アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング(2018)

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原題も「I FEEL PRETTY」(可愛くなった気がする)

ありきたりのサクセスコメディですが、私は好かった
仕事や人間関係で辛さを感じている
コンプレックスで生きることが苦しい
そんな悩める女の子達が、少しでも元気になってほしいという
メッセージを感じます

 

【ここからネタバレあらすじ】

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チャイタウンのビルの地下で化粧品会社のOLをしている
レネー(エイミー・シューマー)は太っていることを気にするあまり
何もかもがマイナス思考、仕事にも恋愛にも積極的になれません

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そんなある日、ダイエット目的のためソウルサイクルに挑戦しますが
気合が入りすぎてしまい転倒(笑)
しかしすっかり暗示にかかったレネーは
目が覚めた時、自分が完璧な女性に変身したと思い込んでしまいます

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ソウルサイクルとは、暗闇にミラーボール
大音量のノリのいい音楽をかけたクラブのようなスタジオで
インストラクターのポジティブな掛け声とともに
バイクを漕いだり筋トレするというもの
ライブに行ったかのような高揚感や没入感を感じることができ
しかも消費カロリーは45分で約800kcal
(通常のエアロバイクのトレーニングは60分で約300~600kcal)

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レネーは圧倒的勘違いで本社の受付嬢に応募し
優れた対人能力で社長のエイヴリーに認められ
広報担当に抜擢されます

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プライベートでもクリーニング店で知り合った恋人ができ
水着大会に出場すれば会場は大盛り上がり
「自分は魅力的だと知っているし、他人の評価なんて気にしない」と
彼女の言葉に周りの人間は勇気づけられるのです

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だけど快進撃を続けるレネーの過剰な自信に
だんだん不安になってくる

案の定、セレブ気取りで親友を見下し説教してみたり
同じ職場で働く女性に人種差別的発言をしたり
あまりにも配慮を欠く態度に見かねた彼氏には捨てセリフ

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そしてプレゼンのため、ボストンに向かったレネーは
ホテルのシャワーで頭を強打し失神
気が付くと魔法は消え、鏡に映っていたのはただのデブの女
突然怖くなり、無責任にもその場から逃げてしまうのです

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何かしらの失敗で、仕事を辞めるか辞めないかの岐路って
誰にでもあると思うんです
でもレネーは失敗したことで、大切なものに気が付いた

女性の美しさは外見や、年齢や、人種じゃない
やさしさや思いやりという中身からくるもの
「This is me 」これが私
会場に戻り、プレゼンは大成功します

【ネタバレあらすじ終了】

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ヒロイン役のエイミー・シューマーはアメリカの人気コメディエンヌ
実際にもSNSによるボディシェーミング(体型への侮辱)な
書き込みに真っ向から立ち向かい
スイムウェアデザイナーから「ブタ」と呼ばれれば水着姿を公開(笑)
「ありのままの自分でいい!」というポジティブなメッセージを
世界中に発信しているそうです

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これは100%夢物語ではなく
ポジティブになるための女の子のためのパワー映画(笑)
だれでも彼女のように強くなれるわけではないけれど
エネルギーのおすそ分けをもらえることには、間違いないと思います

 

 

【解説】allcinemaより
「エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方」の人気コメディエンヌ、エイミー・シューマー主演で贈るコメディ。ぽっちゃり体型で容姿に自信を持てなかったヒロインが、転倒して頭を強打したのをきっかけに、自分を完璧な美人と思い込むようになり、ポジティブになって周囲に大騒動を巻き起こしながらも思いがけず人生が好転していくさまをコミカルに描く。共演はミシェル・ウィリアムズ、エミリー・ラタコウスキー、ナオミ・キャンベル、ローレン・ハットン。監督は「25年目のキス」「そんな彼なら捨てちゃえば?」などを手掛ける人気脚本家コンビで本作が長編監督デビューのアビー・コーン&マーク・シルヴァースタイン。
 サエない容姿のせいで自分に自信が持てないレネー・ベネット。高級コスメ会社リリー・ルクレアのオンライン部門に勤めている彼女だったが、華やかな本社で働く美女たちに刺激を受け、自分もスリムになろうとジム通いを始める。ところがトレーニング中に転倒して頭を強打し失神してしまう。その後、ようやく意識を取り戻したレネーの目には、なんと自分の姿が絶世の美女に見えるようになっていた。実際には何ひとつ変わってないにもかかわらず、その言動はすっかり自信に満ち溢れ、意外にも仕事も恋も絶好調になるレネーだったが…。

ロング・トレイル!(2015)

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「この道は人生と同じ 先は見えなくともベストを尽くす」

原題は「A Walk in the Woods」(森の中の散歩)
原作は1998 年に発表されたビル・ブライソンのノンフィクション紀行本

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これを見たなら誰もが、ポール・ニューマンの生前に
レッドフォードと共演してほしかった思うはず
レッドフォード本人も制作が決定した2007年のインタビューで
ニューマンと一緒に最後の映画を撮ってほしかったとコメントしたそうです
残念ながらその時すでにニューマンは癌と診断されていて
撮影できる状態ではありませんでした
あと5年早く映画の制作が決まっていればと悔やまれます

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「アパラチアン・トレイル」とはアメリカ東部のジョージア州から
メイン州にかけて14州にまたがる約3,500kmの自然歩道
年間訪問者は約400万人、踏破するのは一割
春の雪解けにスタートし、最終地点のメイン州カタディン山が閉鎖される
10月15日までゴールすることを目指すそうです(最速制覇は45日)

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当時46歳だったビル・ブライソンを
世界一爽やかな爺(当時)齢80のレッドフォードが扮します
三浦 雄一郎じゃあるまいし(笑)
実際の撮影は大変だったことでしょう
相棒はレッドフォードより4歳若い ニック・ノルティ

 

【ここからネタバレあらすじ】

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人気紀行作家のビル・ブライソンは、故郷アメリカに帰り
妻(エマ・トンプソン)や孫たちと穏やかに過ごしていましたが
いつか「アパラチアン・トレイル」に挑戦したいと思っていました

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過酷な旅に奥さんは猛反対、しかし熱意に負けてしまい
ひとりで行くのだけは禁止だといいます
そこでブライソンはかっての友人たちを誘いますが、なにしろ高齢(笑)
病気を理由に断られてしまいます
そこにやってきたのが、40年前仲違いして音信不通だったカッツ
だけど太っているし、足は悪いし、本当にアンタ大丈夫?って感じ(笑)

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案の定、ハイキングでは他のハイカーやボーイスカウトに追い抜かれ
ふたりはかなりのスローペース

おまけにお喋りなウザイ女ハイカーに付きまとわれる始末
ふたりは朝早く起きて、彼女を置いて出発し
若い男女が運転する車に拾ってもらい次の町に入ります

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「アパラチアン・トレイル」って登山とは違って
コース中に町があって、モーテルやダイナーで休憩したり
スーパーなどで食料や物資の補給
ランドリーで溜まった洗濯物をするなど
かなりフレキシブル(柔軟性がある)

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ブライソンはモーテルの女性経営者とちょっとイイ感じになり
メアリー・スティーンバージェンに堕ちない爺はいない 笑)
カッツはランドリーで太ったマダムと話が弾んでデートの約束
だけどマダムの旦那がバットを持ってモーテルまでカッツを襲いにきた
慌てたふたりは荷物をまとめ窓から逃げ出します

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再びトレイルを歩き始めるブライソンとカッツ
どんなにドタバタで、何があっても、カッツがアバウトすぎるので(笑)
喧嘩にもならないのがいい(笑)

だけどカッツにもアルコール中毒で苦しんでいた時期がありました
絶景を眺めながら、最後の酒瓶の中身を捨てる
大自然の前では、死ぬほど辛かった自分の悩みでさえ
所詮小さなもの

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その夜(か、どうかわからんが)2頭の巨大なクマが現れ
次の日(か、どうかわからんが)
「熟練ハイカーのみ」という標識を見落としたふたりは
勾配のきつい道にさしかかり、やがて崖沿いを歩くハメになり
ついに数メートル下の崖下へ落ちてしまいます

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はるか下には川、救助を呼ぶ手立てもない
シャツとズボンでロープを作ってみたけれど登れるはずもない(笑)
だけどそこにあったのは、絶望を忘れるくらい素晴らしい景色と
満天の星空

そして翌朝、序盤にも現れた若いマッチョ自慢なふたり組が
崖下のふたりを発見し救出、救助隊にバギーで運ばれ
結局ふたりはトレイルをリタイアするのです

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だけど、踏破した人間だけがヒーローなわけじゃない
たとえ成功しなくても、自分だけのやりたいことを
やり遂げることだって生きていくのには大切なこと

旅の終わりは、バス乗り場で別れ
やがてカッツから届いた絵葉書にホロリとくる

【ネタバレあらすじ終了】

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とにかく、キャンプやハイキングが好きなアウトドア派には見てほしい
主人公同様に「アパラチアン・トレイル」に挑戦したくなること
間違いありません

 


【解説】allcinemaより
人気ノンフィクション作家ビル・ブライソンのベストセラー紀行本『ビル・ブライソンの究極のアウトドア体験 北米アパラチア自然歩道を行く』をロバート・レッドフォードニック・ノルティの共演で映画化したコメディ・ドラマ。全長約3500kmの“アパラチアン・トレイル”踏破という無謀な冒険に挑戦した悪友2人が、老体に鞭打ちながら繰り広げる珍道中の行方をユーモラスに綴る。監督は「旅するジーンズと16歳の夏」「だれもがクジラを愛してる。」のケン・クワピス。
 長年英国で暮らしていた紀行作家のビルは、故郷の米国へ戻り、ほぼセミリタイア状態で悠々自適の生活を送っていた。しかし平穏な毎日に物足りなさを感じていた彼は、近くを通る北米有数の自然歩道“アパラチアン・トレイル”を踏破したいとの欲望がふつふつと湧き上がる。しかし全長は3500kmにも及び、順調に進んでも半年はかかる過酷な行程。最低でも同行者がいなければ許可できないという妻を納得させるため、一緒に旅してくれる仲間を探すもなかなか見つからない。そんな中、40年来音信不通となっていたかつての悪友カッツが旅の相棒を買って出る。こうして老境を迎えたオジサン2人は、いざ過酷なロングトレイルへとその一歩を踏み出すのだったが…。

囚われの美女(1983)

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タイトルはマグリットの「LA BELLE CAPTIVE」(囚われの美女 )から
ルネ・マグリット(1898~1967 68歳没)とはベルギー生まれの
シュルレアリスム運動(無意識の探求・表出による人間の全体性の回復)の重要人物
現実ではありえない夢の中の不合理性を突き詰めた画家

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ザ・ビートルズが、自ら1968年に興したレコードレーベル
アップル・レコードのデザインは、ポール・マッカートニーが所有する
マグリットの絵が使用され、猥褻か芸術か物議を呼んだそうです

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話はそれましたが(笑)
マグリットの「囚われの女」を見れば
アラン・ロブ=グリエがオマージュを捧げていたことがわかります
マグリットの絵画のように、海辺に額縁を置くことで虚構を生み
額縁は取れますが赤い幕は残り、手前にあったものが遠くだったりする
まさしく夢の中の不合理性

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それでもロブ=グリエのなかでは最もわかりやすい作品だと思います
過激なシーンはほぼないですし、時系に連続性があり
一応ストーリーもある(笑)
日本では唯一の、ロブ=グリエの劇場公開作品です

 

【ここからネタバレあらすじ】

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男はダンスクラブで踊る金髪の美女に心を奪われます
ロブ=グリエは音楽にも精通しているご様子 笑)
しかし彼女は場所も電話番号も教えてくれない、名前も失ったという
そこにボスのサラから電話がきて目を離した隙に美女は消えてしまいます

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サラからの指令は、ある大物に今晩中に伝言の書いた手紙を渡すということ
車を走らせ任務に向かう途中、道端でさきほどの美女が
血を流し後ろ手に縛られ倒れていました

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医者を呼ぼうと近くの屋敷に助けを求めに行くと
黒いタキシードの怪しい男たち、 突然裸になる女
次の日目が覚めると、屋敷の中は荒れ誰もいませんでした

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手紙を渡すはずの大物のところに行けば、男はすでに死んでいて
売店の新聞で美女も殺されていたことを知る

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果たして美女は実在したのか
残されたのは彼女を縛り付けていたチェーンと
血のついた片方のサンダルだけ

【ネタバレあらすじ終了】

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「快楽の漸進的横滑り」(1974)もですが
片方の靴はシンデレラ(消えた理想の女性)の象徴
これは冥界の美女を探し続ける
(よく言えば)ロマンチック・ホラーなのだと思います
それとも高度すぎるギャグなのか(笑)

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これでベベちゃんのロブ=グリエ特集は終わり
とにかく、美女、美女、美女は堪能できます

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ひとこと感想は、アート系映画を6作連続で見るのは
さすがに疲れる、でした(笑)


【解説】映画.comより
フランスで第2次大戦後に巻き起こった文学界のムーブメント「ヌーヴォー・ロマン」の旗手といわれる作家アラン・ロブ=グリエが監督・脚本を手がけ、シュルレアリスム画家ルネ・マグリットの多数の絵画をモチーフに描いた不条理サスペンス。デューク・エリントンのジャズナンバーが流れる場末のナイトクラブ。なまめかしく踊るブロンド美女を、黒いスーツ姿の男が見つめている。その男バルテルは、地下組織で情報の運び屋をしている。バルテルが目を離した隙に、女は姿を消してしまい……。出演は「逃げ去る恋」のダニエル・メグイシュ、「婚約者の友人」のシリエル・クレール。日本では1989年6月に劇場公開。

快楽の漸進的横滑り(1974)

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「美しい死体を作りたいだけ」
原題は「Glissements progressifs du」(快楽の斬新的な変化)

「フレンズ ポールとミッシェル」(1970)と「続フレンズ」(1973)
私は小学生の頃テレビの吹替でみたきりで
14歳の女の子が妊娠出産、ラストで引き裂かれ続編で再会という
おおまかなあらすじしか記憶にないのですが
映画のヒットと共にヒロインのアニセー・アルピナは日本でも人気爆発
映画雑誌の人気投票では常に上位だったそうです

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しかし本作は過激なサドマゾヒズム
ネクロフィリア(死体愛好)を思わせる描写のため各国で上映禁止
もちろん日本でも未公開
でももし当時、日本の映画配給会社による
ヘタクソな「ボカシ」で見ていたら魅力は半減していたと思います

 

【ここからネタバレあらすじ】

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アリス(アニセー・アルビナ)のルームメイト、ノラが
ベッドに縛り付けられ、ハサミで胸を刺された状態で見つかります
刑事(ジャン=ルイ・トランティニアン)が駆け付け捜査しますが
アリスは譫言(うわごと)しか言いません

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アリスは修道女が管理している女子感化院に入れられ
真相を解明しようとする判事(マイケル・ロンズデール)や
修道女や神父までもを、魔力的な美貌と不可解な言動で惑わしていきます

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プロットは殺人事件の捜査というミステリーですが
どうやらアリスは人間の血に執着しているようです
拷問にかけられた血まみれのマネキン人形
断崖から転落した女教師の死体のブラウスを引き裂き、乳房と口を愛撫する
赤い飲み物、赤いペンキ

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美少女の皮を被ったサイコパス感がたまらない
素晴らしいファムファタール振り

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ついには女弁護士(叶恭子そっくり)を実況見分中に殺してしまう
ところがノラを殺したのは自分の作り上げた妄想で
最初の供述通り、実は別に犯人がいたというオチ
「最初から全部やり直しだ」と刑事がつぶやく

 

【ネタバレあらすじ終了】

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大胆で残酷で異常な世界観、数々の禁断のテーマと美しさの同居
その中にちょっとコメディを入れてくるセンス

可笑しいのが、女弁護士がアリスに対して言うセリフで
「あなた少し遊びすぎよ、類似、繰り返し、置き換え、模倣、もう沢山」
ロブ=グリエ、自分でもそう思っていたんだ(笑)

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あまり難しいことは考えず、ビジュアルで
可愛い女の子たちとSMプレイを見る映画
これは現実でないのです

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【解説】映画.comより
第2次大戦後のフランスで生まれた文学界の潮流「ヌーヴォー・ロマン」の代表的作家として知られるアラン・ロブ=グリエが監督・脚本を手がけ、そのセンセーショナルな内容からヨーロッパ各地で上映禁止となった問題作。ルームメイト殺害の容疑で逮捕された美女アリス。心臓にハサミが突き刺さった被害者の体には、描きかけの聖女の殉教の絵が残されており……。出演は「フレンズ ポールとミシェル」のアニセー・アルビナ、「男と女」のジャン=ルイ・トランティニャン、「007 ムーンレイカー」のマイケル・ロンズデール、「ピアニスト」のイザベル・ユペール。日本では、特集上映「アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ」(18年11月23日~、東京・シアター・イメージフォーラム)で劇場初公開。

エデン、その後(1970)

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原題は「L'éden et après」(エデンとアフター)
“『不思議の国のアリス』と『O嬢の物語』の恐るべき邂逅“と
評価されたロブ=グリエ初のカラー作品

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アートフィルムとして傑作、冒頭から素晴らしいですね
サディスティックだけど、ギリギリしか見せないし
セックスシーンそのものもないので、女性でも抵抗なく見れると思います
ただし、寝落ちしてしまう人も多いようです(笑)

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相変わらず女優の選球眼はたいしたものもの
女の子を縛って、目隠しして、檻に閉じ込めるのも
女の子をより美しく、セクシーに見せるため

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ロブ=グリエは人形好きのペドフィリア(小児愛者)だったそうですが
意外にも実生活は真面目で(笑)妻(カトリーヌ・ロブ=グリエ)一筋
そんなロブ=グリエが唯一寝ていたのが本作に出演していた女優
(女優名は明かされていません)なのだそうです
しかし浮気を許容しあっていたので、夫婦の関係が壊れることはなかったそうです
さすがおフランスですね

 

【ここからネタバレあらすじ】

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モンドリアンの迷路のような「カフェ・エデン」で
大学生のヴィオレットは友人たちと、SM儀式や殺人といった
ごっこ遊び」に興じていました、でも楽しくはない

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ある日、デュシュマンと名乗る謎の男がやってきて
学生たちに魔法の粉の与え、学生たちも刺激を求めてその粉を舐め
混沌の世界へと誘われていくようになります

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しかしそれにも飽きてきた若者たちは
ヴィオレットの持つ高価な絵画を売って、旅に出る計画します
デュシュマンもその絵を狙うひとり

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ヴィオレットの部屋から絵画は消え
彼女は消えた絵画とデュシュマンを探しにチュニジアを訪れます
そこでアラブ人に誘拐され、目隠しされ監禁されてしまいます

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チュニジアって綺麗で魅力的な国ですね
青いドアの真っ白い箱家、白い岩、白い砂浜に青い海のコントラスト

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そんな美しい場所で血だらけのバスタブ
レズビアン(分身)
SMプレイ中の女の子たちのヌードやセミ・ヌード
お決まりの誰かが死んだり、生き返ったり(笑)

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そして再びふりだしに戻り
すべては「ごっこ遊び」だったというオチ

【ネタバレあらすじ終了】

 

ロブ=グリエカタルシスは必要ない(笑)
ここまで同じことを繰り返す姿勢は、ある意味清々しい

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それでもロブ=グリエの作品には、レイプや拷問のような性嗜好の
有害なイメージを少なくしたいという試みがあったようです
それをただの前衛映画に終わらせなかったのは
彼がどんな監督より卓越した画力の持ち主だったからでしょう

 


【解説】映画.comより
ヌーヴォー・ロマン」の旗手と呼ばれたフランスの作家で前衛的な作品を多数手がけた映画監督でもあるアラン・ロブ=グリエの監督第4作。カフェ・エデンにたむろするパリの大学生たち。退廃的な遊戯や儀式に興ずる彼らの前に、謎の男が姿を現す。男が差し出した麻薬らしき粉末を摂取したバイオレットは、死や性愛をめぐる様々な幻覚に襲われる。ロブ=グリエ監督にとって初のカラー作品で、めくるめくエロティックな幻想を極彩色の映像で表現した。バイオレット役に「あの胸にもう一度」のカトリーヌ・ジュールダン。日本では、特集上映「アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ」(18年11月23日~、東京・シアター・イメージフォーラム)で劇場初公開。

嘘をつく男(1968)

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「僕の話をしよう
 少なくともそう努めたい」

原題も「L'HOMME QUI MENT/THE MAN WHO LIES」(嘘をつく男)
またもや現実と虚構とSM
しかも"嘘"がテーマなので、少しややこしい
ロブ=グリエが戦争PTSDを描くとこうなります

 

【ここからネタバレあらすじ】

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第二次大戦末期のスロバキア共和国
森で銃弾に追われるジャン・ロバン、またはボリス
またはウクライナ人と呼ばれる男が(ジャン=ルイ・トランティニャン)
レジスタンスの英雄で、同志だったジャンの故郷を訪れます

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館で目隠し遊びをする3人の女は ジャンの妻ローラと
妹のシルヴィアそして召使いのマリア
館にはジャンの父と執事の男も住んでいます
ホテルのバーの可愛いウエイトレス
女たちはボリスと話しますが
男たちはボリスを冷たく拒絶します

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相変わらずロケ地が素晴らしい
時代を超えたスタイリッシュさと
女性をエロティックに捉えるショットも秀逸

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自分が英雄のジャンを助けたと自慢したり
ジャンが撃たれたので小屋に隠して医者を探しに来た
いいや、ジャンは地下で崖から落ちて死んだと言いますが
誰も信じません

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女たちはハサミで髪を切ったり、縄で縛ったり(笑)
ギロチンを思わせる形の丸太
立った状態で後ろ姿の首を絞める
何かの儀式をしているように見えます

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どうやらボリスはジャンを裏切って戦争を生き残った様子
死んだジャンがストップモーションでボリスを見つめる

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それでもボリスは言葉巧みに女たちを誘惑し始め
最初は召使い、次に妹と寝て屋敷に潜り込む
ついにはジャンの妻を口説こうとします

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そこに死んだジョンが現れ、ボリスを3発撃つ
しかしボリスは起き上がり再び森を彷徨うふりだしに戻ります
ボリスはジャンなのか
生きているのか死んだのか(村にはボリスの名前の書かれた墓がある)

【ネタバレあらすじ終了】

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3作目にしてやっと、ロブ=グリエには
(私の解釈で)時間の流れや、生死の観念がないことを発見
現在も過去も未来も、生も死も同時に存在しているのです

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ベルトルッチの「暗殺のオペラ」(1970)との違いも
いつか見比べてみたいと思います

 


【解説】映画.comより
20世紀の文学界に起こったムーブメント「ヌーヴォー・ロマン」を代表する作家アラン・ロブ=グリエの映画監督第3作で、ボルヘスの短編「裏切り者と英雄のテーマ」を下敷きに描いたドラマ。第2次世界大戦末期、ナチス傀儡政権下のスロバキア共和国。小さな村に、レジスタンスの英雄ジャンの親友だという男が現れて彼の妻や妹を誘惑しはじめ……。「男と女」のジャン=ルイ・トランティニャンが主演を務め、第18回ベルリン国際映画祭で男優賞を受賞。日本では、特集上映「アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ」(18年11月23日~、東京・シアター・イメージフォーラム)で劇場初公開。

ヨーロッパ横断特急(1966)

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原題は「Trans-Europ-Express」
アラン・ロブ=グリエ自身が映画監督役で
プロデューサーとアシスタントとともに
パリからベルギーのアントワープ行きの列車(TEE)に乗りながら
この列車を舞台に映画を作ろうと構想を練る
メタフィクション(フィクションについてのフィクション)

 

【ここからネタバレあらすじ】

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主役はジャン・ルイ=トランティニャンで麻薬の運び屋
売店でSM雑誌を買い込み(笑)
怪しい男とスーツケースを交換してTEEへ乗り込む
滞在先のアントワープで警察と麻薬組織両方から追われる、という
監督のアイディアを反復

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あまりに監督の筋書が適当なので(笑)
アシスタントがツッコミを入れるたびに
途中から、または最初からやり直しの繰り返し
次から次へと別バージョンの物語が出来上がっていく

しかもロブ=グリエにツッコミを入れるアシスタント役の女優が
ロブ=グリエ本当の奥さんというのが笑える(笑)

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どこまでが現実かどこからが虚構かわからないまま
トランティニャンはブツを運ぶ合間に娼婦をベッドに拘束
実は娼婦は麻薬組織のスパイとわかり首絞めプレイで絞殺
どんな危険な立場になってもSM優先(笑)

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警察はトランティニャンをおびき寄せるため
彼の好きなSMモデルのショーの新聞広告を出します
まんまと引っかかってショーにやってきたトランティニャン
観客に扮した婦人警官が「楽屋に案内するわ」といえば
とことこと付いていき(笑)やってきた警察官に撃たれて終わり

 

【ネタバレあらすじ終了】

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一応サスペンスだけど、緊張感はゼロ
ロブ=グリエが自分趣味を映像にしたかったとしか思えない
それをトランティニャンが大真面目に演じるんだから(笑)

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それでもトランティニャンだし、女の子はどの子も可愛いし
部屋に「ロシアより愛をこめて」(1963)や「いつか見た青い空」(1965)の
シネフィルが喜ぶようなポスターが貼ってあったり
B級とは呼ばせない何かはあります

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評価もわるくないようで「最も成功した、理解しやすい実験映画」と
言われているそうです

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【解説】映画.comより
20世紀の文学界に革命を起こしたムーブメント「ヌーヴォー・ロマン」を代表する作家アラン・ロブ=グリエの映画監督第2作。パリからアントワープへ麻薬を運ぶ男が繰り広げる波乱万丈な道中を、幾重にも重なったメタフィクションで構築。スリラーの枠組みを借りてシリアスとコミカル、嘘と真実、合理と非合理の境界を軽やかに行き来する。公開時は「ヨーロピアン・アバンギャルドの最重要作品」と評され、ヒットを記録した。出演は「男と女」のジャン=ルイ・トランティニャン、「アントワーヌとコレット 二十歳の恋」のマリー=フランス・ピジェ。映画監督役でロブ=グリエ自身も出演。日本では、特集上映「アラン・ロブ=グリエ レトロスペクティブ」(18年11月23日~、東京・シアター・イメージフォーラム)で劇場初公開。