ホワイトラブ(1979)

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百恵友和第10作目の記念映画オリジナル・ストーリーを一般公募

受賞作を藤田敏八小林竜雄脚色

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今までの文芸的な作風とはうってかわって

外国語教室、品川ナンバーのオープンカー

業界でスタイリスト、商社勤務、シングルマザー

インスタント食品、女性向けスクーター、海外旅行

70年代から80年代(バブル)へ向かう時代の風俗が懐かしい

(飲酒運転OKだったかどうかは知らないけれど 笑)

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スペインロケというのも確実に配給収入を見込める

当時の百恵ちゃん(20歳)の人気ならでは

だけど展開はかなり無理やりで強引(笑)

 

ホワイト”がスペインの田舎の民家の壁の色が”白”

からきているのかどうかは知らない(笑)

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スペイン語教室に通う百恵ちゃん

学校のロビーで友和さんの火の付いた煙草のケースが誤って飛んでしまい

白いワンピースが焼け焦がされてしまいます

洋服を弁償すると約束して翌日待ち合わせるふたりでしたが

百恵ちゃんに急用が入り友和さんは待ち惚け

 

再びスペイン語教室で再会するわけですが

実は友和さんは外国語に堪能でスペイン語もペラペラ

臨時講師として働いていたのです

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外国語を話せる人間にヨワイ日本人あるある(笑)

百恵ちゃんは元商社勤めの友和さんの虜になっていくわけですが

友和さんは、外国人相手のポン引きをしている岩城滉一の助手として

身銭を稼いでいました

何かとすれ違い、金銭トラブルや女性問題を抱える友和さんと

距離をおくようになる百恵ちゃん

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そして死んだと思っていた行方不明の父親が危篤で

スペインで末娘の百恵ちゃんに会いたがっていると

父親の親友の北村和夫から知らされ

急遽、北村和夫とスペインに向かう百恵ちゃん

そして友和さんも、スペインまで百恵ちゃんを追って行きます

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ここからはもうノリと勢いだけで作ったのか(笑)

ツッコミどころ満載

 

マドリッドに着いたとたん都合よく高熱を出す北村和夫

しかもイキナリ百恵ちゃんスペイン語ペラペラ

すぐに市街で友和さんの元恋人、范文雀と出会う

住んでいるアパートまで発見(なんという土地勘の強さ)

瞼の父親(小林桂樹)と涙の再会も、翌日あっさりお別れ

友和さんとふいたりで元恋人を探しに旅立ちます

(父親と会うためここまで来たんじゃなかったのか?笑)

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そこで友和さんから、スペイン駐在時代の恋人范文雀

職場の上司、高橋昌也にレイプされてしまい妊娠

(友和と高橋、どちらの子かわからない)

中絶するため電車でフランスに向かう途中駅で

范文雀が消えてしまったことを打ち明けます

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牛追い祭りで友和さんが范文雀と再会し熱い抱擁をかわすと

百恵ちゃんはそっと部屋を出ていきました

しかし「ケン」の血液型は友和の子ではなく

だけど友和の子だと思って育てていると告白します

 

そして百恵ちゃんを追う友和さんを窓から見送ると

窓の柵が壊れ落下、范文雀は死んでしまい(死体は置き去りかよ)

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ふたりは「ケン」を連れて、”あの時の子”だと

駐在所の高橋昌也に会いに行くものの

突然「私たちで育てる」と言い出し

高橋が養育費だと渡した小切手を、鼻チンして投げ返す

まあ、そこまではドラマの演出としてアリだとしても

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いくら母親が死んだからって、スペイン生まれの子どもを

平然と日本に連れて帰っていいものなのか

(それって誘拐だと思う)

 

さすがに共演10作目とあって百恵ちゃんと友和さんの息はぴったり

脇を固めるのもベテランの芸達者な名優ばかり

にもかかわらずこのリアリティのなさ

(コメディだと思って見ればいいのか 笑)

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ただ、人気アイドルの主演映画の脚本の一般募集というのは

今でもやって欲しいですね

脚本家を目指す素人作家のメジャーデビューのチャンスになりますし

埋もれた才能の持ち主の発掘になるかもしれない

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そうしたら私も応募しよう

今から構想を練っておかねば(笑)

(オマエが書いたらアイドル映画じゃなくて、変態映画になるわ)

 

 

【解説】KINENOTEより

スペイン語を習うスタイリストの女と、スペイン語講師との愛を描く。山口百恵三浦友和共演十作を記念して、オリジナル・ストーリーを一般公募し、選ばれた中川美知子の原案をもとに、脚本は「もっとしなやかにもっとしたたかに」の小林竜雄と「帰らざる日々」の藤田敏八の共同執筆、監督は「ピンク・レディーの活動大写真」の小谷承靖、撮影は「炎の舞」の萩原憲治がそれぞれ担当している。

風立ちぬ(1976)

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堀辰雄の同名小説の映画化

作中にある「風立ちぬ、いざ生きめやも」(風が渡っていく、さあ生きていこう)

という詩句、はポール・ヴァレリーの詩『海辺の墓地』の一節

Le vent se lève, il faut tenter de vivre.」を堀本人が訳したもの

「私」の婚約者、節子のモデルは堀と1934(昭和9)年9月に婚約し

1935(昭和10)年12月に死去した矢野綾子という女性のこと

 

映画のほうは太平洋戦争真っただ中の19421944年ごろが舞台だと思います

軽井沢に住む元外交官の水沢(芦田伸介)は学生たちを家に招いては

食事や酒をふるまっていました

そのなかのひとり結城達郎(三浦友和

ひとり娘の節子(山口百恵)はお互い惹かれあっていました

(何がびっくりするって、若い頃の松平健 笑)

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なのに百恵ちゃんの叔母は次から次へと

百恵ちゃんにお見合い話を持ってきます

友和さんは百恵ちゃんの父親に結婚を申し込みに行こうとしますが

家族から「お前は戦地へ行く人間だ。死地へ行く者が彼女を幸せにできない」

(死ぬこと前提 笑)と結婚に反対し

友和さんもそれを受け入れ遠く離れた大学に進学します

 

そのことを父親から知らされた百恵ちゃんは

いきなり「ゴホゴホ」と咳をしだして、倒れてしまいます

この瞬間結末はわかってしまうのですが(笑)

 

百恵ちゃんと別れ、酒に溺れていた友和さんは

百恵ちゃんが結核だと知り急遽帰省し

八ヶ岳にある結核専門の診療所に百恵ちゃんを入院させ

付ききりで看病するのでした

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戦争中とはいえ、ふたりとも良家の子女なので

生活に困っている様子は全くありません(笑)

ただ今の新型コロナと一緒で当時の結核には特効薬がなかったんですね

回復するには安静と換気としっかり栄養を摂るくらいしかありません

それでも友和さんの献身的な介護で百恵ちゃんは元気になります

 

そこに日本軍から学徒出陣の命令が下され

友和さんも急遽戦場に向かうことになります

そこでやっと「戦地から生きて帰る希望を」と

友和さんの父親は百恵ちゃんとの結婚を許すのでした

 

しかし友和さんが旅立つその朝

百恵ちゃんは息を引き取ってしまいます

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若い男女の悲恋物語ですが、 往生際はまったく映さないので

最後までしんみりとすることはありません

そんななか診療所の少年が亡くなって母親が泣き叫ぶのと

芦田伸介さんが電話口で娘の死を報告するのが(名演)

唯一”死”を感じるシーン

 

この時代は恋人や夫が戦死してしまう

または戦場から生きて帰れても、好きな人が死んでしまっていた

という話が山ほどあったんだろうな

 

そしてこういう病弱だったり、死んでしまう役ばかりの百恵ちゃんに憧れて

「身体が弱くなりたい」と願った多くの女の子の中の私もひとり(笑)

 

関係ないけど現在の百恵ちゃんも年齢不詳なんだろうか(笑)

 

 

【解説】スポンサーリンクより

風立ちぬ1976年製作の日本映画。山口百恵主演文芸作品第5弾。

ホリプロ堀威夫社長が率先して映画化。東宝配給。

前作『エデンの海』でコンビを解消したかのように思われた山口百恵三浦友和コンビが復活して大ヒット。『絶唱』と同様、悲恋映画である。

山口百恵は当時の不治の病である結核で亡くなる役を熱演。若杉光夫監督作品。往年のスター芦田伸介河津清三郎宇野重吉らが出演。若き日の森次晃嗣松平健が初々しい。

若い人(1962)

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「ああいう苦しみを持った子に弱いんです」


原作は石坂洋次郎の同名小説

原作では高校教師の主人公は偽善性や卑怯さを持った

典型的な日本人男性の心情が描かれているそうですが

裕次郎にドロドロ感はなく、あくまで爽やか(笑)

女子生徒からの愛情を受け止めかね、困惑しながらも

自分の気持ちを正直に伝えるという勇気を持っているという役柄

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でも内容がどうのこうのというより

ほぼ小百合ちゃんを見るためだけに作られたような映画

怒った小百合ちゃん、笑った小百合ちゃん、泣いた小百合ちゃん


そこに清楚で美人だった頃の浅丘ルリ子さんと

(今がブスみたいな言い方じゃない 笑)

熟女の怪しい魅力を振りまく三浦充子さんが登場

こんな女性たちに囲まれたら、男なら誰だって優柔不断になってしまう(笑)

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九州、長崎のミッションスクール

数学教師裕次郎は、毎朝遅刻してくる女生徒

吉永小百合を窓から大声で叱るのが日課

そして歴史教師浅丘ルリ子が気になっています

アプローチの仕方は小学生並みなんですけど(笑)


学校の帰り道ルリ子姐さんから

小百合ちゃんが書いた作文を手渡された裕次郎

そこには自分の父親は誰かわからず

母親の恋愛遍歴のなかで生まれた私生児であること

料亭を営む母が世間から娼婦と呼ばれていること

その境遇を受け止めながらも、奔放な母親に反発していること

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ルリ子姐さんは裕次郎に父親の面影と、恋愛対象として憧れることで

小百合ちゃんが心の均衡を保っているのではないかと打ち明けます

そしてその作文を裕次郎に託すのです


これって凄いな(笑)

どっちの女を選ぶのか、裕次郎の気持ちを試そうとしている


その夜、小百合ちゃんと母親の三浦充子が革靴のプレゼントを持って

裕次郎の下宿を訪ねてきます

(官能小説を声を上げて読みあげる下宿屋のオヤジ  笑)

本来は保護者からの贈り物禁止なものを、受け取り方がスマート

(実際昭和は教師がガンガン贈り物もらっていたがな)

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母親だけが帰った後、すれ違いでやって来たルリ子姐さん

慌てて押し入れに隠れる小百合ちゃん

いったん渡した手紙を、返して貰いに来たり

着物姿で現れるところなど、やっぱりルリ子姐さんが上手

というか当時の映画は「男が好きなタイプの女性」を

描くのがうまいのだろうな


だけど修学旅行の夜、行方不明になり雨の中彷徨っていた

小百合ちゃんの激情を、抱きしめることで受け入れてしまう裕次郎

そうして、小百合ちゃんは自ら妊娠した”というデマを流すのです

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裕次郎に対するルリ子姐さんの態度は冷たいものでしたが

先生を必要としているのは小百合ちゃんだと、はっきり言います

その瞬間裕次郎は、自分本当に愛しているのは

ルリ子姐さんのほうだと確信するのです

 

面倒なほうの女がだんだん嫌になってきたんだな(笑)

小百合ちゃんに気持ちを伝えるため会いに行くと

そこは母親の三浦充子さんと若い愛人、北村和夫の修羅場でした

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北村和夫さん、酒飲みのヒモ男でDVかと思ったのですが

実は一番マトモなのかも(笑)

怒りながらも、不幸な母親を憐れみ助けようとしている

でも喧嘩の仲裁に入った裕次郎ケガをして意識を失ってしまう

 

翌日学校を休んだ裕次郎を、ルリ子姐さんが心配してやってきますが

母親わざとらしく小百合ちゃんの介抱ぶりを誇張したため

早々に立ち去るしかありませんでした

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ルリ子姐さんを追って、学校に向かう裕次郎

裕次郎を追う小百合ちゃん

そこで裕次郎はルリ子姐さんが好だと打ち明けます

 

裕次郎の気持ちは最初から知っていたと

来た道を戻って行く小百合ちゃん

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文学の世界の中で男を惑わす美しい女は

高い確率で作者に殺されるけど(笑)

 

確かにこういうストーカータイプの女の子

は自殺(未遂)するかもしれないな

未遂なのは、結局は好きな男を奪いたいから

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自分に自信のある女が本当に死んでたまるか(笑)

 

 

「アラン・ドロン生誕85年記念祭 シネマ・ライブVOL.8」(2020)

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去る118日(日)

チェイサーさん主催、銀座タクトで行われた

アラン・ドロン生誕85年記念祭 シネマ・ライブVOL.8」に行ってきました

  

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           コロナ渦中での開催ではありましたが

チェイサーさんの「ドロンさんに対して何らかの方法で

日本のファンの方々からの応援メッセージを届けたい」

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また「自粛を余儀なくされてきたライブハウススタッフの方々や

プロのミュージシャンの方々に本来の「力」を発揮できる場を作って協力したい」

という強い思いから今年も素晴らしいシネマ・ライブと

秘蔵映像やトークがあり

シネマファンとの新たな出会いもありました

f:id:burizitto:20201110195924j:plain        クイズタイムではあまりの難問に頭を悩ませながら

マニアックさに笑ってしまいました(笑)

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          お土産には参加者全員に「バリ・マッチ」の

唯一のアラン・ドロン”特集号のDVD

俳優としてのドロンさま

起業家としてのドロンさま

アートコレクターとしてのドロンさま

馬や犬が大好きなドロンさま

ドロンさまの素顔と謎に迫った

これもまた素晴らしい内容になっています

(フランス語はわからないけど、たぶんそうだと思う 笑)

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         チェイサーさん、本当にありがとうございます

そしてお疲れさまでした


いつもより小規模な開催で

お互いの距離はソーシャル・ディスタンンスでしたが

心は映画を愛する者同士の”蜜”を感じられました

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        ブログ友では去年参加の、ジーナちゃん、ゆうちゃん

たっふぃーさんとは再会できなかったけど

名古屋から八点鐘さんが参入

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       なんか八点鐘さんとたっふぃーさんって、同じ匂いがする

体臭を嗅いだわけではありません 笑)

来年の”ドロン生誕祭”では絶対会わせたいわあ

ジーナちゃんと再びどっちが飲めるか東西横綱対決

ゆうちゃんは絶対来ないとダメ(笑)

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                二次会はこっそり新橋

チェイサーさん”ドロン生誕祭”常連さんもお誘いし

盛り上がりたかったのですが、密を避けて

小規模にはてブロ”メンバーでオフ会


その日のうちに名古屋に帰る八点鐘さんを新橋駅で見送った後も

映画の話は尽きず、場所を変えてまた飲む(笑)

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      このような映画ファンと共に過ごせるひと時を作ってくれる

チェイサーさんに毎年感謝

来年の「アラン・ドロン生誕86年記念祭」も楽しみにしています

そしてコロナが収っていたら、思い切りハグましよう(笑)

太陽の季節(1956)

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原作は石原慎太郎原作の同名小説

文壇的には反対派が多かったものの芥川賞受賞、翌年には映画化され

その後「処刑の部屋」「狂った果実」も映画化され大ヒット

太陽族」という流行語が生まれ、活字メディアより

映像メディアによって作家が有名なった最初のケース

 

太陽族」とは既成の秩序を無視して

無軌道な行動をするブルジョアの不良集団のこと

本作でも10代の高校生の飲酒、喫煙、ナンパ

処女撲滅作戦、婚前妊娠、無責任、中絶

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社会的タブーと、倫理性に欠けるテーマは非難と称賛を巻き起こし

この作品がきっかけで映画倫理管理委員会(新映倫が作られたそうです

(「太陽族映画」の影響を受けた若者が、強姦や暴行

 不健全性的行為などの事件を起こし社会問題になったため)

 

しかも石原裕次郎のデビュー作

主演の長門裕之南田洋子が結婚するきっかけなったことでも有名

南田さんめちゃくちゃ美人で、長門裕之のどこに惚れたの

って感じだけど(私なら岡田真澄を選ぶ 笑)

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名門高校のバスケ部の津川龍哉(長門裕之はボクシング部に転部し

仲間たちと金を出し合い、タバコ、酒、バクチ、女遊びに喧嘩をする日々

ある日3人の女の子をナンパし、ダンスホールに行きますが

そのなかのひとり英子(南田洋子)と意気投合します


やがて肉体関係を結び、英子は龍哉に惹かれていきますが

龍哉は英子に付きまとわれたり、仲間から冷やかされることに

嫌気がさしてきました

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ついには英子を気にいっている兄の道久(三島耕

彼女を5千円で売りつけるのです

それを知った英子は自腹で道久に5千円を金を送り返すという繰り返し

やがて龍哉は道久に2千円で英子を売り

英子からは今まで通り5千円貰おうと思いつきます

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さすがの道久も、そんなことを続けることに良心が咎め

英子がそこまでするのは、本気で龍哉のことが好きだからです

そしてもうひとつの理由がありました

英子は龍哉の子を身籠っていたのです


龍哉にふたりが海上のヨットで結ばれた日のことを語り

3ケ月になったと、「産みたい」と伝えます

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しかし龍哉はノー・リアクション

自分の気を引くための嘘だろうか

本当だとしても誰の子かわからない

相手はクラブのマスターじゃないのか


いやいや、女性は何月何日妊娠したかくらい、わかるものだよ男性諸君(笑)

しかも英子のような裕福な子女が、お金に困っているわけでもなし

男に妊娠したという嘘をついてどうする

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妊娠4ケ月目に入った英子は、何の音さたもない龍哉に

どうするのか詰め寄ります

だけど産むも産まないも好きにすればいい

龍哉はすべてを英子に丸投げ


その場で英子は中絶を決意し、女友達に病院まで送ってもらいますが

術後、腹膜炎で死んでしまったと訃報が入ります

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それでも龍哉は現実を受け入れられない

本物の葬式、本物の遺影 、親族

龍の心の声「何で死んだんだ!」


(男性)スポーツ選手の無道徳な生態は

今でもたびたびワイドショーを賑わせていますが(笑)

女性の気持ちや立場を全く考えず、映画と同じで自己中心

相手がどんなに傷ついたさえもわからない

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でもその代償はとても大きいもの

若くて有意義で賞賛された日々はすべて奪われ

どん底まで突き落とされてしまうのです


優柔不断男の描きかたは、溝口健二並みのサディズムさがありますが

映画としては、溝口作品のような傑作の香りや

石原慎太郎原作の「狂った果実(1956)インパクトはなく

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どうせなら、英子がお腹の胎児が大きくなり過ぎたことで

医者から中絶を断られ、首つりするか溺死するくらいが良い


そのほうが死んでも恨みが増すというものだし

ラストの主人公の曖昧な心情も解決されるというもの

 

オマエは一生呪われて生きるのよ



【解説】allcinema より

芥川賞を受賞した石原慎太郎の同名小説を、古川卓巳が脚色・監督した青春映画。慎太郎の実弟である石原裕次郎が本作でデビューを果たした。本作の後に公開された「処刑の部屋」「狂った果実」とあわせて「太陽族映画」と称された。
 高校生の津川竜哉はボクシングと酒と女と喧嘩に明け暮れる日々を送っていた。仲間たちと銀座に出た竜哉は武田英子と知り合い、二人は逗子にある竜哉の家で結ばれる。竜哉と英子はデートを重ね愛情を確かめ合うようになるが、英子が想いを募らせていくのと反対に、竜哉はだんだん英子のことが煩わしくなってきていた。竜哉は兄の道久に英子を五千円で売り飛ばす。英子は竜哉の子供を身ごもっていたが、竜哉に始末しろと言われてしまう。

 

西鶴一代女(1952)

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溝口健二今では小津安二郎黒沢と並ぶ

巨匠という評価が定着しているものの

この西鶴一代女」でヴェネツィアで国際賞を獲得する以前は

好不調の波が激しく失敗作も多く、特にこの作品を発表するまでは

長いスランプに喘いでいたそうです

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しかし時代が溝口に味方した

戦争に負けアメリカに占領されると、男は玉を取られ

女は強姦されると多くの日本人信じていました
そこで日本政府は、女性の貞操を守るため遊郭に協力を求め

ダンスホールや花街でアメリに対応します

さらに素人の女性を募集して慰安所を作ったそうです

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ですが性病が蔓延したり、女性を前借金で拘束する人身売買を禁止しようと

民主化の一環として、GHQは日本政府に公娼制度の廃止を要求します

慰安所は閉鎖慰安婦たちは退職金も貰えず解雇され

多くはパンパンと呼ばれる娼婦になるしか道はありませんでした

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日本での評価はイマイチで、興行も不況に終わったのにももかかわらず

この作品が、海外で高く評価されたのは


貧しくて売られたり、夫が戦死したり、家や家族を失ったり

落ちぶれた女ができる仕事といえば身体を売ることだけ

どこの国でも同じような時代背景があったのではないでしょうか

そんな戦後の女たちの姿と「西鶴一代女」が重なってしまう

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物語はひとりの遊女「お春」寺で羅漢の像を見て

初めて惚れられた男、勝之助(三船敏郎を思い出すところから始まります


御所 (ごしょ)に勤めていた10代の頃のお春は

公卿(くぎょう)の勝之介に宿に連れ込まれたところを役人に見つかり

不義密通だとされ、お春は両親ともども洛外(らくがい)追放され

勝之介は斬首刑になってしまいます

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そこに世継ぎのない主君(近衛敏明の側室を探していた松平家の家中が

お春を見初め、お春は松平家に輿入れすることになります

めでたく跡継ぎをもうけますが、大奥の妬みにあい

子は奪われ実家へ返されてしまいます


するとお金に困った父親は、お春を島原の遊郭売ってしまいます

そこでもまた田舎大尽(=田舎の金持ちで豪遊する者がお春を見初め

身請けすることになります

しかし金持ちというのは嘘で、実は贋金(にせがね)作りの指名手配犯

役人に捕らえられてしまいます

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廓を出たお春は、大商人笹屋女中として働きますが

笹屋の客がお春の遊郭時代の顔見知りであったことから

過去がばれ大旦那進藤英太郎)は

ただで傾城買い(遊女と遊ぶこと)出来る」と大喜び

怒った笹屋の女将に追い出されてしまいます

(仕返しに女将のハゲをばらすがな)

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行き場もなく、実家に帰ったお春

すると扇屋の弥吉宇野重吉がお春に一目惚れしてしまい

扇屋に嫁入りしたお春は、お人好しで働き者の弥吉と

初めて平和で幸せな生活を手に入れます

が、それも長く続かず

弥吉が物盗りに襲われて殺されてしまいます


お春は自分の不幸を嘆き、寺の尼僧の世話になるものの

借金を取り立てに来た男に犯されそうになるのを尼僧に見られ

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寺を追い出されたお春は、扇屋の番頭だった文吉と再会し

行動を共にしますが、文吉が盗みをしてしまい捕まってしまう

ひとりになったお春は三味線を弾く物乞いで小銭を稼いでいましたが

空腹で倒れてしまい、助けたのはふたりの夜鷹(下等の売春婦)でした

そしてお春も街娼として男を誘うようになります

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やがて過労がたたって再び倒れ、そこに母が

松平家の殿が亡くなり、若殿と一緒に暮らせると知らせにくるのです

しかし喜びもつかの間、お春が街娼だと知った家臣は

若殿の顔を遠くから見ることしか許さず

そのまま彼女を牢に入れ幽閉しようとしていました

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家臣たちの隙をみて逃げ出したお春は

過去も捨て、男も捨て

出家して諸国を彷徨う巡礼の旅に出ていました

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溝口ほど女性の憐れ描くのが上手い監督はいない

しかしそのサディスティックさは、撮影現場でも同じだったらしく(笑)


公道に突貫で作ったセットを、警察から翌日の朝まで撤去しろと要請され

(早く撮影を終わらせなければいけないのに)溝口が美術スタッフに

「ずらせ」とか「戻せ」でなかなか撮影に入ることが出来ず現場は大混乱

ついに助監督がキレたという有名なエピソードがあるそうです(笑)

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本作でも溝口が得意とするワンシーン・ワンカット長回し

流麗なカメラワークが随所で見られますが

やっぱり宮川和夫カメラで見たかったですね(笑)

宮川だったら、田中絹代にも男を惑わす色気や魅力

醜女にも残されているかすかな美しさを引き出す

完璧な傑作になっていた気がします


女は強いな

どんな地獄に突き落とされても、生きていこうとする

それを笑ったり、見下したりする特権は誰にもない

と、思います





【解説】allcinema より

井原西鶴の『好色一代女』を、依田義賢が脚色し溝口健二が監督した文芸作品。お得意の長回しや流麗なカメラワーク、そして田中絹代の熱演などが、ヴェネチア国際映画祭での受賞につながった。
 奈良の荒れ寺に集まる街娼たち。年老いたお春は羅漢堂に入り、過去に出会った男の面影を思い浮かべていた。御所勤めをしていた13歳のお春は、公卿の勝之介に宿に連れ込まれたところを見つかり、両親ともども洛外へ追放となってしまった。その後、松平家に取り立てられ嗣子をもうけたものの、側近の裏切りに遭い実家へ帰されてしまう。島原の郭に売られたお春は、気に入られた客の住み込み女中となるが、その妻に嫉妬され追い出されてしまった。さらに結婚相手が急死し、世話になった男の盗みが発覚して捕らえられるなど、流転の人生を歩むのだった。

エアポート'80(1979)

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原題は「THE CONCORDE-AIRPORT '79」(コンコルド/エアポート'79

コンコルド」はイギリスとフランスで共同開発された

マッハ2.04毎時という戦闘機並みの音速旅客機

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ロンドンとニューヨークをわずか3.5時間で飛行でき

ブリティッシュ・エアウェイズの前身である英国海外航空や

エールフランスはもちろん、JAL日本航空)など

大手航空会社がこぞって発注したそうですが

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1973(昭和48)年第四次中東戦争の影響を受け

世界的にオイルショックが発生

航空会社は「コンコルド」を運航する余裕が無くなってしまったうえ

従来の旅客機に比べて長い滑走路が必要で騒音も大きい

音速を突破する際に衝撃波(ソニックブーム)が発生することから

運航できる路線が限られてしまいます

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さらに2000年のコンコルド墜落事故

2001アメリ同時多発テロによる世界的な航空不況により

2003コンコルド退役を余儀なくされます

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ということで、本作の主役はトップ・クレジットのドロンさまではなく

ほぼ「コンコルド」(でもパイロット姿のドロンさまには萌え 笑)

それだけ70年代では話題になり、人気の飛行機だったのでしょう

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とはいえ設定には無理がありすぎて、酷評につぐ酷評

旅客機にミサイルを撃ち込むなんてワールド・トレード・センター並みの

テロ行為だし(でもアメリカならやりかねないと思ってしまう)

コンコルドとジェット戦闘機のチェイスも不可能

ドラマは薄っぺらだし、シルビア・クリステルも脱がないと意味がない

と、超ツッコミ入れ放題 (笑)

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おおまかなあらすじは、ソ連親善スポーツ選手団や招待客を乗せ

パリ経由でプレ・オリンピックが開かれるモスクワまで

飛行する予定のコンコルドに、取材のため乗り込んだ

ニュース・キャスター(スーザン・ブレイクリー)

そのとき彼女は大手軍需企業の武器の密輸に関する

機密書類を渡されていました

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そこでキャスターの恋人であり、軍需企業の黒幕(ロバート・ワグナー)は

書類を亡きものにするためコンコルドごと

最新ミサイルや戦闘機を駆使して墜落しようと企むのです

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ミニチュアを使った特撮はなかなかの出来で
F15
(イーグル)もF4(ファントム)も出てくるし(笑)

飛行機好きなら愛を感じるシーンもありますが

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ジョージ・ケネディは、音速飛行中のコンコルドの窓を手で開け信号弾を撃ったり

爆破により座席の横の通路が抜け

エディ・アルバートが吸い込まれそうになるのですが

手をひっぱり座席ごと軽々と持ち上げ助けるというスゴ技

ジョージが「大丈夫か?」と訊ねると

「ここは特等席さ」と爽やかに笑うアルバート(笑)

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最後はコンコルドが、都合のいいことに作業員がたくさんいる雪山に不時着して

事故の余韻もなく全員サクサクと救出され

黒幕は武器の密輸をニュースで放映され銃身自殺

(民間人乗せたコンコルド墜落させたほうが問題だと思うけど)

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だけど翌年のモスクワ・オリンピック・ボイコットや

本作の撮影で使われたコンコルド2000年の墜落事故機体であることなど

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だだの駄作とは言い切れない、何かしら未来を予知したような

因縁を持った作品のように感じました

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【解説】allcinema より

米国の航空会社として初めて購入したコンコルドが、ベテランのパイロット、ポールの操縦でフランスから帰国した。このニュースは人気キャスター、マギーの番組でも取り上げられ、また一方では、彼女の恋人でもある実業家ハリソンの会社が新型攻撃ミサイルを開発した、という報道もあった。だがやがて、マギーはハリソンの会社による武器の不正輸出を知ってしまい、モスクワへ親善飛行するコンコルドへの搭乗を機にその事実を国外で公表しようとする。それを知ったハリソンはミサイルを駆使してコンコルドを攻撃。コンコルドはポールらの操縦テクニックで奇跡的に撃墜の危機を免れるのだが…。
 「エアポート」シリーズ第4弾。武器の密売を行う実業家が売上拡大を狙ってコンコルドを撃墜させる政治的陰謀を企てた!さすがにこの本家のシリーズだけあって多くの航空パニックの亜流に比べて、コンコルドの起用とそれを追うミサイルという設定は群を抜くが、薄っぺらな人間ドラマのみが目立つ空疎な作品。米TV放映時は19分のシーンが追加された