民衆の敵(1931)

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民衆の敵とは特定の人物の事ではない

 それは社会全体で解決すべき問題である」


原題は「THE PUBLIC ENEMY (公共の敵)

 

デビュー間もないジェームズ・キャグニーを有名にし

その後「ゴッド・ファーザー」(1972)に代表される

全てのギャング映画の楚となった傑作

やっと見ることができました

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映画史に残る有名なシーンも多く

愛人(メイ・クラーク)の顔にグレープ・フルーツを押しつける

馬を殺しに行く

土砂降りの雨のなか、二丁拳銃で殴り込み

衝撃的で、あっけない幕切れ

若きギャングスターのはかなくも壮絶な青春

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1931年製作なので、今見るとちょっと拍子抜けな部分もありますが(笑)

驚いたのは機関銃で撃たれたとき、本当にコンクリートが砕け散ったこと

数少ない銃撃戦の中で迫力が際立っていました


またサイレントからトーキーになって間もない頃の作品で

顔の表情で見せる演技が巧い、母親役のベリル・マーサがいい

表情だけで息子をどれだけ案じているかという気持ちが伝わります

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アイルランド系のトム(ギャグニー)とマット(エドワード・ウッズ)は

幼い頃から悪戯ばかりしている親友で相棒

盗んだ商品をプティという地元の悪党に横流し、小遣いを貰っていました

ある日毛皮泥棒を依頼され、警察官を殺してしまいますが

プティに裏切られ逃げられてしまいます

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ギャグニーの若い頃から存在感ある悪役顔(笑)

でもレオナルド・ディカプリオのような甘い美少年さも垣間見れる

 

やがて禁酒法の時代なり、トムとマットに暗黒街の大物

パディ(ロバート・エメット・オコナー)から声がかかります

しかし同じ悪党でもプティと違い、パディ親分は人間として優れている

たとえ若造でも分け前は平等

仲間を危険な目にあわせようとはしません

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そして大金の入った若い男のすることといえば

高級車に高級なスーツ、高級そうな女

そして苦労させた母親への親孝行

(テーブルの大きなビア樽がシュール 笑)

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だけど兵役を終えたばかりの兄、マイケル(ドナルド・クック)は

堅気で堅物で聖人様、血で汚れた金は受け取れないと拒否

札束をビリビリ破いて投げ捨てるのですが

 

早くに父親を失くし、兄のマイケルが父親代わり

トムがどんなに凶悪でも、マイケルだけにはかないません

この家族愛がラストに繋がる

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トムとマットの活躍で、パディ親分のシェアは拡大しますが

親分と協力関係にあった実力者が落馬事故で死んだのをきっかけに

ギャング同士の抗争が始まってしまいました

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パディ親分はトムやマットを守ろうと匿いますが

年上の女の誘惑され、トムは隠れ家を飛び出してしまいます

トムを追ったマットは、待ち伏せしていたギャングに撃たれて死んでしまう

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トムは雨の中、マットの復讐をするため

ひとりでバーンズ一家に乗り込むものの瀕死の重傷を負ってしまう

しかも病院から誘拐されてしまうのです

 

パディ親分はトムを助けるため、自分のシマを全てバーンズ一家に譲るつもりでした

しかし帰ってきたトムはすでに惨殺されていたのです

倒れ込むようにフラフラと歩くマイケル

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どんなクライマックスもワンカットで撮ってしまうという技法

無駄なカメラの動きも、無駄なシーンも、ひとつもない

 

パディ親分がトムに言った言葉が蘇る

「人間には ”良い” か ”悪い” の二種類しかない」

この先、マイケルはどちらの世界に進むのだろう

見るものに委ねられた深いラスト・・

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嬉しそうに枕カバーを変えている母親が切ない

 

 

【解説】allcinema より

数あるギャング映画の中でも最も共感できない主人公を擁する、強烈なW・ウェルマン監督作(だからこそ、反語的にこの映画のキャグニーを愛する連中も多い。半世紀が過ぎても色褪せないそのワルぶりよ)。貧しいアイルランド家庭に育った男は、母と弟たちとの家庭を護るため、進んで暗黒街へと乗り込み、惨虐の限りを尽くして急速にのしていく。もはや母の注進も受け入れず、彼女も腫れ物に触るように息子を扱うのだった……。ウェルマンは贅肉を削ぎ落としたスタイルで、この悪のヒーローを、その非業の最期(笑ってしまうくらい呆気なく凄まじい幕切れ)まで一直線に描ききる。それはハード・コアな域にまで達するパンクに等しい

アスファルト(2015)

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原題も「ASPHALTE」(アスファルト

新型コロナで世界を覆う不寛容というトレンド

なくならない差別や蔑視が今、私たちの心に暗い影を落としています

 

そんな時代でも、お互いの足りない部分を補ったり

認め合ったりすることが出来るはずと信じたくなるような

見終わったあとはちょっとハッピーな気持ちになれる

年齢も人種も違う男女の3つの小喜劇

 

古い団地の1室に住民が集まり

壊れたエレベータを取り換えようという会議が行われていました

ただひとり2階に住む男、ギュスタヴ・ケルヴェンは費用負担を拒否します

結局、男はエレベータを使用しないという条件で支払いを免除されますが・・

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エレベータの故障をモチーフとして物語が展開するのかと思いきや

そうではなく(笑)

不器用で意思疎通が苦手な、別々の男女が出会い

親子でもないし、エロティシズムという形でもない

ちょっと定番と違う、男女の交流を深めていくというもの

 

新しいエレベータになった直後、男は車椅子生活になってしまいます

ここで素直に住民たちに怪我を打ち明け費用を支払えばいいわけですが(笑)

深夜になると誰にも見られないよう、エレベータに乗り

食料を調達するために出かけるものの店はすべて閉まっている

そこで病院に設置された自販機でスナック菓子を買うことにします

そこで夜勤の看護師(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)に見つかり

とっさに自分は写真家でロケハンに来たと嘘をついてしまう

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それから毎晩、看護師の休憩時間に合わせて病院に行くようになった男は

彼女の写真を撮りたいと提案します

しかし約束の夜、エレベータが故障して男は閉じ込められてしまいます

 

エレベータのドアが開いた時、男は足を引きずりながら歩いていました

病院に着いたときにはすでに夜が明け

ちょうど夜勤明けの看護師と会うことが出来ました

そこで男は正直に自分は何者であるかを伝えるのです

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ふたつめの物語は、母親が留守がちで

ほとんどひとりで過ごしている高校生のシャルリは

隣に引っ越してきたばかりのイザベル・ユペールと知り合います

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彼女の職業は女優でそれなりに有名だということ

でも若いシャルリはユペールのことを知りません

そこで彼女が主演している映画を見せてほしいと提案します

その映画も普通の高校生に理解できるようなものではないのですが(笑)

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今は役がつくこともなく、落ちぶれてしまったユペールが

オーディションに合格するよう、シャルリは世話を焼くようになります

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最後の物語は、NASAの手違いで帰還用のカプセルが

団地の屋上に不時着してしまった宇宙飛行士のジョン・マッケンジー

アルジェリア系移民のマダムの部屋を訪ねるというもの

 

飛行士とマダムは全く言葉が通じないものの

人の好いマダムは飛行士に息子の服を貸し、息子の部屋に泊め

得意料理のクスクスを作り、宇宙服を洗濯してあげる(笑)

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そんな明るいマダムだけど、息子は刑務所に入所しているんですね

面会でこっそり「NASAの宇宙飛行士を匿ってる」と教えると

アルツハイマーか」と息子に逆に心配される始末(笑)

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マダムの優しさに触れた飛行士も、壊れた水道管を直してあげようとします

そしてやっとNASAから迎えが来た日

マダムと飛行士は本当の親子の別れのように抱き合いました

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登場人物たちは、全員恵まれていない人たち

それは自分のせいではなく、不遇だったり、運が悪かっただけ

それでも彼らはそれを誰かのせいにしたりはしないし

誰かを傷つけたりもしない

 

それどころか、それは小さなことかも知れないけれど

自分にできることで他人を助けようとするのです

しかも決して見返りを求めることはありません

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人工的で、ゴミだらけで、灰色の道路のアスファルトにも

陽に照らされたり、雨に濡れたり、時に光輝く時がある

同じように世間から見捨てられた人々の心の中にも

美しいものは宿っている、そんなメッセージを感じることができました

 

 

【解説とあらすじ】KINENOTEより

俳優・監督のサミュエル・ベンシェトリがイザベル・ユペールらを迎え、自身の著作をユーモラスに映画化した群像劇。車いす生活を送る冴えない中年男やいわくありげな美人看護師ら6人の孤独を抱えた者たちが郊外の団地でめぐりあう出会いと奇跡を紡いでいく。ほか、「ラストデイズ」のマイケル・ピット、「ふたりの5つの分かれ路」のヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、サミュエル・ベンシェトリの息子であるジュール・ベンシェトリらが出演。劇場公開に先駆け、フランス映画祭2016にて上映(上映日:2016625日)

外にある寂れた団地。人知れず車いす生活を送ることになった中年男性といわくありげな看護師、一人で留守番をすることの多い少年とその隣りに引っ越してきた落ち目の女優、不時着したNASAの宇宙飛行士と服役している息子を待ち続けるアルジェリア系移民の女性。それぞれ孤独を抱えた6人のもとに、出会いと奇跡が訪れる

 




ジャック・ドゥミの少年期(1991)

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原題は「JACQUOT DE NANTES」(ナントのジャコット)

ナントとはフランスのロワール河の河口にある都市で

ジャック・ドゥミ(=ジャコット)の故郷のこと


アニエス・ヴァルダが、病気を患い映画監督から離れたドゥミのために

ドゥミの少年時代を描いた作品

小さな男の子だったドゥミがどのようにして映画と出会い

映画を作るように至ったのかを優しく丁寧に伝えています

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ドゥミの代表作といえばミューズ、カトリーヌ・ドヌーヴ主演作の

シェルブールの雨傘(1964)や「ロシュフォールの恋人たち(1967)ですが

自分が生まれ育ったナントを舞台にした作品も多く

本作のロケーションもナントで、ドゥミの生家でも撮影されたそうです

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幼い頃からオペラや人形劇に親しんできたドゥミは

自作で段ボールで人形を作ってみたり

ディズニーアニメに大きな影響を受け

やがて中古の手動式映写機を手にし

近所の子どもたちを集め芝居をさせた実写映画や

コマ撮りアニメを制作するようになります

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上映会はリビング、観客は家族だけ

ほんの数十秒かも知れない動画を両親は称える

こういう子どもの頃の体験って大切なのだろうな

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戦争、疎開ナチスからの占領を経験しながら

どんどん映画に夢中になっていくドゥミ

だけど父親の要望は、息子が堅実な職に就くこと

高等職業学校に進学させられることになります

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普通の少年ならここで反発するのでしょうが

ドゥミは職業訓練を受けながら、映画の道も諦めてはいませんでした

工業学や整備士の資格もしっかり所得し、余暇には美術学校に通う

高校を卒業する頃には、ドゥミが映画の道を進むことに

父親が反対することはありませんでした

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そうしてドゥミはパリの映画学校(ETPC写真撮影技術学校)

通うことになるのです

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物語の途中途中に挿入される、晩年のドゥミの顔のアップ

瞳、眉毛、皺、シミ、白髪・・

アンタどれだけ旦那フェチなの(笑)

ヴァルダにとってドゥミが自分の一部であることがよくわかる

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ドゥミはこの撮影中に死去してしまい

ラスト、海辺の彼と寄せる波

回想するドゥミを回想するヴァルダ

人形劇が終わっても席を立たない少年は言う、「また幕が開くよ」

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映画監督、アニエス・ヴァルダ
1962
ジャック・ドゥミ結婚、1991年ドゥミと死別59歳没)

ドゥミの希望で死因白血病と発表

しかし死後数年後、ヴァルダ自身のドキュメンタリー映画

夫はエイズだったと打ち明けます

1980
年代、バイセクシャルだったドゥミ

ヴァルダと離れて暮らす時期がありました

 

再びふたりは近づき、お互い再発見しあいましたが

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やがてエイズ発症

 

まだエイズや同性愛に対する風当たりは強く

ドゥミはエイズ知られるのを恐れその事に多くのエネルギーを使いましたが

ヴァルダは夫がエイズであることすら受け入れました

夫の自分の知らなかった部分までこんなに愛せるなんて

美しすぎて泣ける

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これはシネフィルから、シネフィルへのラブレター

こんなふうになれたならな、と憧れます



【解説】映画.comより

シェルブールの雨傘」など数々の名作を生んだジャック・ドゥミ監督の映画愛に溢れた少年時代を、ドゥミの妻アニエス・バルダ監督が愛情を込めて映画化。晩年の本人の姿や代表作の名場面を織り交ぜながら、ドゥミの創造の源となった幼い日々の思い出を優しいまなざしで描く。フランス西部の港町ナントで暮らす8歳の少年ジャコは、自動車修理工場を営む父と髪結いの母のもとで幸せな毎日を過ごしていた。ある日、ジャコは友人から映写機を借りたことをきっかけに、映画づくりに熱中するようになっていく。

 

アダムス・ファミリー2(1993)

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原題は「Addams Family Values

Value(バリュー)には価格のほかに、論理や価値観という意味もあります

前作に引き続き「他人と違うことを否定しない」がテーマですが

笑えるか引くかギリギリのところをついてくるギャグ

しかもやり返しは「半沢直樹」の倍返しどころじゃない(笑)

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ゴメス(ラウル・ジュリア)とモーティシア(アンジェリカ・ヒューストン)の

あいだに次男ピューバートが生まれ

新しい子どもが生まれると上の子はいらなくなる ”という

アダムス家の言い伝えを信じている

ウェンズデー(クリスティーナ・リッチ)とバグズリーは

ピューバート殺害を企てています

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そこでゴメスとモーティシアは住み込みのナニーを雇い

ピューバートの面倒をみてもらうことにしました

やってきたのは金髪美女のデビー(ジョーン・キューザック

実は彼女、遺産目当てに富豪の男と結婚する連続殺人犯

兄フェスター(クリストファー・ロイド)の持つ莫大な財産を狙い

屋敷にやって来たのです

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もしかしたらこの映画が”キモかわいい”の元祖なのかも知れません

顔面蒼白の髭赤ちゃん、ピューバートがラブリーだし

クリストファー・ロイドも、悪女のジョーン・キューザック デビーも

主演作の中でいちばん可愛いんじゃないかな

そして我らがクリスティーナ・リッチ

自分のイメージ作りのためには胸を小さくする手術までしたとか

(元が巨乳って言うのもズルいが)

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デビーの策略によってウェンズデーとバグズリーが

ひと夏をサマー・キャンプを過ごすことになり

同じくキャンプに参加する(白人の)女の子や指導員から

事実上の差別や虐めを受けるのと

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フェスターがデビーの魔性の虜になり、骨抜きにされついには結婚

財産を使われ家族と引き裂かれる様子が並行して描かれます

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反省小屋でディズニーのアニメ

演劇の役決めは、ワスプかワスプ以外か(ROLANDか 笑

一方のフェスタ―はデビーに白いスーツを着させられ

金髪のカツラをかぶせられる

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アメリカでは政治と映画のテーマって

ものすごく強く繋がっているような気がして

この映画が製作された1993年は、大統領がジョージ・HWブッシュ から

クリントンになった年

(その後クリントンの不倫騒動を揶揄した「パーフェクト・カップル」(1998)

という映画も制作されましたが)

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だけどアダムス一家は不死身、その理由はメンタルの強さ

保護者見学の寸劇でインディアンに扮したウエンズデーが先住民弾圧の歴史を語り

火を放って劇をめちゃくちゃにする気分のいいこと(笑)

「キャリー」(1976)をちゃっかりパクってるのもツボ

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でもラストは、ちょっとハッピーエンドの予感

ウェンズデーには好きなってくれる男の子

フェスタ―にはフェスタ―そっくりな、運命を感じる女性が現れます

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人気作品の続編としては、希少な前作にも負けない良い仕上がりで

(ハンドくんの出番が少ないのが唯一の不満 笑)

いかにも「アダムス・ファミリー3」ありき終わり方でしたが

ラウル・ジュニアが急死してしまったため(199454歳没)かないませんでした

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自分の行動が周囲から浮いているのかも、とか

変わっている”と嘲笑されているような気がする、とか

もしそんな悩みを持っている人がいたなら見てほしい

 

たとえ人と考えや、見た目が違っても

自分たちのアイデンティティー(自分は自分である)を貫く、という

強さと魅力を教えてくれるのだから

(現実には、度の過ぎたイタズラはダメよ 笑)

 

 

【解説】KINENOTEより

オバケ一家の奇想天外な日常を描いたホームコメディの続編。原作は『アダムスのオバケ一家』のタイトルでTVシリーズ化もされたチャールズ・アダムスの同名漫画。監督はカメラマン出身で前作で監督デビューした「バラ色の選択」のバリー・ソネンフェルド。製作は前作に続き、「ザ・ファーム 法律事務所」のスコット・ルーディン。撮影はドナルド・ピーターマン。音楽はマーク・シャイマンで主題歌はラップ・デュオのPM・ドーン。美術は「ロシア・ハウス」のケン・アダム。SFX はアラン・ムンローが担当。主要キャストも前作同様で、「推定無罪」のラウル・ジュリア、「グリフターズ 詐欺師たち」のアンジェリカ・ヒューストン、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズのクリストファー・ロイド、「恋する人魚たち」のクリスティーナ・リッチなど。

アダムス・ファミリー(1991)

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原題も「The Addams Family

原作はホラーコメディの1コマ漫画で、ドラマや映画でも人気シリーズ

ちなみに他の作品は見ていません(笑)

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これがバリー・ソネンフェルド監督デビュー

確かに今見ると、確かに毒気足りないものの

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耳に残るBGM、細部に至るこだわり

そしてなにより超絶妙なキャスティング

家主のゴメズ(ラウル・ジュリア

妻のモーティシア( アンジェリカ・ヒューストン

娘のウェンズデー クリスティーナ・リッチ

行方不明の兄フェスタークリストファー・ロイド

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どれもハマリ役、ナリキリ度がすごい

息子のパグスリーだけ、なぜか普通(笑)

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クリスティナ・リッチは、この後「バッファロー'66(1998)

垣間見る演技力を見せ

「モンスター」(2003)ではセロン姐さんに負けない存在感を示しました

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ゴメスの弁護士ナタリーと、高利貸しのアビゲイル

行方不明のゴメスの兄フェスタ―が

ナタリーの養子であるゴードンとそっくりなことから

ゴードンをフェスタ―だと偽りアダムス家の財産を狙おうとします

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ナタリーとアビゲイルによってアダムス一家は邸から締め出され

裁判では財産はニセのフェスターのもとという判決が出されてしまう

すっかり元気をなくしたゴメスに見かねて

モーティシアはアダムス邸に向かいますが、あえなく捕まってしまいます

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ハンドくんから知らせを受けたゴメスは妻の救出に向かい

ナタリーとアビゲイルを倒します

ゴードンはその時のショックで記憶が戻りました

彼は本物のフェスターだったのです

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ハンドくんがいい仕事をしている(笑)

 

一見くだらないだけですが、夫婦愛、家族愛と

他人と違っても、それを否定しない、というのが

この作品の最大のテーマだと思います

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最後に、ウェンズデーとパグズリーの劇が最高(笑)

 

 

【解説】KINENOTEより

チャールズ・アダムス原作で、TVシリーズ化されたこともある漫画“The Addams Family”TVタイトルは『アダムスのお化け一家』)の映画化。監督は「ミラーズ・クロッシング」などのカメラマンで、これが監督デビューとなるバリー・ソネンフェルド、製作は「心の旅」のスコット・ルーディン、エグゼクティヴ・プロデューサーはグラハム・プレース、脚本は「ビートルジュース」のラリー・ウィルソンと「シザーハンズ」のキャロライン・トンプソン、撮影は「殺したいほど アイ・ラヴ・ユー」のオーウェン・ロイズマン、音楽は「シティ・スリッカーズ」のマーク・シャイマンが担当。

 

人生、ここにあり!(2008)

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この邦題では見る気になれない(笑)

原題は「SI PUO FARE (やればできる)

イタリア・ゴールデングローブ賞を獲得した

実話ベースの(イタリアでは)ヒット作品


バザリア法とは1978
にイタリアで公布された精神科病院廃絶法で
つまり、イタリアには精神科病院がないということ

治療は患者の自由意志で行われ、医療や福祉は原則として

地域の保健所のような機関で行うという世界初の試み

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1983年のミラノ

労働組合本部で正義感が強すぎて煙たがれていたネッロは

バザリア法によって閉鎖された病院の元患者たちによる協同組合に

異動させられてしまいます

しかしバザリア法とは名前ばかりで、自由な社会生活を送るどころか

投薬によりただ無気力な毎日を過ごしていました

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持ち前の熱血ぶりで、ネッロは彼らに自ら働いてお金を稼ぐことを持ち掛け

寄木による床張りの仕事が思いのほか順調に行きます

ちょっとうまくいきすぎじゃないか、と思った矢先に

ひとりの作業員、ジージョが顧客先の女の子に恋をしてしまい

彼女の家のパーティに招かれたことから傷害事件が起きてしまいます

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中盤までは重苦しいテーマを、イタリアらしい陽気さでコミカルに

展開していくのですが、そのぶん挫折したときのショックは大きい


女の子は泣いて、ジージョをその気にさせた「私が悪いんです」と

事件を起こしたルカを起訴することはありませんでした

この女の子が警察に打ち明ける言葉が総合失調症や自閉症に対する

一般の人の正直な気持ちをよく表しています

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だけど偶然それを廊下で聞いてしまったジージョは自殺してしまい

責任を感じたルカとネッロは引きこもってしまう


日本だったら、こういう事件が起きたら法は廃止され

精神病患者は再び入院、投薬による行動の制御が行われると思うんですね

カッコーの巣の上で」(1975)と見比べてみるのも面白い

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でもここで諦めたら終わり

意を決したルカは、無償でもいいから大きな仕事をやろうと立ち上がります


単なる障害者への施しではなく、仕事には責任や賠償金が伴うということが

しっかりと描かれているのは好感もてます

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差別はなくならないけれど、ちょっとした努力と理解で共存はできる

多少説教じみてはいるものの、得るものは沢山ある作品だと思います




【解説】allcinema より

1978年、イタリアでは精神病患者を無期限に収容することを禁止する精神病院廃絶法が制定され、患者たちは入院治療ではなく地域の精神保健サービス機関で予防や治療に当たりつつ、地域社会との共存を実現していく体制へと移行された。本作は、その取り組みが行われていく中で実際に起こった出来事を実在のグループホームをモデルに映画化したヒューマン・コメディ。“やればできるさ”を合言葉に、世界で初めて精神病院を廃絶する画期的な取り組みを巡る希望と現実を温かな眼差しでユーモラスに描き出していく。監督はこれが日本初紹介のジュリオ・マンフレドニア。
 1983年、ミラノ。正義感にあふれる労働組合員のネッロは、異端すぎたために反発を招き、クビ同然で新たな組合に異動させられてしまう。そこは、廃止された精神病院を出てきた元患者たちで構成された協同組合だった。しかし、戸惑いつつも決して腐ることのない熱血漢、ネッロ。彼は、目的もなく無気力に過ごす元患者たちを見て、自ら稼ぐことでやる気を取り戻してもらおうと、建築現場の“床貼り”を請け負う事業を立ち上げるのだったが…。

Viva!公務員(2015)

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原題は「Quo vado? 」(俺はどこに行く?)


イタリアの国家公務員を風刺したコメディ

面白かったですね

ご都合主義で、自分さえ良ければいいテキトー男

だけど不思議と何もかもういまくいき、最後にはみんなを幸せにする

日本でいえば植木等さんの無責任時代の無責任男みたい

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冒頭アフリカのジャングルを、タクシー兼ガイドの運転で移動中のイタリア男

途中車が故障し、血の気が多い部族に捕らえられてしまいます

部族の首長の要求は、男の話を聞きたいというものでした

男は自分の生い立ちと、今までの人生の振り返り部族の人々に話し始めます


小学校の教室で子どもたちが将来の夢を答えています

獣医、音楽家、科学者・・自分の番が来たケッコは「公務員」と元気よく答え

その通り(議員のコネで)公務員となり

15年間狩猟許可証にハンコを押す係をしながら

住民から”付け届け”をもらうお気軽な毎日

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社会保障は約束され収入は安定、あれもこれも優遇されている

なので公務員と結婚したら一生生活は安泰

それをいいことにケッコは恋人を召使扱いし料理をけなす

しかも38歳になっても両親と同居、やっぱりママが一番


恋人へのあまりにも酷い態度には

部族の女性たちからもブーイング


そんな自由快適な日々に終わりを告げられる日がきました

新大臣の緊縮財政のあおりを受け、扶養家族のいないケッコは

異動”という名のリストラ対象になってしまいます

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日本でもやればいいのに、緊縮財政

公務員への過剰な報酬は、イタリアの国家経済悪化の元凶とされ

「ばらまき政策」国はやがて”PIIGS(ピーグス =)”と呼ばれ

ほかのEU加盟国から”豚野郎”と呼ばれているそうです


ケッコはシローニ部長と面接し、退職金を上乗せし離職を勧められますが

特級階級の公務員を辞めるつもりなど全くありません

あらゆる僻地に出向させられ、ついには北極の国際研究センターに飛ばされます

さすがにもう辞めようと決心したとき

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パートナーを組むヴァレリア博士が好みの美人で

俄然張り切って調査に参加します

やがて、ノルウェーにある彼女の家に招待され

彼女と彼女の(父親が違う)3人の子どもと過ごすようにまでなるのです


外国映画のコメディって過剰な下ネタが多いのですけれど

ハリウッド映画ほど、露骨だったり下品ではなく(笑)

イタリアとノルウェーの国民性や文化の違いをうまく利用して

笑いを取ると言う感じ

イタリア人やノルウェー人にとっての「あるある」ネタなんだと思います

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その頃ローマでは、北極特派員の手当てが莫大なことを新聞にリークされ

大臣命令でケッコは異動を命じられますが、公務員の特権で休職し

ヴァレリアと同棲生活をはじめ、ノルウェーに染まっていきます

ノルウェーでは女性も自立

大人も子どもも、人種や宗教も関係なく人権を尊重

公務員でなくても社会保障があり

前の車にクラクションも鳴らさないし、レジで割込みもない


だけど真面目なぶん、自殺する人も多い

何よりイタリアンレストランのスパゲティが不味い

ついにキレたケッコはイタリアに帰る決意をします

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そしてまた僻地に飛ばされ森林警備の仕事に就きますが

主な仕事はマフィアが飼っている危険な猛獣を没収し管理すること

ヴァレリアは自宅の没収を免れることと、動物保護も兼ねて動物園を始めますが

活動に理解を示してくれたミケーレ司祭が異動になり

補助金が下りず動物達の餌代にも困るようになりました


公務員の特権にしがみつくケッコと

ボランティアや社会奉仕が重要だと考えるヴァレリアの意見は分かれ

ついにヴァレリアは子どもたちを連れケッコのもとを去っていきます

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ヴァレリアがいなくなり、弱っているケッコのもとに

シローニ部長がやってきて、最終兵器

色仕掛けで退職届けにサインさせようとしますが

まだまだケッコに公務員をやめる気はありません


ここまで話を聞いていたアフリカの部族は

ヴァレリアより公務員を選んだケッコを避難するのですが

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ケッコはそのヴァレリアから”妊娠した”という連絡が入り

産まれた赤ちゃんに会いに行かせて欲しいと首長に懇願し

男の子だったら首長の名前をつけると約束します

女の子だったけど(笑)


だけど医療テントではチフスマラリアのワクチンが足りず

愛する娘も接種することができないとヴァレリアは言います

アフリカで娘と3人の子どもと暮らすか、イタリアに戻って公務員を続けるか

ヴァレリアに選択をせまられ、悩んだ末

ついにケッコはジローニ部長に電話

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しかし退職金は最初に掲示した額より

さらなる緊縮財政で1万5千ユーロ少ない額でした

なかなかサインしないケッコに、ジローニ部長は差額の小切手を自腹で切り

「医療費に役立てて」と言い、自分のあるべきポストに返り咲くことができました


そうして1万5千ユーロ分の大量のワクチンが医療テントに運ばれ

ジローニ部長にアフリカの医療キャンプの全スタッフから

「ありがとう」のビデオレターがジローニ部長に届きます

思いがけず涙が出てしまい、ジローニ部長は自分で

自分にも人間らしい心があったことに驚くのでした

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主題歌の♪昔のイタリアは〜~♪の歌詞がうまいですね

借金は子どもたちが払ってくれるさと、無駄なことにお金を使いまくり

昔のイタリアは、まるで今の日本


お金の問題だけではなく、民主主義、社会福祉、動物保護や環境

人種差別、宗教、同性愛結婚というあらゆるネタを笑いにしながら

最終的にまるくまとめるこのセンス

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くだらないのに、しっかりと社会問題まで考えさせられる

EU系コメディの秀作だと思います



【解説】映画.comより

終身雇用を求めて公務員になった男がリストラの対象になってしまったことから巻き起こる騒動を描き、イタリアで大ヒットを記録したコメディドラマ。終身雇用の仕事に就いて安定した人生を送るという子どもの頃からの夢をかなえ、15年前に公務員になった独身男性ケッコ。しかし政府の方針で公務員が削減されることになり、ケッコもその対象になってしまう。それでも公務員の職にしがみつこうとするケッコをどうにか退職に追い込みたいリストラ担当者は、ケッコに僻地への異動を命じ続け、ついには北極圏へと左遷する。主演はイタリアで人気の喜劇俳優ケッコ・ザローネ。日本では「イタリア映画祭2016」で「オレはどこへ行く?」の邦題で上映後、175月よりヒューマントラストシネマ有楽町で開催の「Viva! イタリアVOL.3」にて劇場公開。