スコルピオ(1973)

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アラン・ドロン生誕84年記念祭」
(2019年11月9日12:30~銀座タクトにて)
今日も勝手に前夜祭(笑)
7作目は原題も「SCORPIO」(さそり座)

アメリカのバート・ランカスター
フランスのアラン・ドロン
そしてイギリスのポール・スコフィールドという
豪華大物キャストを迎えて挑んだスパイ・サスペンス

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当時アメリカでは、CIAが関与した
ウォーターゲート事件」が世間を騒がせ
国家権力への強い不信感が高まっていました

その「ウォーターゲート事件」の主犯格
元CIA工作員ジェームズ・W・マッコード・ジュニアらが逮捕されたその日
マイケル・ウィナー監督は本作のワシントンD.C.での撮影のため
同じウォーターゲート・ホテルに宿泊していて
その出来事は、その後のウィナー監督の演出に影響を及ぼしたそうです

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プロットはジョン・ル・カレのスパイ小説を彷彿させる
悲観的、厭世(えんせい)的なトーン
なのでアクションシーンより、人間ドラマに比重が置かれています
雰囲気の暗い映画が好きな人向きで
痛快な娯楽アクションを望むタイプには退屈かも知れません

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CIAのベテラン諜報部員クロス(バート・ランカスター)と
フランス人の殺し屋ローリエアラン・ドロン)は
パリ・オルリー空港で中近東某国の首相を暗殺し
ワシントンへと向かいます
空港ではクロスの妻サラ(ジョアンヌ・リンヴィル)が夫を出迎え
ローリエはCIAの大物、フィルチョク(J・D・キャノン)と接触
ローリエはパリでクロスも暗殺するよう命令されていましたが
従わなかったのです

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CIA本部長であるマクロード(ジョン・コリコス)は
クロスは二重スパイでソビエトKGBと通じているといいますが
長年クロスと仕事をしてきたローリエは信じられない
依頼を断ります

そこでCIAは、ローリエが(妹の親友)恋人スーザン(ゲイル・ハニカット)と
ホテルでお楽しみ中に踏み込み、麻薬所持の濡れ衣を着せます
そして30年服役したくなければ、クロス殺しを強要するのです

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そこでローリエは、マクロードに2万5千ドルの報酬と
CIAでのクロスのポジションを要求します
でなければクロスから知ったCIAの秘密を暴露すると脅しました
(万が一のため証拠書類を隠している)

一方、身の危険を感じたクロスは、CIAの監視をかわし国外へ脱出
ウィーンへ行きKGB工作員のザルコフ(ポール・スコフィールド)に
匿ってもらうことにしました

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ザルコフはKGBもCIA同様だと嘆いていました
人情も柔軟性もない、独裁主義の若い上司マルキンのことを
スターリン時代に威勢を振るった、本の知識しかない(真の共産主義と違う)
マルクス主義と同じだと皮肉ります

私たちは滅びゆく「恐竜」
たとえ敵国のスパイでも、お互いの国や思想を認め合った時代は終わった
(それが二重スパイというのであれば)消えゆくしかない
昔気質な男の万感の思いと哀しみ

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ローリエはクロスの逃亡先を知っていました
クロスの逃亡方法、経路、全て予想することができます
それくらいクロスは、ローリエにスパイのノウハウの
全てを教え込んでいたのです
早速ウィーンに飛びクロスと対峙しますが、相手もプロ中のプロ
猛追(もうつい)の末逃げられてしまいます

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次にCIAはクロスの妻、サラにかかってくる長距離電話を盗聴
クロスは友人に連絡係を頼み、公衆電話から
「図書館に本を返してほしい」伝えてもらいます
サラが外出し、閉館間際の図書館に入ってから出るまでの姿を追う
CIAの尾行と8ミリカメラによる隠し撮り

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ウィーンでの任務に実質上失敗したローリエ
CIAに戻りクロスの二重スパイの証拠を見せろと迫ります
マクロードが見せたのは、多額の振り込みがされている各国の通帳
ソビエトの空港での、飛行機から降りKGBの重要人物と会う数枚の写真
そしてクロスの妻サラの隠し撮りのフィルム

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その隠し撮りフィルムの、サラが図書館から出てきたところで
ローリエは思わず身を乗り出し、何度も再生を繰り返す

サラの後ろに写っていたのは、ローリエが誰よりも信頼していた
恋人のスーザンの姿でした、サラの連絡係はスーザンだったのです
妹とルームシェアしたのも、自分に近づくため
CIAの調べでスーザンはチェコのスパイだとわかります

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スーザンがサラに渡した何かを探すため、CIAは本物のコソ泥を雇い
サラが隣人(夫はCIA職員)の家のパーティに行っている間に
証拠とを探そうとします
しかしサラがパーティの途中で自宅に戻ろうとしたとき
不審な明かりに気が付き、車に隠していた銃を持ち出し発砲
逆に射殺されてしまいます

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サラの悲報を知ったクロスは、ローリエの予測通り
マクロードに復讐するためワシントンに戻ってきます
頼りになる黒人の仲介役に頼み、ボクシングジムに通うガタイのいい男と接触

そしてマクロードが食事に出かけるため車で出かけると
そのガタイのいい男が車の前に飛び込み、撥ねられてしまう
人々が集まり、動かすな、救急車だ、車は立往生
その騒動の中クロスは現れ、紙袋に隠した銃でマクロードを射殺します

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ローリエはスーザンのアパートの前に車を止め
彼女が姿を現すと、尾行を開始
スーザンの車は、予想通りクロスが待つ場所へ向かいます
そこにローリエが現われる

ローリエは何も聞かず、走り寄ってくる彼女を見つめたまま引き金を引き
クロスも撃ち殺します

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任務を終えたローリエの足許に、野良猫がじゃれつく
その一瞬の隙を、CIAの銃口が襲う
結局はふたりとも組織の捨て駒だったのです
そのときのローリエの目

これこそドロンさまの哀愁
世界一、犬死が似合う男(笑)

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バート・ランカスターもかっこよかった
この時60歳
日本の還暦おじさんも見習わなくてはいけません(笑)

監督のマイケル・ウィナーは料理批評家としても有名
しかしグルメが祟って食中毒に、肝臓病
何度も死の淵を彷徨い
医者が食べるのをやめろと言っても聞かなかったとか(笑)

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映画のタイトルと関係あるのかどうかわかりませんが
ドロンさま、ランカスター、監督ともにさそり座生まれだそうです

 


【解説】MovieWalkerより
ワシントン、パリ、ウィーンを舞台に、巨大な組織CIA(アメリカ中央情報局)に挑む殺し屋の姿を描く。製作はウォルター・ミリッシュ、監督はマイケル・ウィナー、脚本はジェラルド・ウイルソンとデイヴィッド・リンテルズ、撮影はロバート・パインター、音楽はジェリー・フィールディングが各々担当。出演はバート・ランカスターアラン・ドロンポール・スコフィールド、ジョン・コリコス、ゲイル・ハニカット、J・D・キャノン、ジョアン・リンヴィル、ヴラデク・シーバル、メル・スチュアート、バーク・バーネスなど。

パリの灯は遠く(1976)

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2019年11月9日(土)12:30(開場12:00)~
銀座タクトにて、チェイサーさん主催する「アラン・ドロン生誕84年記念祭」の
今日も勝手に前夜祭(笑)

なんでもドロンさまの主演作のなかで
一番の誇りにしているのがこの作品なのだそうです
原題は「MONSIEUR KLEIN」(ムッシュ・クライン)

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プロット(物語の筋)は「トワイライト・ゾーン」のようで
ドッペルゲンガー的な展開に目が離せない
脚本は「アルジェの戦い」(1967)のフランコ・ソリナス
ここでもナチス協力や、ユダヤ人の迫害を突いていて
フランスの暗部を描くのが得意な作家だと思います

ビリー・ワイルダー作品などでも活躍した
アレクサンドル・トローネの美術も素晴らしい

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1942年、ドイツ軍占領下のパリ
美術商ロベール(アラン・ドロン)は
愛人ジャニーヌ(ジュリエット・ベルト)をベッドに残し
ユダヤ人の男から、先祖伝来という高価な油絵を
安く買いたたいていました

略奪されるより、少しでも金にしたほうがましなのでしょう
ユダヤ人は渋々承諾し、ロベールの部屋を去ろうとしたその時
ドアの前に“ユダヤ通信”が配達されていました

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ユダヤ通信社に行き同姓同名の人違いなので取り消してくれと頼んでも
名簿を警察が没収してしまったという
警察に行けばユダヤ人でない証明を持ってこいという

冒頭で全裸の女性が、目、鼻、口、耳たぶの大きさ
体系に歩き方まで医師によって検査されていたのも
ユダヤ人でないという証明をもらうためだったのです

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ロべールは父親の元に急ぎ
祖父はカトリック系のフランス人、祖母はアルジェ生れと聞き
友人の弁護士ピエール(ミシェル・ロンダール)に証明書を依頼しますが
アルジェもドイツ占領下で書類がいつになるかわからない
手遅れになる前に、医師に証明してもらうよう警告します
しかしロベールは「動物じゃないんだ」「フランス政府を信じる」と
断固診断を拒否するのです

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そんなある日、ロベールのもとに偽ロベールの
恋人と思われる女性から恋文が届きます
偽ロベールが誰か知りたいロベールは、指示通り汽車に乗り
ある城の晩餐会に行きつき、手紙の差出人
フロランス(ジャンヌ・モロー)と会います

ジャンヌ・モローって、不機嫌な顔つきで美人でもないし
スタイルも特別いいわけじゃないのに
気迫だけで特別な女に魅せる
魔女ですよ(笑)

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フロランスはロベールはユダヤ人でないし無神論
極めて教養が高いと言います
ではなぜ、ロベールになりすましユダヤ人として登録したのか
偽ロベールの住んでいたアパートを訪ね
一緒に写真に写っているダンサーの女を探す

ピエールから探偵ごっこはやめろと言われても引き下がれない
やがて警察の手入れで全ての財産は没収され、ジャニーヌも去って行く
ピエールは一刻も早くパリから逃れるように
偽名のパスポートと旅券を渡しますが

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乗り込んだ汽車の向かいの席に座っていたのは探していた写真の女でした
ロベールがロベールの友人だと語ると
彼女はうっかりカンガルー女(アパートの管理人)が
ロベールを匿っていると漏らしてしまいます
あの部屋は空き室ではなかった
もうひとりのロベールはまだあそこにいる

ロベールは汽車から飛び降り、家に戻ります
そしてもうひとりのロベールに電話すると
彼も「君と話をしたかった」と答えるのです
しかしロベールがアパートに到着したとき
もうひとりのロベールは警察に連れ去られた後でした
通報したのはピエール

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真実は謎のまま
だけど偽ロベールが捕らえられたことで、これでもう安心と思った矢先
ユダヤ人の大検挙が行なわれ、ロベールも強制連行されます
そこで「ロベール・クライン!」のアナウンスに
男が挙手(もうひとりのロベールか)

しかも「祖母の出生証明が手に入った」「これで助かる」と叫ぶ
ピエールの声を耳にしながら
人混みに押されたロベールは列車に詰め込まれてしまう

無常に閉まる列車の扉

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この強制連行された人々が密集するスタジアムのような場所で
一度に集められたのがこれだけの人数というのが恐ろしい
当然ユダヤ人だけでなく、いろんな人種が混ざり込んでいる可能性は高く
これが何日間も続いたということなのでしょう

ロベールの頭の中では、油絵を買ったユダヤ人男性との会話が
リフレインしていました

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もうひとりのロベールは最後まで現れない
なのに、まるで彼が目の前に現れたような
鏡を使った素晴らしき演出力

そして人懐っこいシェパード
ドロンさまとシェパードって、ドロンさまと美女より
最高のツーショットかも知れません
似合いすぎる(笑)

 

【解説】allcinemaより
1942年、ナチス占領下のパリ。美術商のロベール・クラインは戦時中にも関わらず儲けた金で優雅な暮らしを送っていた。しかしある日、自分と同姓同名の男が存在する事を知った時から、れっきとしたフランス人であるはずの彼の生活は狂って行く。何と、もう一人のミスター・クラインはユダヤ人だったのである……。ナチスユダヤ人狩りに巻き込まれた男の悲劇を描いた作品で、'76年度の仏セザール賞で作品・監督・美術賞を受賞した。どっしりと重たい作風で知られるロージー監督ならではの素材だが、“自分と同性同名の謎の男を追う”というアイディアが成功、サスペンス映画として一級の仕上りになっている。ラスト・シーンにはかなりのショックあり。

リスボン特急(1972)

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原題は「UN FLIC」(警官)
ジャン・ピエール・メルヴィルの早すぎる遺作
享年55歳

始まってすぐ引き込まれる画の美しさ
メルヴィル・ブルー
サングラスに鍔のあるソフト帽子と
トレンチコートのハード・ボイルドスタイル
セリフと無駄を削ぎ落とした演出に酔う

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1台のダッジに四人の初老の男が乗っている
ハンドルを握るルイ・コスタマイケル・コンラッド
助手席には首領株のシモン(リチャード・クレンナ)
後部座席にマルク・アルブイ(アンドレ・プース)と
ポールウェベル(リカルド・クッチョーラ)

閉店まぎわの銀行に客を装って入るシモン右手にはコルト
続いてマルクが自動小銃を構え窓口の出納係から金を奪い
ポールが金庫の金を袋に金を詰させる

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一瞬の隙を見て、出納係が手際よく札束を投げつけ警報ベルを鳴らし
護身用のピストルを取りだしマルクを撃ちます
マルクの自動小銃も火を吹き、出納係が倒れる

4人は車で逃げ、 現金はひとまず空地に埋め
マルクを診療所に連れて行きます、助かる見込みは五分以下
そしてパリの家に戻るのです

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その夜、警察署長のエドアール・コールマン(ドロンさま)は
密告屋のギャビーから、ある組織と税関がグルになり
麻薬をリスボン特急で運ぶという情報を手に入れました
そして「銀行襲撃事件」を報じた夕刊を手に
シモンの経営するナイト・クラブにやってきます

さすがドロンさま、警察署長だからといって
決して善人なわけではなく(笑)

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シモンの愛人カティ(カトリーヌ・ドヌーヴ)を自分の情婦にし
ときどき逢引きしているのです
シモンもそのことを知ってるようで、愛人を金の代わりに
賄賂として渡しているようなものなのでしょう

それからシモン、ポール、ルイの3人は看護人に変装し
捜査から逃れるため、マルクを診療所から連れだそうとしますが
そこの受付嬢がかなりお堅い人間で、いくら書類がそろっていても
危篤で移動できないと言い張ります
その隙に看護婦になりすましたカティがマルクの部屋に行き
マルクに注射を打ち殺してしまいます

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そして次に3人はベンツに乗りボルドーに向かい
そこからヘリで午後7時59分発のリスボン特急を追いかけます
特急では運び屋マチュが麻薬をスーツケースに詰めていました
シモンはヘリから特急に降り、トイレでガウンに着替え
いかにも紳士のように運び屋の部屋に向かう

本当に磁石で鍵が開くのかどうかわかりませんが(笑)
アイディアは逸品

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麻薬の詰まったスーツケースを奪い再びヘリに戻る
銀行強盗もですが、ここらへんの描写がとても丁寧で
どんなトラブルがあっても彼らは冷静で絶対慌てないのです

私生活では全く共通点のない強盗グループなのですが
軍で特殊な訓練を受けた、昔の戦友ではないかと思わせます
そうでもなきゃ、こんな高度なヘリの運転ができるわけがない(笑)

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麻薬を盗まれた運び屋のほうも、悔しがるそぶりも見せずに
麻薬の入っていたスーツケースを車外に投げ捨て
淡々と証拠隠滅を図るリアル、たとえ失敗してもこれがプロの仕事だよ

パリでは死亡したマルクの身元が判明し、ルイを逮捕します
シモンとポールはルイは絶対口を割らないと信じますが

コールマンは密告屋のギャビーを殴りつけ脅したように
彼がいかに理不尽に暴力的な男か知っています
ナイト・クラブにシモンを訪ねるコールマン
シモンはポールに、ルイが喋ったことを
電話で知らせようとしますが間に合いませんでした

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ポールは銃身自殺をし
ホテルの前でスーツケースを持ち、カティの迎えの車を待つシモンを
その場でコールマンは射殺します

助手がポツリと「撃つの早すぎやしませんか」
シモンは丸腰だったのです

その光景をただ呆然と見つめるカティ
彼女がショックなのは愛人が死んだことだけでない
シモンを失うことは毛皮のコートも、宝石も失うこと
コールマンからは何ももらえない
それでも、共犯にもかかわらず彼女を逮捕しなかったのは
コールマンなりの愛しかただったのかも知れません

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メルヴィル×ドロンさまといえば
「サムライ」や「仁義」のほうが評価は高いですが
見やすさと、わかりやすさはこちらが上だと思います

ドロンさまとドヌーブのキスシーンだけでも
ファンを陶然させるのには十分(笑)

シャルル・アズナブール監修のエンディングテーマも評判通りGOOD
列車とヘリが模型なんて気にしません(笑)

 

 

【解説】KINENOTEより
銀行砲撃に端を発し、かたい友情の絆で結ばれながらも、対決の運命に向っていくパリ警察の鬼刑事と、夜のパリに君臨する顔役の二人の男と、その蔭で生きる哀しい女の運命を描く、フィルム・ノワール。製作はロベール・ドルフマン、監督・脚本・台詞・編集は「仁義」のジャン・ピエール・メルヴィル。撮影はワルター・ウォティッツ、音楽はミシェル・コロンビエ、美術はテオバール・ムーリッスが各々担当。出演はアラン・ドロンカトリーヌ・ドヌーヴ、リチャード・クレンナ、リカルド・クッチョーラ、マイケル・コンラッド、ポール・クローシェ、アンドレ・プス、シモーヌ・ヴァレール、ジャン・ドザイなど。

シシリアン(1969)

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2019年11月9日(土)銀座タクトにて12:30(開場12:00)から
チェイサーさん主催する「アラン・ドロン生誕84年記念祭」の
勝手に前夜祭(笑)

4回目はこれもドロンさまの代表作のひとつ
原題は「LE CLAN DES SICILIENS」(シチリアの一族)

やはり冒頭の警察の護送車から脱出させるシーンと
宝石強盗のアイディアが秀逸
警部の禁煙もこれでは続かない(笑)

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宝石泥棒のロジャー・サルテット(ドロンさま)が逮捕され
裁判所に連れて行かれます
そこに一組の警官と囚人がやってきて、サルテットのポケットに何かを入れた
裁判官の尋問後(一室づつ区切ってある)コンパートメント使用の
護送車に乗せられ、そこで先ほどポケットに入れられた鍵で手錠を外し
組み立て式の小さな弓ノコで車の床を切ります

交差点では女性の運転する車が立ち往生
その間に床に空いた穴からサルテットは逃げ出し
ヴィットリオ家に匿われることになるのです

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ドン・ヴィットリオ(ジャン・ギャバン)への謝礼は
サルテットの妹、モニークが一家に渡した小包み(価値のある切手)と
ローマの ボルゲーゼ美術館で展示されている”世界大宝石展”の
セキュリティシステムに関する手書きの設計図

ル・ゴフ警部(リノ・バンチュラ)はこの設計図を書いた囚人を見つけ
当然ここから犯行がバレると思うわけですが

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ヴィットリオは旧友で、ニューヨークで組長をしている
トニー(アメデオ・ナザーリ)を呼び
美術館のセキュリティを確認しますが、到底破れるものではありません
トニーは違う案を考えてみると、半分に破いた札の片方を持ち
ニューヨークに帰ります(かっこいい)

そんな緊迫したなか、サルテットだけは呑気に売春婦を買いに行ったり
ヴィットリオの息子のアルドの嫁のジャンヌ(イリナ・デミック)に
手を出そうとします(フランス公開版ではしっかり不倫しているそうです)
それをヴィットリオの孫に見られてしまう

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これが伏線になっていて、このバカ嫁の行動が
完全犯罪だったはずの宝石泥棒を、すべてぶち壊してしまうのです
ちなみにドロンさまが海岸で岩に叩きつけていたのは
ウツボだということ
ドロンさまにはこういう残虐なお姿がよく似合う(笑)

宝石を盗むのが、宝石を積んだ飛行機まるごと
ハイジャックするというのが凄いですね
偽造パスポートのくだりも緊迫感があって面白い

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サルテットはダイヤモンドディーラーのエヴァンスを誘拐し
エヴァンスになりすまし搭乗します
そこにやってきたのが「夫と約束をしている」という本物のエヴァンスの妻
ヴィットリオは電話でパリ警察を名乗り、エヴァンスの妻に
秘密だが輸送は明日に変更になったと知らせます
だけどホテルに行っても本物のエヴァンスはいない
警察の取り調べで妻は、サルテットが機内にいたと供述するのです

警察はすぐにニューヨークに連絡
しかしその頃一家は乗組員を銃で脅し
ジャック(シドニーチャップリンチャップリンの次男)が
副操縦士の代わりニューヨークに降りてきました
警察は空港に集まり重大な警戒がひかれます

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しかし飛行機が向かった先は閉鎖された高速道路
そこで待っていたのはトニー率いるニューヨークのギャングたちでした
乗員乗客誰ひとり殺さず宝石の山を手に入れる鮮やかな手口
だけど、ファミリーはファミリーを裏切った人間だけは許さない
孫がテレビで男女が抱き合うラブシーンを見て
「サルテットとジャンヌだ」と叫んでしまうのです

息子の嫁を寝取った男をこのままにしておくわけにはいかない
ヴィットリオはサルテットをパリに呼ぶことにします
そこでまたこのバカ嫁が、サルテットの妹に
彼の飛行機の到着時間を(盗聴されているのに)電話で教えてしまう

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兄弟たちは逮捕され、サルテットとジャンヌを撃った
ヴィットリオを待っていたのはル・ゴフ警部でした
(このツーショットが渋すぎてたまらない 笑)

アンリ・ドカエのカメラがいちいちカッコいいですし
エンニオ・モリコーネの音楽も映画の雰囲気にぴったりで
アラン・ドロン生誕記念祭」では毎年やってほしい作品のひとつ

しかも特別バージョンで、ギャバンさまとバンチュラさまの
出番が多ければ、かなり歓喜しちゃうかも(笑)

 


【解説】KINENOTEより
シシリーの秘密結社マフィアの犯罪をめぐって展開されるフィルム・ノワール(暗黒映画)。「ダンケルク」のジャック・ストラウスが製作を担当。監督は「サン・セバスチャンの攻防」のアンリ・ヴェルヌイユ。オーギュスト・ル・ブルトンの原作を、「オー!」のジョゼ・ジョヴァンニ、ピエール・ペルグリ、アンリ・ヴェルヌイユが共同脚色。撮影は「大反撃」のアンリ・ドカエ、音楽は、「ウエスタン」のエンニオ・モリコーネが担当。出演は「パリ大捜査網」のジャン・ギャバン、「ジェフ」のアラン・ドロン、「ベラクルスの男」のリノ・ヴァンチュラ、「天使のいたずら」のイリーナ・デミック、「オー!」のシドニーチャップリン、「雨あがりの天使」のカレン・ブランゲルノン、アメディオ・ナザーリ、マルク・ポレル、イブ・ルフェーブルなど。

太陽が知っている(1968)

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アラン・ドロン「太陽」シリーズ第三弾(笑)
といっても原題は「LA PISCINE」(プール)

プールが舞台なだけに、ほぼ水着か半裸(笑)
しかも序盤はずっとドロンさまと ロミー・シュナイダー
イチャイチャイチャイチャしているだけ(笑)
(ドロンさまとロミーは1963年ごろすでに破局
そこにモーリス・ロネがやってきて、今度は
モーリス・ロネと ロミーがイチャイチャイチャ・・

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ロミー・シュナイダーの脱ぎっぷりがいいので
殿方が見たなら嬉しいのかもしれませんが、うーん(笑)
終盤になって刑事が現れてからは面白くなってきましたが
ラストも、うーん(笑)

ただ「太陽がいっぱい」(1960)のモーリス・ロネ
再びアランドロン殺されてしまうのには
不謹慎ながら笑ってしまいました

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フランスのコートダジュールのリゾート地、サントロペの別荘で
ジャン・ポール(アラン・ドロン)とマリアンヌ(ロミー・シュナイダー)は
夏の休暇を過ごしていました
そこにマリアンヌが招待した旧友のハリー(モーリス・ロネ)と
ハリーの18歳になる娘のペネロープ(ジェーン・バーキン)やって来て
一緒に過ごすようになります

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ジャン・ポールは挫折した作家で
あまり人付き合いが得意ではないのですね
マリアンヌとふたりきりで静かに過ごしたかった
一方のハリーは音楽家として成功していて、金持ちで自信家で
パーティと酒と踊りと大騒ぎが大好き

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ハリーとマリアンヌの親密さにジャン・ポールは居場所を失い
孤独なペネロープは、父への反感からジャン・ポールに近づきます
娘を心配したハリーはジャン・ポールをなじり
逆上したジャン・ポールはハリーをプールに沈め殺してしまいます

男性にとってジェーン・バーキンみたいな女の子が
目の前に現れたらヤバイよね(すきっ歯がチャームポイント)
同じ小悪魔キャラのブリジット・バルドーから
セルジュ・ゲンズブールを奪った話は有名(BBも不倫だったがな 笑)

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実はマリアンヌのほうが、ジャン・ポールを
ペネロープに奪われるのではないかと不安で
ジャン・ポールの気を引くため露骨にハリーと仲良くしたのかも知れません
それがこんな結果になってしまった

ハリーの時計が防水でなかったことや
脱いだ衣類が洗濯済みであったことから
ハリーが酒を飲み、夜中に泳いで溺れたという供述を
警察(ポール・クローシェ)は怪しみ
ジャン・ポールが犯人ではないかと疑うわけですが
マリアンヌが証拠隠滅してしまうのです

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なにがだめって、ドロンさまに完全犯罪は似合わない
撃ち殺されるか、破滅してもらわないと(笑)

このあとふたりは別れるのか、やり直すのか
マリアンヌはダメ男に尽くすタイプ
ジャン・ポールのことをすぐに見捨ててしまうのは
私は難しいと思います


【解説】KINENOTEより
ジャン・クロード・カリエール、ジャン・エマニュエル・コニル、ジャック・ドレーの三人によるシナリオを、「ある晴れた朝突然に」のジャック・ドレイが監督した。撮影は「さらば友よ」のジャン・ジャック・タルベス、音楽は「華麗なる賭け」のミシェル・ルグランが担当。出演は「あの胸にもういちど」のアラン・ドロン、「夏の夜の10時30分」のロミー・シュナイダー、「ペルーの鳥」のモーリス・ロネ、「ナック」のジェーン・バーキンほか。

若者のすべて(1960)

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「自分たちの育った田舎では、家を建て始めるとき
 大工の親方が最初に通った人の影に石を投げる風習がある」
「なぜか」
「家の基礎を固めるためには “いけにえ” が必要だからだ」

 

原題は「ROCCO E I SUOI FRATELLI」(ロッコと彼の兄弟)
自堕落的な兄と真面目な弟が、ひとりの奔放な女性を愛するという
アプローチは「狂った果実」(1956)にも似ていますが
どちらも基になっているのは
ドフトエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」でしょうか

しかし「カラマーゾフの兄弟」(1921)(1931)(1969)より
こちらのほうがはるかにわかりやすく、一気に見れる(笑)
「愛という名の犠牲」ではなく「犠牲という欺瞞(ぎまん)」

 

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イタリア南部のバジリカータ州から長男ヴィンチェンツォを頼って
ミラノにやってきた未亡人のロザリア・パロンディと
シモーネ、ロッコ、チーロ、ルーカ の4人の息子たち
しかし駅に長男は迎えに来ず
恋人ジネッタとの婚約祝いのパーティをしていました

父親の喪中に婚約とは何事だとロザリアはジネッタの母親と大喧嘩
住むところのなくなったヴィンチェンツォは
友人のアドバイスでアパートを借り
兄弟たちは雪かきのアルバイトで生活費を稼ぎます

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かつてプロボクサーを目指したヴィンチェンツォのジムで
次男シモーネは才能を認められ、プロとして活躍するようになります

しかし娼婦のナディアに夢中になり、クリーニング店で働く
三男ロッコに金を借り、Yシャツを拝借し、女店主を口説きブローチを盗む
当然ロッコは仕事をクビになり、徴兵に出ることにします

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そして1年2ヵ月後、長男ヴィンチェンツォはジネッタと結婚して独立
四男チーロは夜学を卒業してアルファロメオの技師になります
ロッコは出所したばかりのナディアと偶然出会い
退役後ふたりは付き合うようになるのです

シモーネはボクシングの練習に身が入らず
おまけにロッコとナディアの関係を知り、激しく嫉妬し
ロッコと友人たちの目の前でナディアを強姦します

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シモーネは本当に下衆でクズな野郎なのですね
だけどこの哀れなシモーネを演じたレナート・サルヴァトーリと
ナディア役のアニー・ジラルドはこの共演がきっかけで結婚(笑)
映画とは違い実生活での夫婦仲はよかったようです

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ロッコはシモーネのためにナディアから身を引き
その苦しみをぶつけるように、ボクサーとして活躍
よりを戻したシモーネとナディアは自堕落な生活を送り
シモーネは多額の借金を抱え、警察に追われ
ナディアは再び娼婦として客を取るようになります

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そこでもロッコはシモーネの借金を肩代わりしてタイトル戦に挑み
ナディアに復縁を迫り、刺し殺したシモーネを逃がそうとする
チーロだけがかえってシモーネのためにならないと
ロッコを振り切り警察に通報するのです

家族愛が、母親の甘やかしが、兄弟のやさしさが
善人だったシモーネをだめにしてしまった
そのことに唯一気づいていたのはチーロだけでした

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この作品の演出で、フレームに入る役者ひとりひとりに
ヴィスコンティはどう演じるか、実際に演技してみせたそうです
それがあまりにも巧く出演者は舌を巻いたということ
それくらいヴィスコンティにとっては力の入った
最も愛した作品のひとつなのだそうです

ただ貴族出身のうえ、オペラの演出家ということもあり
いくらイタリア南部の極貧の大家族を描いていても
品の良さが隠しきれない(笑)
カメラは(フェリーニで有名な)ジュゼッペ・ロトゥンノ
音楽はニーノ・ロータ

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一度は弟がキレてもよかったですね(笑)
そこは「狂った果実」のほうが強烈な印象を残します
あまりにもロッコが聖人すぎる

でも3時間という長尺を、時間を感じさせず見せるのはさすがのもの
名作に間違いありません

 


【解説】KINENOTEより
都会の生活を生き抜く一人の青年を描いたドラマ。「白夜(1957)」のルキノ・ヴィスコンティが監督した。ヴィスコンティとヴァスコ・プラトリーニとスーゾ・チェッキ・ダミーコの原案をヴィスコンティ、ダミーコ、パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ、マッシモ・フランチオーザとエンリコ・メディオーリの五人が共同で脚色、撮影は「戦争 はだかの兵隊」のジュゼッペ・ロトゥンノ、音楽を「全艦船を撃沈せよ」のニーノ・ロータが担当。主題歌“若者のすべて”ほか数曲の流行歌が紹介される。出演は「太陽がいっぱい」のアラン・ドロン、「街の中の地獄」のレナート・サルヴァトーリ、「フランス女性と恋愛」(離婚)のアニー・ジラルド、「刑事」のクラウディア・カルディナーレ、ほかにカティーナ・パクシー、ロジェ・アナン、パオロ・ストッパら。製作ゴッフレード・ロンバルド。なお、この作品は一九六〇年度ヴェニス映画祭で審査員特別賞を受賞した。2016年12月24日より『ルキーノ・ヴィスコンティ生誕110年 没後40年メモリアル-イタリア・ネオレアリズモの軌跡-』としてデジタル完全修復版を上映(配給:アーク・フィルムズ、スターキャット)。

サムライ(1967)

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銀座タクトにて、11月9日(土)12:30(開場12:00)から
チェイサーさん主催する「アラン・ドロン生誕84年記念祭」の
勝手に前夜祭(笑)


第1回目はもちろんこれ、原題も「LE SAMOURAI」
メルヴィルの描く”男の美学”にはいつもこだわりがある
ストイックで、渋くて、クール
「不言(ふげん)の美学」(出た!勝手にジャンル 笑)

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無駄な解説はないし、無駄なことも言わない
本作でも籠の中の小鳥のさえずりや
ストレスだけで状況を感じ取る主人公


エピグラフ(巻頭に置かれる引用や詩)での
「密林の中の虎にも似て、サムライの孤独ほど深いものはないであろう」
(「武士道」サムライの書より)は、旧5千円札の
新渡戸稲造(にとべいなぞう)の「武士道」からの引用ではなく
メルヴィル自身が考えた架空の書ということ


そのことをメルヴィルはインタビューのとき
「日本人はあの文句をでっちあげたのが私だと知らないんだ!」と
無邪気に自慢したそうです(可愛いとこもあるのね 笑)

 

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ソフト帽にトレンチ・コートの男(ドロンさま)が
路上に駐車してあるシトロエンを盗み
コールガールと思われる女性(ナタリー・ドロン)を訪ね
深夜2時まで一緒にいたことにしてくれと頼みます


その後、あるクラブのオーナーを銃殺しますが
黒人女性のピアニストに顔を見られてしまいます
クラブのウェイターにクロークの女性、従業員たちも
トレンチ・コートの男の姿をはっきりと目で追う


すぐに警察は動き出し、容疑者のひとりとして
ジェフ・コステロ(ドロンさま)が警察に連行されます

クラブの目撃者たちの供述はなぜか曖昧で
似ている、違う、彼だ、彼じゃない
決定的なアリバイはジェフの恋人のコールガールを
深夜2時に訪ねた男の完璧な証言でした


自分と入れ替わりに出て行った男の
コートは、帽子は、そして顔はこんな感じだった

 

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それでも主任警部(F・ペリエ)は長年の勘で
たとえ鉄壁のアリバイがあっても、犯人はジェフに間違いないと
尾行をつけさせ、盗聴器を仕掛けます


一方のジェフもつけられているのは百も承知
しかし金を受けとるため依頼を取りついだ金髪の男と会うと
男はいきなり発砲し、金をもらうどころか左手に傷を追ってしまいます


裏切った雇い主を探すため、再びクラブに行き
偽証した黒人女性ピアニストに会う
ピアニストの口は堅く「二時間後に電話を」とだけ言います


そしてジェフが部屋に帰ると、再び金髪の男が現れ
クラブのオーナー殺しの報酬を持ってきたうえ
新しい仕事の依頼とその前金まで用意していました
これはあまりにも怪しい(笑)

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ジェフは金髪の男を拘束しオリビエという名前を聞き出します
オリビエはピアニストと同居していました
そしてジェフへの新たな依頼はピアニストによって
自分の正体がバレるのを恐れたピアニスト殺しだったのです


拳銃に入っている弾6発を確認するジェフ
クラブでピアノを弾くピアニストに拳銃を向けたジェフは
張り込んでいた刑事たちの銃声によって倒れてしまう
しかし警部が見つけたジェフの拳銃の弾倉は
弾が抜き取られからっぽでした

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鮮やかなシンメトリー

雇い主に従わなかったサムライは自決する

 

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この映画の裏テーマは鍵の束でもある思うのです


あの鍵の束がどこに行ったか、警察に見つからないのはおかしい
というレビューも中にはありますが


数多くの人生や職業の中で
自分にぴったりあうものはただひとつ
たとえ損でも、そういう生きかたしかできない
それがメルヴィルの世界なのだろうな

 


【解説】allcinemaより

寒々としたアパートで、たった一羽の小鳥とともに暮らす孤独な殺し屋。が、あるピアノ弾きの女と関わった事から警察にマークされた彼は、やがて自ら死地に赴いていく……。仏フィルム・ノワールの巨匠J=P・メルヴィル監督の傑作で、徹底した硬質な画面構成と氷のような色調が鮮やかな印象を残した。他人を一切寄せつけず、己のスタイルを貫き通して死んでいく殺し屋を、日本の侍のイメージとダブらせた演出は今なお語り草で、ファンの多い作品である。線路にかかった陸橋の上で、殺し屋が他のギャングに襲撃されるシーンの素晴らしさは、何度観ても息をのむ