGOOD

ブラジル南部のポルト・アレグレでひとり暮らしをしている

ウルグアイ人で78歳になるエルネストは目が悪く

サンパウロに住むひとり息子はアパートを売り

一緒に暮らそうといいますが、エルネストは頑なに反対します

 

ブラジルの医療制度はどうなっているのかわからないけど

白内障だと思うんですよね

息子には強気なことを言ったけど正直ほとんど見えない

週に一度ヘルパーのクリスティナが掃除などの家事をしてくれます

毎日、新聞を(自分が読んでから)届けてくれる

友人で隣の部屋のハビエルが、旧友のオラシオの妻ルシアから

手紙が来ていることを教えてくれました

 

エルネストがハビエルに代読を頼むと

手紙はオラシオが死んだという知らせでした

ハビエルがオラシオが死んだならルシアと一緒になるチャンスだと

エルネストをからかいます

その短いシーンで、エルネストがルシアという女性に思いを寄せていたこと

ルシアはエルネストではなく親友のオラシオと結婚したことがわかります

エルネストは親友の死をふざけるなと怒り

ハビエルから手紙をとりあげますが

どうしても続きが知りたい

 

でもいくら自分で読もうとしても白くてぼんやり

いきつけのカフェのウェイトレスに頼むと

ウルグアイポルトガル語はわからないという

そこで同じアパートの住人の女性の姪で

入院中犬の散歩を頼まれたというビアに代読を頼むことにしました

(エルネストの落としたラザニアを犬が食べてしまい知り合う)

 

ビアはずうずうしく、勝手に家にあがりこんでくるし

おまけに「ドラゴンタトゥーの女」だけど(笑)

エルネストはビアの朗読をとても気に入りました

クリスティナはエルネストが

ビアに騙されているのではないかと心配です

案の定エルネストの留守中に部屋に忍び込み彼のお気に入りの本を盗み

本が欲しかったのか、と安心したのもつかの間(笑)

結局お金も盗む

不審に思い戻ってきたエルネストと鉢合わせ、ピアノの影に隠れます

 

そこでエルネストは息子に電話をかけます

朗読を頼むのに女の子を雇いたいのだけどどうだろう

でもこれエア電話なんですね

エルネストはビアが盗みに入ったことも

お金がなくなったことにも気付いていたのです

彼女はいなくなり、姪というのも嘘で

入院中勝手に寝泊まりし冷凍庫の食料品を食べて

クビにしたのよ、という犬の飼い主

 

しかしビアひょっこり姿を現わし、お金も戻していました

エルネストはビアに本をプレゼントし、部屋も貸すことにします

目が見えないからこそわかる、彼女の誠実さ

(目が見えないのにビアの顔のあざにはすぐ気付く 笑) 

そうしてビアの代筆でルシアとの文通が始まり

エルネストとビアの絆は強いものになっていきます

親切心でクビになったクリスティナは可哀そうだけど

 

そんな時ハビエルの奥さんが急死してしまい

ハビエルは妻を埋葬するため故郷のブエノスアイレスに行き

そのまま娘のいるブエノスアイレスで一緒に暮らすといいます

そしてエルネストに、ビアはまだ若く未来があると伝えます

それは「死を受け入れる準備をしろ」ということ(たぶん)

エルネストは荷物をまとめ部屋を片付け

ビアに「最後の手紙を書いてほしい」と頼みました

それは息子に宛てた、いままで言えなかった深い愛情と

「・・・ウルグアイへ向かう ルシアの元へ

というものでした

 

ビアにアパートの鍵(と、たぶん男との手切れ金)を渡し

タクシーに乗り込むエルネスト

ルシアは突然やってきたエルネストに驚きながらも

彼を暖かく迎え入れるのでした

孤独な老人が本当に欲しいのは話し相手なんだね

そしてささやかな優しさ

相手が愛する人なら、なお嬉しい

年寄りにだって、希望があっていい

 

うんうん、息子の世話になるのは

もう少し先でもいいよ(笑)

 

最近は忘れかけている「困ってる人を助る」という気持ちを

思い出させてくれる作品です

 

 

【解説】allcinema より

視力を失いつつある頑固な独居老人と、ひょんなことから手紙の代読を頼まれた若い娘との奇妙な交流の行方を描いたハートウォーミング・ドラマ。主演は「ウィスキー」のホルヘ・ボラーニ、共演にガブリエラ・ポエステル、ホルヘ・デリア、ジュリオ・アンドラーヂ。監督は「世界が終わりを告げる前に」のアナ・ルイーザ・アゼヴェード。
 ブラジル南部の街、ポルトアレグレウルグアイからこの地にやって来て46年になる78歳のエルネスト。妻に先立たれ一人暮らしをしている彼は、もともと頑固な上、今では目がほとんど見えなくなってしまい、すっかり投げやりな日々を送っていた。そんなある日、一通の手紙が届く。差出人はウルグアイ時代の友人の妻。しかし文字が見えず途方に暮れたエルネストは、偶然知り合った23歳のビアに代読を頼むことに。これがきっかけでビアはエルネストの部屋に出入りするようになり、互いに孤独を抱えた2人の間にはいつしか奇妙な絆が芽生えていくのだったが…。

コーダ あいのうた(2019)

原題も「CODA

2014年のフランス映画「エール!」のリメイクで

Codaとは「 Child of Deaf(ろう者) Adult」のこと

94アカデミー賞では作品賞、脚色賞、助演男優賞3部門で受賞

動画配信サービス(Apple TV+映画の受賞は初めて

 

ろう家族のなかでたったひとり健聴者に生まれた女子高校生

家族の耳代わりとなり、手話通訳する毎日を描いています

(今でいうヤング・ケアラー)

職業が酪農から漁業へ、きょうだいが弟から兄になりますが

プロットはほぼ同じ

ただオリジナルではデュエットの相方への恋心や

合唱の先生、女友達や選挙にもフォーカスしますが

こちらはあくまで家族がメインで、性的コメディはやや控えめ

(父親の下品な手話はこっちが上だけど 笑)

よかったところは選曲のセンスの良さ

デヴィッド・ボウイの「スターマン(Starman) 」

ジョニ・ミッチェル「青春の光と影Both Sides, Now)」

ザ・クラッシュ「「アイ・フォウト・ザ・ロウ I Fought the Law

誰でも一度は聞いたことがある名曲ですし

ヒロインの気持ちをあらわすのにマッチしていたと思います

 

マサチューセッツ州の港町でトロール船の漁業を営むロッシ一家

明け方の海、漁師の女の子ルビーの力強い歌声が響きます

ツカミはばっちり(笑)

でも釣った魚を売るためには

猟師の仕事のほぼすべてを手話通訳しなければいけません

新学期が始まりますが、学校の授業は居眠り

クラスメイトから馬鹿にされているのを肌で感じています

部活を決めなければならない日

気になっていたマイルズが合唱部に入ることを知り

自分も入部を決めるのでした

だけど過去に「言葉がヘン」と言われた経験から

恥ずかしくて人前で歌えない

ルビーの声の良さに気付いた顧問のV先生は

発表会に向けマイルズデュエットを組ませます

さらに(マイルズも目指しているボストンにある

バークリー音楽大学進学するよう勧めるのでした

お金がないというルビーに奨学金制度がある

さらにV先生の家で個人レッスンを受けることになります

家族は歌を勉強することを理解してくれません

ルビーがいなくなったら家族はどうなると責めます

だけど家族のために犠牲になりたくない

音楽を諦めたくない

 

兄のレオ はそんなルビーに嫉妬しています

兄貴なんだ、男なんだ

ルビーがいなくても魚を売れる、組合だって作れる

なのになぜ両親はルビーばかり頼りにするんだ

「お前が生まれるまで家族は平和だった」

家族の中でもろう者と健聴者の壁ってあるんですね

自分とは違う・・・

 

こんなこと、妹に言うなんて普通じゃ考えられませんが(笑)

健聴者のように曖昧な言い方や雰囲気で気持ちは伝わらない

正直でストレートな言葉で伝えることが大事

両親に反発しルビーがマイルズと崖のある湖に

(仲直りのため)遊びに行った日

政府から漁獲の調査にやってきた女性監視員が

ロッシ家の船に乗り込みます

そして父親と兄レオが耳が聞こえないことを知った女性監視員が通報

警告のサイレンに気付かなかった父親と兄は

海上警察に逮捕されてしまうのです

裁判で父親は漁の資格をはく奪され、多額の反則金を言い渡されます

しかし漁をしないと反則金は支払えない

裁判官は、健聴者を乗船させることを条件に特別に漁を許可します

 

それはルビーが進学を諦めた瞬間でした

私が船に乗るしか、家族を救う方法はない

そしてやって来た発表会、着席するロッシ一家

最初はまわりの空気を読まず、手話会話する両親ですが

次第にルビーの歌声に感動する観客の様子を感じます

レオの彼女も「上手」と褒める

 

クライマックスはルビーとマイルズのデュエットシーン

そこから音のない世界

音楽は知らない、でも手拍子、リズム、振動は感じる

笑顔、涙を流す人も

娘には自分の知らなかった才能があったんだ

これってサイレント映画ではないですけど

音がないからこそわかりあえる世界もあるんですね

 

V先生はルビーをバークリー音楽大学に推薦していました

(遅刻を許さないと言っていたのに謎 笑)

そして発表会の後(翌日が試験日)今からでも間に合うと伝えます

発表会から帰った夜、トラックの荷台にルビーと腰かけたお父さんは

歌ってくれと、ルビーの喉に指をあてます

翌朝、家族に突然起こされたルビーは

ボストンに行って試験を受けようと言われます

でもナビも聞こえない、なんとか試験会場まで辿り着いたものの遅刻

一応試験は受けさせてもらえることになったものの

楽譜を忘れたうえ、緊張して声がでない

だけどどちらもV先生の機転によって助けられます

ルビーは観覧席にいる(無断で入った)家族に気付き

そこからが手話歌、それは審査員の心にも響きます

見事名門校に合格したルビー

 

マイルズが不合格っていうのはリアルよね

親からの期待はわかるけど、普通過ぎて

才能や魅力を見せつけるシーンがない(笑)

ラスト、旅立ち

家族が遠くに行ってしまうときは

いくら幸せを願っていても辛いもの

ルビーは車の窓からI love youI really love you)」の

手話を送るのでした

アメリカ手話には、日本手話と共通するものもいくつかあって

I love youI really love you)」は

日本でも(写真で撮る時のピースサインのように)使われているそうです

 

最強のふたり(2011)もですけど

元がフランス映画だからでしょうか

障害を描いているけど、コミカル

過剰な演出はないけど、感動する

「お涙頂戴」じゃないのに、泣きそうになる

 

誰にでもおススメできる感動作

ただし、PG12指定には間違いないのでご注意を(笑)



【解説】allcinema より

2014年のフランス映画「エール!」を、舞台をアメリカに移してリメイクした感動の家族ドラマ。家族の中でただ一人耳が聞こえるために家族と健聴者の“通訳”係として欠かせない存在だった主人公が、自らの夢と家族のはざまで揺れる葛藤の行方をユーモラスかつ心温まるタッチで綴る。主演はTV「ロック&キー」のエミリア・ジョーンズ。共演に「シング・ストリート 未来へのうた」のフェルディア・ウォルシュ=ピーロ。また主人公の家族は「愛は静けさの中に」のオスカー女優マーリー・マトリンはじめ実際に聴覚に障がいのある俳優たちが演じている。監督は「タルーラ ~彼女たちの事情~」のシアン・ヘダー。
 マサチューセッツ州の海辺の町に暮らす高校生のルビー。両親も兄も耳が聞こえず、家族の中で健聴者は彼女だけ。そのため、手話の通訳や家業である漁業の手伝いなど、家族が日常生活を送るうえでルビーのサポートは不可欠となっていた。そんな中、高校の新学期に合唱クラブに入部したルビー。そこで顧問の先生に歌の才能を見出され、名門音楽大学を目指すよう熱心に勧められる。ルビー自身も歌うことの喜びを知り、初めて夢を抱くようになるのだったが…。

君の名前で僕を呼んで(2017)

原題も「CALL ME BY YOUR NAME

原作はアンドレ・アシマンの同名小説

脚本は純愛映画の匠、ジェームズ・アイヴォリー

 

ひとことで言えばLGBTの(Bバイセクシャルの)少年の

「ひと夏の経験」ものですが

インテリ度はかなり試されます(笑)

1983年、北イタリアのとある避暑地にある別荘

考古学者であるパールマン教授は毎年夏の間

優秀な大学生を招待しています

今年の夏休みやって来たのは、24歳のアメリカ人大学院生

オリヴァー(アーミー・ハマー

 

そしてパールマン教授はアプリコット(果実)の間違った言語的起源を

やってきた学生に解説します

パールマン家はいわゆるハイブローなんですね

(教養や学識があり、趣味がよく高級なさま )

アプリコットの語源の正しい解釈を説明したオリヴァーは

教授から(キリスト教の聖職者からの)祝福のポーズを受けました

パールマン教授の17歳の息子エリオ(ティモシー・シャラメ)は

「毎年学生にやっている」とオリヴァーに教えます

つまり同じレベルの知性の持ち主でないと、受け入れられないということ

 

そういう人を試すようなやり方は、嫌味に思えますが(笑)

価値観、趣味、性格の相性いろいろありますが

知性のレベル(学歴や記憶力の高さではない)の

相性は重要だと思います

性の意識に対する相性も

エリオは読書家で、音楽の才能にも長けている

だからといってガリ勉というわけでなく

夜遊びもするし煙草も吸うし、ガールフレンドもたくさん

生まれながらにして、何もかも恵まれているのですが

何かが違う、物足りなく感じています

 

オリヴァーはユダヤ人を隠すことなく

ダビデの星のネックレスをしている

(後にエリオがしているネックレスは彼から贈られたものだろう)

頭がよくハンサムでマッチョ、自由で楽天

スポーツマンでダンスも上手く女性から注目の的

最初はそんなオリヴァーの言動を不快に感じたものの

エリオはだんだんと彼に惹かれます

オリヴァーに無視されると、とてもつらい

メインシーンのひとつが、エリオがギターでバッハを弾き

その曲をピアノでリスト調に、ブゾーニ調に

若い頃のバッハ調に弾き分けるところ

だけどオリヴァーはアレンジしたものでなく

元のバッハが聞きたいと言う

それって”ありのままの君がいい”って意味ですよね(笑)



これは「カプリッチョ 変ロ長調(最愛の兄の旅立ち)」という曲で

バッハが家族に反対されるなか

宮廷楽長になるためスウェーデンへ旅立った

に宛てて作曲したものだそうです

音楽を追及するため、仕事で成功するため、とわかっているものの

愛する家族が遠い外国に行ってしまい辛い・・という曲

夏が終わればオリヴァーはアメリカに帰ってしまう

エリオの気持ちと、この曲がリンクします

 

だだね、 ティモシー・シャラメくんがあまりに美青年すぎて(笑)

ビョルン・アンドレセン(ベニスに死す)超え

レオナルド・ディカプリオ以来の逸品

アーミー・ハマーが野暮ったいおじさんにか見えません

思春期の少年が、年上の美貌の男性に恋する

というシチュエーションがいまいちしっくりこない(笑)

ダンスパーティでは官能的なダンスを踊るオリヴァー

女友達のキアラが彼を狙ってる

エリオはマルシアとイイ感じ、彼女とセックスもしますが

 

エリオはオリヴァーと自転車で街に出かけたとき

母が古いフランス小説を読んでくれたときの話をします

それは騎士が身分違いの王女に恋をした物語で

騎士はその熱烈な思いを王女に

「話すべきか 命を断つべきか」と苦しむもの

エリオはオリヴァーにキスをする

だけどオリヴァーは、ダメだ、止めようと言う

その時は

 

1983年頃ってちょうどエイズ後天性免疫不全症候群)の原因として

HIVヒト免疫不全ウイルス)が発見された年

それまでも(今でも)同性愛者への差別はあったでしょうが

(最初にエイズが確認されたのが同性愛者の男性だったため)

ゲイ=エイズみたいな偏見があった時だったと思うんです

 

就職や社会活動にも支障があったでしょう

本作は(原作とは違う)エイズが社会問題になる前を設定したそうですが

性的マイノリティ者が平穏な生活を送るためには

同性愛やバイセクシャルを隠し、異性婚する人も多くいたのでしょう

オリヴァーは「大人になれ」と言うけれど

エリオは若く自分の気持ちも、性へのエネルギーも抑えきれない

ついにオリヴァーはエリオを受け入れることにします

 

初めて結ばれた日ふたりは呟く

「君の名前で僕を呼ぶ」「僕の名前で君を呼ぶ」

「エリオ」「オリヴァー」「オリヴァー」「エリオ」

そしてエリオはオリヴァーに、彼がここを発つとき

彼の着ていた水色のシャツが欲しいと言います

君の名前で僕を呼んで」とは愛する人

お互いの大切なものを交換をすること

ふたりはお互いの名前と

初体験(アナルセックス)とシャツを交換したのです

 

でもどんなにふたりの関係を秘密にしていても

周りの人間はおのずと察するもの

マルシアは何日も連絡をくれないエリオから

愛されていないことを知り(引き際も知っている)

両親も17年育てた息子の特性に気付かないわけがない

オリヴァーが研究のためミラノ旅行することになったとき

母親はエリオが同行することを提案します

 

ミラノでふたりは山道を走ったり、泥酔したり、ホテルで愛欲に溺れる

ここでは誰も自分達を知ってる人間はいない

だけど別れの日はやって来る

駅のプラットホームで最後の抱擁

走り去っていく電車に「エリオ」「エリオ」と呼びかけるエリオ

そして母親に「迎えに来てほしい」と電話をかけるのでした

でも本題は実はここからで

この映画はLGBTだけがテーマではなく

マイノリティに一番大切なのは家族の支えだということなんですね

父親が息子に伝える言葉には

「招かれざる客」(1967)スペンサー・トレイシーを思い出しました

 

賢いお前にはわかるだろう
稀有(けう=めったにないこと)で特別な絆が

お前と彼の間には 知性だけではない全てがあった

彼は善良だ、お前も善良だから

今は何も感じたくないだろう

2度と感じたくないかも


こういう話をしたいのは私とではないだろうが

お前は確かな何かを感じた
お前たちは美しい友情を得た
友情以上かもしれない
うらやましく思う

でも、エリオはいつか彼が戻ってくるかも知れないと

きっと心のどこかで信じていた

 

そしてハヌカ祭(クリスマスの時期に行われるユダヤ教の祝祭)

オリヴァーから電話が来ます

来夏結婚する、2年間付き合っていた女性と婚約した

だけど「君との出来事を何ひとつ忘れない」と

 

暖炉の前で静かに涙を流すエリオ

出会った、好きになった

でもふたりの行く道は同じじゃなかった
それだけ

さようなら僕のエリオ(オリヴァー)

さようなら17歳の夏

本当にシャラメくんが美しく、瑞々しい

そして異端な息子を理解しようとし励ます

両親のなんて素敵なこと

そこにあるのは言葉のチカラ

 

それを当時89歳のジェームズ・アイヴォリーが書き上げた

いくつになっても人間は愛を語れるというお手本

ちなみに89歳でのアカデミー賞受賞は

全カテゴリーで最高齢受賞の記録を樹立したそうです

 

ちょっと迷うところもありましたが、切り上げ(笑)

アイヴォリー様に「お気に入り」を献上いたします

 

 

【解説】allcinema より

 アンドレ・アシマンの同名小説を「日の名残り」「モーリス」の名匠ジェームズ・アイヴォリー監督が脚色し、「ミラノ、愛に生きる」「胸騒ぎのシチリア」のルカ・グァダニーノ監督で映画化した青春ラブ・ストーリー。北イタリアの避暑地を舞台に、17歳の男子高校生がアメリカからやって来た24歳の青年相手に生涯忘れることのできない情熱的な恋に落ちていく瑞々しくも切ないひと夏の出来事を、郷愁溢れる筆致で美しく繊細に綴っていく。主演は本作の演技でみごとアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた新星ティモシー・シャラメと「ソーシャル・ネットワーク」「J・エドガー」のアーミー・ハマー。共演にマイケル・スタールバーグ、アミラ・カサール。
 1983年、夏の北イタリア。両親とともに毎年夏休みを過ごしている田舎のヴィラへとやって来た17歳のエリオ。彼はそこで、大学教授である父がインターンとして招いた24歳のアメリカ人大学院生オリヴァーと出会う。自信に溢れて自由奔放なオリヴァーに最初は苛立ちを覚え、つい反発してしまうエリオだったが…。

ベン・ハー Blu-ray 届きました

高知のチャールトン・ヘストン

ギドラさんからサプライズな贈りもの

ベン・ハー」のリマスター版Blu-rayです

なんとギドラさんのブログ

4丁目開設15周年記念のプレゼント企画に当選しました

ウィリアム・ワイラー監督の最高傑作であり

チャールトン・ヘストンの代表作

アカデミー賞では40年近くも

史上最多受賞作品の座を保持してきた名作

それを再び4Kで見れる幸せ

そしてDVDの嬉しいところは映像特典がついているところ

さすがに1959作なのでメイキングは残っていないでしょうが

ヘストン様の音声解説や予告編が見れるようです

これも楽しみ

ギドラさん、ありがとうございました

怪我も早く回復することを祈っています

 

後日ゆっくり堪能して(3時間40分の大作)

後でレビューも書きますね

右ギドラさん

fpdさん

(うそです)

 

反撥(1965)

原題は「REPULSION(嫌悪、拒絶反応)

神経質で潔癖性女性が姉の不倫により精神を病んでいき

妄想に苦しみ人殺しまでしてしまうというもの

 

この映画、どうしてもルイス・ブニュエル「昼顔」1967)と

比べてしまうと思うんですよね

「昼顔」のセブリーヌは少女時代の性的な虐待や反キリスト精神で

劣等感を植え付けられ不感性(性的機能障害)になってしまう

そのため夫とまともな性生活が送れず、罪悪感を抱き

サディスティックな妄想にしたるようになり

(夫のため)不感症を克服しようと売春宿で働くようにります

一方、キャロルはどうして社会生活をうまく送れないのか

男性を受け入れることができないのかわからず苦しんでいる

ひとりか、女性だけでいるのが楽なのに

美人だから歩いているだけで男から口笛を吹かれ、口説かれる

ボーイフレンドはしつこいし(彼自身はやさしく嫌いじゃない)

姉は毎晩男を連れ込み喘ぎ声を出している

幼少期の家族写真に理由が隠されていることはわかるけど

何があったかの説明は一切ない

 

何かしらの障害があったのかも知れないけど、ヒントもない

ヒロインに共感することは難しい

そこが一瞬のカットで想像させるブニュエル

若かりし日のポランスキーとの力の差かな、と

 

でもそれはあくまで私が「反撥」と「昼顔」を見比べた場合で(笑)

「反撥」が見事な作品であることには違いありません

カトリーヌ・ドヌーヴ22歳頃)の

シャンプーの香りまでしそうなブロンドの髪のゆらめき

肉体の感触まで想像させる、美しくて妖しいエロティシズムな画

カメラはギルバート・テイラー

ロンドンのエステサロンで働くキャロルは心ここにあらず

同僚のブリジットや上司が心配しています

ボーイフレンドのコリンがデートに誘ってもうわの空

アパートに帰ると姉のヘレンが恋人のマイケルのために

うさぎ料理を作ろうとしていました

洗面所にあるキャロルのコップにはマイケルの歯ブラシと剃刀

気持ち悪い

キャロルは妻子持ちなのよと責めますがヘレンは聞く耳をもちません

大家から家賃の督促がきているにもかかわらず

ヘレンはキャロルに家賃を預け、彼女の反対を押し切って

マイケルとふたりきりでイタリア旅行に行ってしまいます

壁に亀裂が出来、壁から無数の男の手が現れる幻覚

ベッドでは知らない男にレイプされる夢に苦しめられる

サロンでは客に怪我をさせ、店長から厳しく注意され

ブリジットから(無断欠勤して)三日間どうしてたの、外に出ないと

映画がいいわ、「黄金狂時代」を見たと

チャップリンの真似をしてキャロルを笑わせると

キャロルのバックの中に、ブリジットはうさぎの頭を見ます

ヘレンがマイケルのために料理しようとしていたうさぎ(結局しなかった)

キャロルはその頭部をマイケルの剃刀で切り取って

自分のバックにしまい込んでいたのです

皮を剥いだうさぎの生肉は、たぶん男性器の象徴なのでしょうね

キャロルの性交に対する強い憎しみが感じられる

逆に壁などのひび割れは、自分の傷つけられた心と身体でしょう

(オマエはそういう勘だけは鋭いな 笑)

何も手に付かず、食事もせず、家賃の支払もせず

アパートに引きこもってしまったキャロル

マイケルの妻が電話でまくし立てるので電話のコードも抜いてしまった

心配したコリンが訪ねてきてもドアを開けようとしない

苛立ったコリンがドアを壊しってくると

燭台?で彼を殴り殺しバスタブに沈め

(火事場の馬鹿力ってやつ?)

友達になれたら家賃はタダにしてもいいと襲ってきた大家のことは

ナイフで刺し殺し、ソファーをひっくり返し遺体を隠す

(火事場の馬鹿力ってやつ?その2)

アイロンをかけ(コンセントは入っていない)

ベッドに入るとまたレイプされる夢

 

雨の中、旅行から帰ったヘレンは悲鳴をあげます

壊れたドア、滅茶苦茶な部屋、男の死体

マイケルはベットの下に隠れていた

キャロルを抱きかかえ外に飛び出しました

いち早くキャロルの異変(病気)に気付いていたのは

キャロルが最も嫌っていたマイケルで

最後にキャロルを救ったのもマイケルという皮肉

(姉のほうが早く気付けよ)

ラスト、子どもの頃休暇で訪れたブリュッセルの家族写真のアップ

そこに写っていたのは、カメラに決して目線を合わせることのない

ブロンドの少女でした

おそらくキャロルは精神病院に入り、そこで過ごすでしょう

真っ白で潔癖な世界(エステサロンにも近いものがあった)

それこそが彼女が望んでいた場所

世の中には、ひとりでいることのほうが

好きな人もいるのだから

 

 

【解説】KINENOTEより

ジェラール・ブラッシュの協力を得て「水の中のナイフ」のロマン・ポランスキーがシナリオを執筆、自ら監督した心理ドラマ。撮影は「博士の異常な愛情」のギルバート・テイラー、音楽はチコ・ハミルトンが担当した。出演は、「シェルブールの雨傘」のカトリーヌ・ドヌーヴ、「女ともだち(1956)」のイヴォンヌ・フルノー、他にイアン・ヘンドリー、ジョン・フレーザー、バトリック・ワイマークほか。

キャロル(カトリーヌ・ドヌーヴ)は姉のヘレン(イヴォンヌ・フルノー)とアパート暮しをしている。姉にはマイケルという恋人があり、毎日のようにアパートに連れて来て泊め、神経質で潔癖なキャロルに嫌悪感を抱かせた。キャロルにもコリンという恋人があったが、接吻されただけで身の毛がよだつ。アパートに帰って口をすすがずにいられない。なぜだろう。ある日姉たちは旅行に出かけた。一人残されたキャロルは勤め先でも男の話だけしか聞けない。一人ではアパートの冷蔵庫の食べ物さえ口にしたくないのだ。そしてある晩、男に犯される夢を見た。不思議にもそれを肌身に感じたのである。店も休むようになり、ぼんやり部屋で過すようになった。部屋の壁が大きく裂けたり、粘土のようにやわらかくなるのも彼女の幻覚なのか事実なのかわからない。そんな時、コリンが訪ねて来た。なかば狂っているキャロルにとって、男はただ嫌悪の対象でしかない。彼を殺し浴槽に沈めた。部屋が大きく歪んで見えたりする。夜になるとまた「男」が忍びこんでくる。家主が家賃をとりに来た。家主はネグリジェ一枚で放心したようなキャロルに欲望を感じて迫る。彼女を抱きしめたとき、キャロルはマイケルの残していた剃刀で滅茶苦茶に切りつけ、彼さえ殺した。完全に狂った。それから幾日か。旅行から帰った姉とマイケルは二つの死体と、生ける屍になったキャロルを見出したのだった。

異端の鳥(2019)

原題は「Nabarvené ptáče 」(ペンキを塗られた鳥)

作中で翼に白いペンキを塗った鳥(色違いの鳥)を群れに戻すと

ほかの鳥から一斉に攻撃され殺されてしまうシーンのこと

主人公の少年は死んだ鳥の姿を自分と重ねます

原作は、ポーランドユダヤ人作家イェジー・コシンスキの自叙伝

英題「The Painted Bird」邦題「異端の鳥」(1965

創作、盗作、「ホロコースト産業」の文学的デマだと批判を受け

ポーランドでは発禁になったそうですが

映画は素晴らしいと思います

ただしチェコスロバキアウクライナの合作で

私たちがよく見る戦争映画とは特色が違ううえ

ショッキングなシーンが多く見る人を選びます

「炎628」(1985)が大丈夫な人にはオススメ

(あるいは過度なスプラッタ 笑)

実際「炎628」で主人公の少年を演じたアレクセイ・クラフチェンコが

(大人になっているからわからない 笑)ソ連兵役で出演していますし

一村の虐殺シーンは「炎628」のリスペクトだそうです

(少年が埋められているのは「戦メリ」(1983)のオマージュ)

冒頭ひとりの少年が、大勢の少年に追いかけられ殴られ

少年が可愛がっているオコジョ?を奪い焼き殺します

家に帰るとおばさんのマルタが言う「自業自得だよ」

「ひとりで出かけるんじゃない」

そのおばさんが突然死んでしまった

驚いた少年はランプ落とし家は全焼してしまいます

そこから少年の放浪の旅が始まるわけですが

行く先行く先で、殴られたり、罵声を浴びたり

悪魔だ吸血鬼だと差別されるんですね

欧米の人ならすぐピンとくるのかも知れませんが

なぜ6歳くらいの子どもを、そんなに忌み嫌うのかわからない

だけどその都度助けてくれる大人もいて

女祈とう師「オルガ」

ある村へ辿り着いた少年は村人たちからリンチに遭いますが

「オルガ」は少年を買うと、占術の助手として手伝わせます

ある日少年病気になるとオルガは少年を土に埋め放置します

カラスに狙われた少年でしたが、腕がいいのでしょうね(笑)

少年は見事回復します

しかし川で魚を捕っている時村人から脅かされた少年は

川へ転落し流されてしまうのでした

小麦粉農家の「ミレル」

水車小屋へ流れ着いた少年は、拾われてミレルの家に連れてこられます

ミレルの妻は死んだ息子の服を少年に与え

少年はその家に住まわせてもらうことになりますが

ミレルは若い妻が使用人と浮気をしているのではないかと妻に暴力を振るい

ある日(発情期の)猫を拾ってきたミレルは、交尾する猫の姿を見て

使用人の眼をスプーンでえぐり家から追い出します

少年は逃げ、林で倒れていた使用人にえぐりだされた眼球を渡すのでした

野鳥を狩って売る「レッフ」

少年が鳥かごのたくさんある家を覗いていると

男に「ジプシーか?」「十字を切れるか?」と尋ねられ

少年が十字架のしるしを示すと、面倒を見てくれることになりました

レッフと少年が草原に野鳥を狩りにいくと

鳥かごを持ったルミドラという全裸の女が歩いてきます

レッフはルミドラと愛し合いますが、ルミドラは色情狂でした

村の少年全員と交わったせいで、母親たちに虐殺されてしまいます

ルミドラの死を悲しんだレッフは首吊りをはかり

少年はレッフの自殺を手助けしたあと、鳥たちを逃がすのでした

鍛冶屋の「スミス」

足を怪我した馬に遭遇した少年

馬を介抱するため近くの村に行くと、馬は村人に奪われ殺されてしまいます

少年は親切な鍛冶屋のスミスと妻に引き取られますが

その村はコサック(ウクライナ武装集団、というより山賊)と

ドイツ軍の絶え間ない報復がある場所で

スミスと家族はコサック撲殺され

酒場に連れて行かれた少年は無理やり酒を飲まされ拘束され

コサックからドイツ軍への親善のジェスチャーとして

ドイツ軍の前哨基地へ引き渡されたのでした

なぜ少年が酷い差別を受けているのか

少年はユダヤ人だったのです

(原作では少年を「ユダヤ人」とする描写はないそう)

そして当時のコサックはソ連政権下で弾圧されており

親衛隊に加担し共産国と戦った集団もいたそうです

老兵ハンス

ドイツ軍将校が引き渡された少年を処刑する志願者を募ると

ハンスは少年を線路の上歩かせ終着点まで辿り着きます

すると顎で「行け」と合図し

空へ向かって2銃弾を撃つのでした

司祭

ハンスに命を救われた少年は

輸送される列車から飛び降り、逃げ出すユダヤ人たちを目撃します

しかし親衛隊に次々と射殺され

その死体から衣服や靴を剥ぎ取る地元の住民たち

少年も瀕死の少年から靴を奪い

遺体が持っていた鞄からパンを見つけて食べる

が、何者かによって殴られ気絶

ユダヤ人の老人と共に町に運ばれ住民から袋叩きにあうものの

兵士の機嫌を取るため靴磨き、なんとか銃殺を逃れ

心優しい司祭に引き取られます

しかし司祭は重い病に冒されており

敬虔な信者であるガルボ少年を預かる事になります

 

大工の「ガルボス」

ガルボスが少年を引き取ったのにはわけがありました

彼の裏の顔はペドフィリアで(愛犬の名前はユダ)

少年を性奴隷として扱います

少年の異変に気付いた司祭は再び少年を教会に通わせることにしますが

そのことでガルボスから折檻を受けた少年は

彼をトーチカのある穴に誘いこみ、鼠に食い殺させるのでした

 

平穏もつかの間、司祭が死亡し

新しい司祭のミサで教典をひっくり返してしまうというミス

少年は信者たちによって教会を追い出され

肥溜めに投げ込まれてしまいます

「ラビーナ」

雪の中を彷徨っていた少年は誤って氷の湖に落ちてしまいます

気が付くと病気の夫(老人)と暮らすラビーナという女性に助けられ

間もなく夫が死ぬと(ラビーナが殺したと思われる)

彼女は少年を可愛がりだします

少年も彼女のことが好きになりますが

そのような行為ができる年齢に達してないんですね

(遭難したのは雪の中なのに、助けられた家が冬の季節でない謎 笑)

ビーナは少年を侮蔑し、山羊で性欲を満たす姿を見せます

屈辱に耐えかねた少年は山羊を殺し

切り取った頭部をラビーナの部屋へ投げ込むと、その場を去るのでした

ソ連軍の狙撃兵「ミートカ」

戦争孤児としてロシア軍に保護された少年

将校は兵士のひとり、ミートカに少年の世話を頼みます

ある晩、(女性を求めて外出したと思われる)何人かの兵士が

地元住民によって虐殺されます

夜中に駐屯地を抜け出したミートカについていく少年

高い木の上で夜明けを待つと、ミートカは現れた男たちを狙撃します

忘れるな、やられたら、やりかえす

そしてソ連軍が駐屯地を離れる日、ミートカは少年に拳銃を贈るのでした

「父親」

戦争は終わりを迎え、孤児院に入れられた少年

そこでもやはり理不尽な折檻を受け、市場商人に殴られる

でももう6歳の頃のやられっぱなしの自分じゃない

少年はミートカの拳銃商人を撃ち殺します

 

孤児院へ戻ると父親が迎えに来ていました

少年を抱きしめて涙を流し、お母さんの待つ家に帰ろうと

宿では少年が好きだったというキャベツのスープを作る

だけど少年の顔には一切の感情はなく

自分を捨てた父親を許ぜない

スープを投げ捨て夜の町を彷徨う

 

翌朝、バスに乗った

そこで疲れてってしまった父親の腕に刺青の番号を見つけます

父親も自分と同じ、過酷な思いをし命がけで助かったんだ

曇った窓ガラスJOSKA(ヨスカ)指でなぞってみる

名無しの少年にさようなら

ヴァーツラフ・マルホウル監督は

2年をかけ原作の映像権獲得

3年をかけて17バージョンのシナリオ
4
年をかけて資金調達

撮影に2年(主演の少年の成長を描くため)費やしたそう

なんと制作期間は13年近く

しかも使用された言語はロシア語とドイツ語の他に

(国や地域が特定されないよう)インタースラーヴィクという人工言語

なんてストイック(笑)

そしてこの映画の凄いところは

本当に怖いのはナチスでもロシア兵でもない

普通の人々の憎悪だということ

しかもそれは貧しさだったり、嫉妬だったり

誰にでも起こりうること

過激なシーンは多いけど、タブーを描いた傑作

「お気に入り」を献上します

 

 

【解説】allcinema より

イェジー・コシンスキの問題作『ペインティッド・バード(異端の鳥)』を「戦場の黙示録」のチェコの俊英ヴァーツラフ・マルホウル監督が映画化した衝撃作。ホロコーストを逃れ、たった一人で田舎に疎開した少年が目の当たりにする差別と暴力の数々と、少年自身を待ち受ける過酷な運命を全編モノクロによる冷徹な筆致で描き出す。主演は新人のペトルコトラール。共演にウド・キアステラン・スカルスガルドハーヴェイ・カイテル
 ホロコーストを逃れ、一人暮らしの叔母を頼って田舎へと疎開してきた少年。しかしその叔母が急死し、身寄りをなくした少年は、生き延びるために一人さまよい歩く。そして行く先々で、共同体の異物として扱われ、壮絶な虐待を受け続けるのだったが…。

ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ(2018)

「時計を贈ってはダメ 永遠という意味だから」
「花火を贈ってはダメ 儚いという意味だから」

 

原題は地球最后的夜晩(地球最後の夜)

英題は「Long Day's Journey Into Night(長い1日の夜への旅)

監督のビー・ガンは1989貴州省凯里(かいり)

苗族ミャオ族自治生まれ

 

なんと映画の存在を知ったのが高校生の時(笑)

山西メディアアカデミー(山西省のメディア教育大学)に

入学するきっかけになったそうです

本作は28歳のとき撮影した長編2作目

若いですね、才能あると思います

(早い成功に押しつぶされて短命になる場合もあるけど)

 

作風はデビッド・リンチウォンカーウァイ風にした感じ

(照明はウォン・カーウァイ組のウォン・チーミン)

簡単に言えば、意味不明だけど

エロくて気障で、ハイセンス(笑)

父の死をきっかけに故郷の凱里へ戻ったルオは

父の遺した、母の名のついたレストランの掛け時計の中から

かって愛した女の写真と、その写真を送った

「タイ・チャオメイ」の連絡先を見つけます

 

ルオは12年前に彼の落ち度でヤクザのヅオに殺されてしまった

幼馴染で親友の白猫のことを思い出しています

そしてヅオの居場所を探すため、ワン・チーウェンという女優の名前を名乗る

ヅオの愛人に会いに行きます

彼女の化粧は母に似ていました

やがてふたりは愛し合うようになります

緑のワンピース

赤い爪

魔法の言葉

長いキス

ザボン

彼女は妊娠したという

心配しないで、もう堕ろしたわ

ヅオが戻って来るから

彼に知れたら貴方が殺されてしまう

 

ふたりの関係はヅオにばれ

ルオはヅオに捕まり吊るされてしまいますが

ワンに助けられ(そそのかされ)映画館でヅオを背後から射殺します

消えてしまった彼女

緑の本だけ残して

タイ・チャオメイという女刑務所に服役していました

ワン・チーウェンの本名はチェン・フイシェンといい

若い頃は仲間と悪さばかりしていました

回る家の物語が書かれた緑の本は彼女が強盗に入った家から盗んだもので

「最愛の人にあげる」と言っていた

そしてチェン・フイシェンが旁海(パンハイ)という村に

いることを教えてくれます

チェン・フイシェンというのも有名な女優の名前(笑)

ルオは知り合いに頼みチェン・フイシェンを探してもらうと

それらしき女が旁海でホテルの経営者と結婚しているという

ルオはホテルにワンを探しに行きますが彼女は居ず

元夫からダンマイ(架空の村)の店で唄っていると教えられます

その店が開くまで映画館で時間を潰そうとするルオ

 

ここでやっとタイトルバック(笑)

劇場版はここから3D映像だそうです

しかも60分ワンカットの長回し(笑)

ここからは、どこまでが現実なのか

過去の記憶なのか、幻か、わからなくなります(笑)

「運命の女性を捜しに夢の中へ」

未練がましい男のファンタジー

 

12歳の白猫はワンが堕胎したこどもと重ねているんでしょうね

(父親のコートのサイズがルオにぴったり)

 

卓球少年(少年時代の白猫)

ロープウエィ

ビリヤード場

ワンに似たカイチンという女

ラケットの回転で空中浮遊

男と駆け落ちしようとする母親

(母親はなぜか白猫の母親と同じ顔)

母親からもらった時計をカイチンに送る

お返しに花火をもらう

カイチンはルオを燃えてしまった部屋に案内します

そこはワンが緑の本を盗んだ部屋で

母が駆け落ちした男と不倫を重ねた部屋でした

 

魔法の言葉

カイチンにキス

回る部屋

消えない線香花火

結局は夢オチかい!なんですけど(笑)

 

ヒロインの緑の衣装や真っ赤な口紅など

ヒッチコックの「めまい」のキム・ノヴァクを意識したことを知ると

「なるほど」ですよね(笑)

ルオは母親と化粧の似ている女を愛し、彼女そっくりの女を好きになる

「めまい」ジェームズ・スチュワート演じる主人公が

キム・ノヴァクにひと目で魅了されますが彼女が死に

失意の中、偶然見かけた彼女そっくりの女性に夢中になるというもの

でも女が戻ってくることはない

本当に自分のことを愛してくれたかどうかもわからない

ただ利用されただけ

だけど夢の中なら愛し合える

魔法の言葉さえ唱えれば

こんな男いやだ

それはともかく(笑)

 

映像にも脚本にも抜群のセンスを持っているので

ビー・ガンの更なる活躍を期待したいと思います

新世代の注目の監督のひとりに間違いありません





【解説】映画.COMより

初監督作「凱里ブルース」で注目を集めた中国の新世代監督ビー・ガンの第2作。自分の過去をめぐって迷宮のような世界をさまようことになる男の旅路を描いた。途中に3Dのワンシークエンスショットが入るという演出があり、物語の中盤で主人公が映画館に入り、現実と記憶と夢が交錯する世界に入り込むと同時に、観客も3Dメガネを装着し、その世界を追体験することができる。父の死をきっかけに、何年も距離を置いていた故郷の凱里へ戻ったルオ・ホンウは、そこで幼なじみである白猫の死を思い起こす。そして同時に、ルオの心をずっと捉えて離れることのなった、ある女性のイメージが付きまとう。香港の有名女優と同じワン・チーウェンと名乗った彼女の面影を追い、ルオは現実と記憶と夢が交わるミステリアスな旅に出る。2018年・第71カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品。日本では、同年の第19東京フィルメックスで学生審査員賞を受賞。